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決着

 俺の放った斬撃波はグランドラゴンに真っ直ぐに向かっていく。今の奴はまともに動けんから当たるだろう。まあ相手が万全だろうとあの巨体じゃ絶対に当たるがな。

 まあ、結果は勿論その斬撃が巨体を真っ二つに斬り裂いた。うん、すごい爽快……な訳ないな。目に前には縦に斬り裂かれたグランドラゴン……すげぇグロい。


「まさか………」

「ああ、貴様らの負けだ」


 他のモンスター共はアリスたちが魔法で蹴散らしてくれた。


「……まだだ」


 他にどんな手があるんだと思っていると、喋っている奴以外の教団員が一斉に襲いかかってきた。


「玉砕覚悟か……?」


 はっきり言って分からん、自殺行為じゃないか?と思えてくるが……。


「でいっ!」


 俺は向かってきた一人の教団員に蹴りを入れる……何だ?何か感覚がおかしい。

 教団員は俺の蹴りをまともに受け、吹っ飛んだが声の一つも上げない。しかも……また立ちあがり、襲いかかってきた。


「ハハハ!やれ!」


 んであの男はあの場から動かない……もしかしたら……。


「ならこれで!」


 俺は向かってきた教団員を…剣で叩き斬る。まあ魔力を込めてないから斬れないけど。


「レントさん!?」

「いや、俺は殺人なんてしてない、良く見ろ」

「……あ…!」


 俺が叩き斬ったのは……多分魔力で動く人形みたいなものだろう。

 ……学校の美術室にあるデッサン人形みたいだな。


「教団員はできるだけ生かして捕縛しないといけないらしいからな」


 ランサーが言う。確かそうだったな、そもそも最初から教団を潰す気でいたが町から正式に依頼が来たんだった。内容はここの近くの教団の壊滅。教団員はできれば生きたまま捕縛…だったな。


「でもあいつ以外人形ですな」

「確かに…魔力を感じないから…おかしいとは…思ってた」


 あれ?魔力を感じない?じゃあ俺が魔力で動くって考えは間違いかよ。

 じゃああれか?マナをエネルギーに動くロボットか。


「多分…そう…」


 本当にイムカは心が読めるのかよ…ていうかそれは当たりか。あるのかよ、ロボット。


「ランサー、この世界にロボットってあるのか?」


 さり気無くこの世界…と言ってしまったがもしかしたらランサーも実は俺の事情を知っているんじゃ?と思い、そのまま聞いてみた。


「グラン共和国辺りはこういう系の技術に詳しいからな…多分あの作りは中央工房の……?」

「詳しいんだな」

「ああ、おれの出身がグラン共和国だからな」


 なるほど…ってやっぱりランサーはこの世界の住人じゃないか…中二病を理解できた辺り、もしかしたら俺と同じで異世界からやってきた…わけではないな。

 ……そういや前に闘技大会で戦った時の腕力から考えたら俺と同じ世界の人間ではないか。間違いなくこのフラッティアの人間…なのか?


 俺がそんな事を考えていたらいつの間にかアリスたちが人形共をどんどん壊し、全滅させた。


「バカな…普通の人間より二倍はパワーがあるはずなのに……」


 みんな魔法で強化されてるし…俺と蒼馬は素でもパワーは勝っているな。その蒼馬はまだ気を失ってるけどな。


「これで…観念するでさあ」


 子分が教団員の腕に手錠を掛ける。


「これで依頼達成だな」


 俺も含めて緊張が解けた…それがまずかったんだろう。


「ククク…」


 突然教団員が笑い始めた。


「こっちにはまだ転移用の魔法具があるんだよ!」


 そう言われてもピンとこないがイムカが気付いたようにハッとなって。


「まさかその指輪……!」

「気づいても遅い!ハハハハハハ!」


 そう言い教団員の体が光り始める。


「だが転移用の魔法具じゃ手錠は取れるが遠くには飛べないはず……せいぜいここから範囲十mもあるかどうか……!」


 ランサーが言う。…というか狭すぎる。ならあの男のしたことに意味があるのか……?

 いやまさか……!しかし気付いた時には既に遅く、アリスの首元に剣を立てる教団員が居た。


「ハハハ!この小娘を返したいなら見逃すんだな!」

「貴様……!」


 くそっ…! しかも丁寧なことにアリスの腕に力を抑制する魔法具が付けられている。そのせいでアリスも抵抗できずにいるんだ……この野郎め!


「どうするんだ?捕まえるんだったらそれで構わないがこの小娘が死ぬぞ?」


 最低のクズ野郎だ……しかし下手に動くとアリスが殺される……どうすりゃ……。


「おいレント、こういうのはどうだ?」


 ランサーが小ギリギリ聞こえるぐらいの声量で言ってくる。


「まずは条件を呑んでアリスを解放する…それが確認できたら…奴を追えばいいんじゃないか?」

「…その方法が一番得策……か?」


 なんか引っかかるような気がするが、今はそれしかないか。


「ああ、その方法で行こう」

「ああ、かならず助けるぞ」


 当たり前だ。あの野郎、捕まえたら覚えてろよ。


「分かった…見逃す……」

「フッ、随分と気前がいいんじゃないか」


 そう言い徐々にアリスから離れていく。

 それに一瞬安堵したのが間違いだった。


「……っ!?」

「ハハハ!最初から逃げ切れるなんて思っていない!ならば!一人でも多く敵は消した方が我々教団の為!死ねええ!」


 後ろからアリスに斬りかかってきた。どうやら最初から教団員も玉砕覚悟だったようだ。

 ただ今はそんなことどうでもいい。アリスが殺されようとしている。それが目に映った。

 次の瞬間頭の中が真っ白になった。



 気が付くと、俺の目の前には大量に血を流して倒れてる教団員が居た。恐らく俺が斬ったんだろう。この剣で斬ったということは魔力を流してた可能性もある。ただ今はそれどころではない。


「アリス……」


 アリスに外傷は…無いみたいだ。気絶しているのは恐らく俺がこいつを斬った時の殺気とか迫力に押されて…かもしれん。正直頭が真っ白になって何が何だか俺にも分からない。

 ただアリスが無事だった…のは確かだろう。


「こ…の……人殺し…め……」


 教団員がそう言うと後は動かなくなった。いままで散々人を殺してきたくせに自分が殺されそうになったら人殺しと非難するか…どこまでも腐った野郎だ。


 だが……俺はこの世界に来て初めて人を殺した。それも覚えちゃいないがおそらく明確な殺意をもって。


「一応、依頼は果たした……帰ろう」

「あ、ああそうだな」


 俺はアリスを担ぎ、蒼馬は……子分に担がれながら、俺たちは町へと帰って行った。


 

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