本当の絶望
「……まさか」
教団員の一人が嘆く。まあ気持ちは分かる。あれだけいたドラゴンの大群が全滅寸前なんだからな。
「ククク……ハハハ……」
んで、笑い出した。遂に壊れたか?
「ここまでやるとは驚きだ…だが、貴様らもそろそろ限界ではないか?」
俺は蒼馬の体力吸収したから問題ないが…アリスたちはさすがに疲れてきてる頃だろうな。特にイムカは魔法使いだからか体力は低いはず。
「そしてまだ…グランドラゴンがもう一体いるのだからな!」
そう言った瞬間、地面が割れ、グランドラゴンが湧いて出てくる。
「貴様らに…絶望を教えてやる!」
なんか可哀想に見えてきた。だって…もう一体いること……知っているんだから。
「盛り上がってるとこ悪いんだが……知っていたぞ?」
「うぇ?」
なに間抜けな声を出してるんだよ。
「……だ、だが貴様らは限界のはず……」
「俺はまだまだ余裕だがな」
「ふんっ、一人で何ができる?」
「たしかにあの人の言うとおりです…レントさん、勝機はあるんですか?」
「安心しろアリス……他の奴らは…殆ど俺一人で十分だ」
さて、まずはどうしようか……。
と考えてる時、上から生き残りのデフォンズワイバーンが放った火球弾が飛んできた。
俺はその火球弾を…ラグナロクブレイカーを防いだ時と同じ構えで防御する。
「な……なんだそれは!?」
教団員が驚いてるな…まあ面白い光景ではあるかもな。
俺の構えた盾のすぐ目の前に魔法陣が展開されているんだからな。さっき魔神状態の蒼馬がグランドラゴンのブレスを防いだ時と似ているものだ。
「名付けて…魔装障壁って言ったところか」
これは盾に魔力を込めることで性能を高めてくれるものだ。ちなみに……これは魔法ではない。
マナが必要無いからな…たぶん魔法の素質が無くても魔力の操作ができれば誰でも使えるだろう。尤も、魔法が使えないと魔力の操作方法なんて分からんだろうが。
そしてこの魔装障壁の一番凄い点は、例え防御力を上回る攻撃力で攻撃されたとしても一回は完全に無効化できるということだ。だからさっきのラグナロクブレイカ―を防げた。
「グルァアア!」
デフォンズワインバーンは火球弾が無駄だと察したのか突進してきた。
……この時を待っていた!
「ここからが本番……!」
俺はブロウクンセイバーに右手を添え、魔力を込める。
「よし…うまくいっているな」
魔力を込め、刀身が鈍く輝く。その状態で、突撃してくるデフォンズワイバーンに剣を振った。
「ガッ―――!」
そして…真っ二つに斬れた…そう斬れた。実戦では初めて使うがな。
俺が今したのは、剣に魔力を込め、性能を上げる…盾で使った魔装障壁の剣版とでも言えば良いな。
一応、魔力を込めるとブロウクンセイバーでも物体が豆腐を切るように簡単に斬れる。
「さて…と、もう出し惜しみは必要ないな…切り札を使わせてもらう」
そして今度はさらに剣に魔力を込めていく。鈍い輝きを放っていた刀身が今度は純粋に光り輝く。
「これは…名付けて魔装斬かな?」
そう言いながら剣を振る。すると斬撃波…とでも言えば良いか、が飛んでいき、上空に居たドラゴン共に命中する。
「グギャァアア!」
当たった瞬間、ドラゴン共がどんどん真っ二つに斬られていく。
自分でも驚きだ。まさかここまで威力があるとは。
「兄貴…すげぇでさあ」
「マナの流れが感じない……」
「どこまで規格外なんだよ」
こいつらもかなり驚いてるな。ちなみにアリスは…尊敬の眼差しのようなものを俺に向けてきている。可愛い、すっごい可愛いんだがそれ。
「バカな…はっ!何故今まで使わなかったんだ!?」
教団員の一人…というかこいつしかしゃべって無いな。一番偉いとかそんなんか?まあいい、何故俺が出し惜しみをしているかだったな……フッ、愚門だな。
「答えは簡単だ、切り札は最後まで取っておくものだからだ」
……あまり分からないって顔をしているな。
例えばかなり強い敵が居て厳しいが何とかなりそうという状況があったとしよう。しかし次に瞬間その敵が実はまだ本気じゃなくてここからが本番だ…みたいに希望を絶望に変えてしまう感じだ……つまり何が言いたいかというと………。
「本当の絶望を教えてやる」
まあ、そういうことだ。俺はグランドラゴンに手をかざし、魔法を唱える。
「アンチオーラ、マジックドレイン、バイタルドレイン」
三つの魔法を連続で掛ける。おお、グランドラゴンの奴、自分の体重すら支えられなくなっているんじゃないか?
「まあ…こいつでトドメだ」
俺はグランドラゴンに魔力を限界近くまで込めた剣を振り上げた。




