錬人VS蒼馬
蒼馬の高笑いが暫く辺りに響いていたが段々落ち着き、今度は視線を俺たち……いや、俺に向けてきた。
「貴様……確か器の戦友……だったか?」
これは……先の展開が予想できるな……っていうよりこの魔神ヨルムンガンドの設定は殆ど俺が考えたようなものだ。
そしてその設定の中で蒼馬の戦友という設定の俺を敵視しているという設定がある。
蒼馬に頼まれたとはいえ、面倒な設定を考えてしまったものだ。
「まだ我の器は抵抗を見せている……貴様を殺せば、絶望し……完全に意識を支配できるかもしれんなあ?」
ほら、予想通りのセリフが飛んできた。
「なら……俺を殺してみろよ」
一応挑発しておく。その方が奴の動きが単調化するかもしれんからだ。
「貴様……後悔させてやる!」
そう言い蒼馬は俺に一直線に向かってくる。
「喰らうがいい」
蒼馬が俺に殴りかかり、それを盾で防ぐ。
「……チッ!」
思い切り吹っ飛ばされた。かなり強いなこの野郎!
とりあえず上手く着地し、蒼馬を目で追う。
「レント、大丈夫なのか?」
「ああ、お前らは周りのモンスター共を片づけておけ」
「余所見をしてる暇があるのか?」
後ろから声が聞こえ、また殴りかかろうとしてくるが……。
「甘いな」
今度はブロウクンセイバーで防ぐ。こっちの方が硬く、重いから普通に防ぐには優秀だ。
「な…なんだと?」
蒼馬……というより魔神が驚いている。まあそうだろ。後ろからの攻撃を碌に見もしないで防いだのだから。
こいつは相手の後ろを積極的に狙う……というか魔神の設定は俺が考えたものだ。行動パターンも完全に把握していると言っていい。
「ならば本気で相手をしよう」
そう言いラグナロクブレイカ―を放とうと掌を向ける。
普通に考えれば即死級の攻撃が来るんだろうが俺は落ち着いて蒼馬を睨む。
「諦めたか?まあよい……消え去れ、ラグナロクブレイカ―!」
蒼馬の掌から放たれた光線が魔法陣を通って俺に向かってゆく。
「レントさんっ!」
アリスが叫んだようだが安心しろ。
俺は盾を構え、もう片方の手を盾にかざす。
次の瞬間、グランドラゴンの時と負けず劣らずの轟音と衝撃が辺りに響いた。
「ククク……っ!な…なんだと!?」
あいつが驚くのも無理は無い。なぜなら奴の視界には…全くの無傷の俺が立っているのだから。
「貴様……何をした?」
「素直に教えると思うか?それに……そろそろ終わりにしないとな」
「何っ!?」
「アンチオーラ」
俺はアンチオーラを蒼馬に向けて唱える。
「ぐうっ!」
「どうだ?魔力を含めた全能力を……八分の一まで減らされる気分は?」
すごい悪役染みたセリフだけど気にしたら負けだ。
というか本当にオーラ系魔法は便利だ。例えオーラや各種オーラの加護によって強化されててもそれを無いことにして弱体化の効果をあたえられるアンチオーラ。もちろん逆も可だ。
ゲームだとこういうのは相殺しあって平常時に戻るようなもんだがな。
そして今まで蒼馬はオーラ、各種オーラとで四倍の強化が成されていたはずだが俺のアンチオーラによって一気に八分の一まで減ったというわけだ。
「ぐっ…力が……」
それに…魔神は肉体が既に無いから魔力が生命力でもある…という設定だったからな、その生命力をかなり減らされたんだ。流石に堪えるだろ。
「後…まだ終わりじゃないぞ、マジックドレイン」
「ガッ……!」
今使った魔法はマジックドレインという魔法だ。俺は無属性の援護魔法に適性があるからな。なにもオーラやアンチオーラだけな訳が無いだろう?
効果は名前通り、相手の魔力を吸収する魔法だ。しかも吸い取られた分は一定時間は回復しない。そしてその吸い取る量は…現魔力の半分…とこれまた結構な量を吸い取れる。
「くっ……だが器が無事な限り……!」
「バイタルドレイン」
「…っ」
俺の唱えた魔法により蒼馬は倒れた。ふむ、この魔法も効果的だな。
これも名前から分かる通り体力を吸収するものだ。吸い取る量はさっきと同じ半分。これで蒼馬自身の体力を奪ってしまえば魔神も後は何もできまい。
「というわけだ、魔神…大人しくしていろ」
俺は蒼馬の左目に眼帯を付ける。これで封印完了だ。
「こっちは終わったぞ」
「マジか!こっちももうすぐで終わりそうだ」
ランサーが答えてくれる。その時だったろうか。
「む…」
教団員が起き上ったのは。




