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レント、新たなる力

おまけその一

錬人がいつあんな切り札を手に入れたのか、そういう話です。

 魔術教団との決戦の前日、俺は新しい技を編み出そうとしていた。


「まずは魔法かな」


 俺には無属性の援護魔法に適性がある。上手く使いこなせれば、これからの戦いを有利に進めることができる。


「他にはどんな魔法があるか……だな」


 正直に言って、あまり魔法を詳しく知らない。だからこれを機に、一気に覚えられそうなものは覚えてみようかとも思った。



「イムカ、居るか?」


 俺はうちのギルドの近くの庭で蒼馬と一緒に魔法の開発を行っているであろうイムカに教えてもらおうと思った。

 蒼馬はどうせバカだから役には立ちそうにない……魔法屋の老婆は正直に言って苦手だ。

 あのババア…完全に俺を見下してやがる。魔法に適性は無いだとか賢者の石を使ってもその程度かと言うあのババアに教わるくらいなら苦労してでも独学でやる。


「……何?」

「時間は無いと思ってるんだが…魔法を教えてくれないか?」

「……今は……わたしも……忙しい…けど……」


 そう言ってイムカは俺に何冊か本を貸してくれた。恐らく、魔導書的なものだろう。


「そう言えばこういうのもあったな」

「貴方……魔法屋には……」

「あのババアは苦手だ」

「そういやあの婆さん、錬人をいつも見下してた様だしな」

「その通りだ…一応この本は借りてくぞ」

「……分かった……」



 さて、俺はイムカから借りた魔導書を読み始める。

 読み始めてからなるほどと思ったがこれは役に立つ。魔法を使用する際の具体的なイメージ、魔力の操作などが丁寧に書き込まれている。


「…無属性援護魔法は……マジックドレインやバイタルドレインなんてものまであるのか……他には…チェーンバインド…か」


 大体名前からして効果は想像できる。魔力や体力を奪ったり、相手を拘束できる魔法だろう。


「これ……援護か?妨害魔法だろ……」


 確かに味方を有利にする為の魔法ではあるが……援護らしい援護魔法は無属性じゃオーラしか無いじゃないか。


「試しにドレイン系でも使ってみるか……相手は…ソーマは無理か、忙しそうだし……仕方ない」


 俺はアリスに話をしにいく。いや何、アリスに実験台になってもらうわけじゃない。


「アリス、これからモンスター相手に魔法の練習するから付き合ってくれ」

「はい、わかりました」


 早速俺とアリスで外に出たのだった。


「レントさん、ラプターです」

「ああ、丁度いいな」


 俺はラプターの群れに対して魔法を唱える。多分、アンチオーラのように奪うイメージができればいいだろう。本にも書いてあったし。


「バイタルドレイン」


 俺は魔法を唱えた。俺には変化は無い。あまり疲れてないからだろうがな。

 しかし魔法を掛けられたラプター共は皆、倒れそうになる。倒れてはいないが。


「成功だ…次は…マジックドレイン」


 これは使うかどうか迷うところだった。魔力の増減は目に見えて分かることではなく成功するかどうか分からなかったからだ。でも一応使ってみる。


「お?」


 一応、自分の魔力は確認できるもので、唱えた瞬間、今ある魔力量を超えて魔力が多くなった気がした。

 そして一定時間が経つと、俺の魔力が元に戻った。これは…この時間の間、俺は満タン以上の魔力になり、相手はその間奪われた分の魔力が回復しない…確か本にそう書いてあったな。

 勿論、オーラやアクアオーラを使って上げた限界以上は増えないらしいが。


「次は…チェーンバインド」


 俺は唱えたがこれは不発に終わった。まあ、イメージがまだ掴み切れてないからだな。ドレイン系はアンチオーラと同じイメージでいけたからすんなり発動したようだ。


「しかし…ラプター共、全く気付いてないな」

「気付かれないようにやっていますしね」

「それもそうだな……」

「レントさんも結構、魔法に慣れてきましたね」

「ああ、魔力の制御も手慣れて……待てよ?」

「どうしたんです?」

「ちょっと、試したい事がある…まあ、まず奴らを倒そう」


 というわけでさっさとラプター共を倒していった。


「で、試したい事ってなんです?」

「ああ、ちょっと待っててくれ」


 そう言って俺は剣に手を添える。


「…何か…光ってませんか?」

「お、成功したみたいだ……よし」


 俺は近くの木に、光った剣を軽く当てる。


 スッ


 軽く当てただけだが、剣はまるで豆腐を切るかのように、呆気なく木を切断した。


「…今の……」

「フッ、凄いだろう?」


 完全に自慢にしか聞こえない事を言ってしまったが気にしたら負けだ。


「剣に魔力を込めてみたんだ…まさかここまで凄いとは俺も思わなかったが」

「しかもマナを…使って無いですね?」

「ああ、魔法じゃないからな」


 俺の予想だと魔法は無から有を創りだすんだから、そのエネルギーとしてマナが必要なわけだ。

 しかし剣とかを媒介にして俺の魔力を武器にできるならマナが必要無いとか…そんなんだろうな。


「まあいい、当初の目的も果たしたし…帰るか」

「そうですね」


 俺はアリスと二人で帰路につく。


 しかし、魔法の他に思わぬ収穫があったな。これ……盾にも応用できるんじゃないか?

 そんな事を考えて、満足気に俺たちは帰って行った。


 次の日、魔術教団と戦い、勝利を掴むことは、この時の俺は当然だが知らない。

次回、アリスが主役です。

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