出陣
「それは本当か?」
俺は聞く。
「やっと見つけたでさあ」
俺の問いに子分が言う。
そう、俺がアリスを説得した日から二日後、子分が教団のアジトを見つけて帰ってきたのだ。
「おいレント、おれだって奴らの事はあらかた調べておいたぞ」
「ああ、ご苦労さん」
俺はランサーの方を見る。こいつも色々調べてくると言って二日間会っていなかった。
「まずランサーの親分から言って下せえ」
「おう、おれが調べた情報によると魔術教団の目的はモンスターの改造、魔法の研究……そしてトロイアの町の制圧だ」
「…だろうな」
俺も予想はついてた。多分ランサーたちにグランドラゴンの討伐を依頼したのは教団の連中だ。
そしてランサーたちの居ない隙にファントスを町に送り込んだというわけだ……まったく。
「ま、結構頼りになる情報屋が居ていろいろきいただけなんだがな…実は敵の戦力やアジトの場所まで聞いている」
「おれってもしかして無駄働きっすか?」
「いや、情報通りの場所にあるか確かめないといけないし無駄じゃないさ」
「兄貴……」
まあ、子分のフォローはこれくらいにしておいて……。
「なら早速準備して乗り込むか?」
俺の問いにランサーが困った顔をする。
「どうした?」
「いや…敵の戦力なんだが……」
俺はランサーから戦力の詳細まで聞いた。
……はっきり言って軽はずみに行動するべきではない事は分かった。
敵の戦力はドラゴンを中心に多数のモンスターがアジト周辺に配置されているらしい。
アシッドラーゴなんて数えきれないくらい居るそうだ。
しかもだ……ランサーたちを苦しめたグランドラゴンが二体も居ることには流石に驚いた。
「超強化されたグランドラゴン二匹か……というか子分、お前良く無事に帰ってこられたな」
「まあ一部のモンスター以外は決められた範囲外に居れば襲ってこなかったでさあ」
…なるほど上手くやれば誘いこんで少数ずつを相手にできる……!
「早速準備する」
「おいレント!?」
「大丈夫だ、手はある」
「……分かった」
俺はアリスたちを呼び、状況を説明した。
「なるほど…わかりました、相手を上手く誘いこめばいいんですね?」
「ああ、そうなる」
「グランドラゴンはどうするよ?」
「…ソーマとイムカに期待だな」
「おいおい錬人、それは……」
「ん…次は……負けない……」
「イムカはやる気まんまんだぞ?」
「分かったよ、それにこの為に特訓したしな」
「ああ、頼んだぞ」
そして俺たちは準備をして、子分の案内の下、アジトへと向かった。
「ここを通って行くでさあ」
子分が指示した場所は街道のある森、そこを街道から逸れて森の奥へと入っていくルートだ。
そこで俺は久しぶりにあるものを見た。
「う…ひどいな」
蒼馬の言いたい事は分かる。俺たちの目の前には俺がこの世界に来た時に見たあの死体があった。
しかし俺が来てから数カ月は立っているのにまだ放置されたままか。
「ん……衣服が剥ぎ取られてる……」
「積荷だけじゃなく服まで奪うとは…飛んだ外道だな」
「んぐっ……!」
「どうしましたレントさん?」
「い、いや?なんでも……ナイヨ?」
服を剥ぎ取ったのは俺だ…とは口が裂けても言えないな。
「しかし合っているのか子分?」
「大丈夫でさあ親分」
「しかしおれが聞いた情報と違うんだが……」
「情報が間違ってたとかか?」
と歩いているうちに子分が突然止まった。
「どうした?」
「少し待っててくだせえ」
そう言って子分は何もない地面に手を当てる。
「ガイアブレイク!」
そういや子分に賢者の石を上げたら土属性の魔法に目覚めたんだったな。
んで子分の真下には怪しい地下通路への入口が……。
「ここを通って行けば目的地まで一直線でさあ」
「この地下通路は?」
「おれが魔法を使って掘り進めたものでさあ」
…この子分、すごい優秀すぎる。
「ったく…お前には何か奢ってやらんとな」
「ははは!うれしいでさあ!」
俺たちは地下通路を進んで行った。




