ソーマ、魔神との和解
教団による事件から数日が経った。
あのとき、オレがちゃんと魔神を制御できればもっと楽に進んでたんじゃないかと後悔の気持ちがある。
だから魔神の制御に慣れる為、わざと魔神を解放しようとしているのだが……。
「……あれ?」
なぜかあの時以来、眼帯を外しても魔神の力が現れないのだ。
一応あの時の事はオレも薄らと覚えている。魔神は最後、錬人に手も足も出ていなかった。……凄いなと思った。
「しかしこのままではこれから強い敵に会った時どうすればいいんだ?」
魔神は力を貸してくれないし……。
もしかして……簡単に負けてしまったことで……拗ねてるのか?
危険だが挑発してみるか。
『フッ…惨めだな、魔神……所詮貴様は…一人の冒険者にすら勝つことはできん…そう、オレにもだ!』
さあ、心で念じる様に言ってみたが……。
『言わせておけば……器の分際で……!』
『やっとお目覚めか』
『その言葉…後悔させてやる……と言いたいところだが』
『言いたいところだが?』
『今の我には…不可能だ…どうせ貴様にも……もう勝てん』
……マジで拗ねてやがる……子供か。
『あれはお前の油断だろ……』
『ぐっ…器め…思い出したくないことを……!』
『まあ落ちつけよ、お前の力はまだオレに必要だ…だから…まあ、元気出せ』
『人間の慰めなど……しかし、貴様に力を貸すことは…もう無理だ』
どういうことだ?いや待て……確か設定に魔神は器の意識を乗っ取られず長い時間が経てばそのまま消滅するというものがあったはず……。
『そうか…自信が無くなっただけでなく限界……なんだな』
『今の我は…ただ消滅を待つのみ……』
正直言って困る。魔神の力は無くなれば強敵が出てきた場合対抗できなくなる可能性が大だ。
……延命させることはできないか……?
考えろ……魔神は何だ?最強の破壊者?魔力の塊?
魔力……たしか魔神は生命力=魔力のはず……ならば……!
『何のつもりだ?我に魔力を与えるなど……』
『取引だ…オレがお前に延命処置を施してやる…その代わり…オレに力を貸せ』
『人間の言うことなど……』
『それでいいのか?』
『何……?』
『この世界にはまだまだ強大な相手が居るかもしれない…そんな奴らをぶっ潰していきたいとは思わないか?』
上手くいけば説得できるはず。
『だが貴様に生かされるのは御免だ』
『お前を生かすんじゃない…一緒に生きるんだ』
『我が矮小な人間ごときと生きるだと?』
『矮小なのは今すぐにでも消えそうなお前だろ?安心しろ、後悔はしないはずだ……』
これで…どうだ?
『ククク……ハハハ…面白い事を言う』
『で、どうするんだ?魔神ヨルムンガンド』
『フッ…良いだろう…貴様に乗せられてやる』
『よし…言ったな?』
『ああ…我は貴様に力を貸そう』
そういうと左目に再び力が溢れていく。たしか眼帯を取ったままだったな。
オレの体が光に包まれた後、オレはまた一つ進化した。
「この体は……?」
『我の力を全面に出した状態だ…普通なら貴様の意思など消え去るところだが…我と貴様の意識、両方がいつでも表に出られるようになっている』
へえ、こいつは凄いな。今のオレの体…魔神の力が全面開放されてるからか角や翼が生えてたりするが…うむ、悪くない。
そう思いながらオレは眼帯を付ける。そのとたんにオレの体が元に戻る……が。
『どうだ、我の力を受け取った気分は?』
『眼帯つけてても意識は表に出せるのか?』
『無論だ、いつでも貴様の意識など奪うこともできよう…だが我は約束は守る…それにそんな事をすれば貴様は我に魔力の供給を止めるだろう?』
『確かに…まあ、これからよろしく……っていうことでいいんだな?』
『ああ、我を後悔させるなよ?ソーマ』
名前で呼んだか?今。随分と好かれたもんだ。
こうしてオレと、魔神との和解が完了した。
次から闇バトル編、始まる予定です。




