ブロウクンセイバー
「あ、レントさん」
「ん?」
「武器屋から連絡が来ていますよ」
そうか、あれが完成したか。丁度三日だな。
「わかった、留守番頼むぞ」
「はい」
俺は武器屋へと向かった。
「来てやったぞ」
「おー、来たか……」
何か店主が困った顔でこちらを見ている。
「…まだできてないのか?」
「いや、できてはいるんだがなあ……」
そう言って店主は一振りの大剣を見せる。
「おお…これが……」
「これが完成品だ」
規格外の大きさ、厚みもかなりある。というかこれじゃ斬れないんだが。まあ鈍器として使うなら問題ないんだろうが。
「で、何か問題でもあるのか?」
「…持ってみると良い」
俺はその大剣をも……重っ!?ちょ!
「ぬああ!」
両手でやっと持てる重さ……多分刀身の部分も一緒に持ったら余裕だろう。まあ、そんなの意味無いけど。
「…大丈夫か?」
「…オーラ」
おっ、いきなり軽くなった。
「そういや魔法が使えたんだったな」
「オーラを使って両手で持てば一応戦える」
俺の予想じゃこの状態で五kg、オーラを除いて十kg、俺は元々この世界の人達より五倍の筋力があるから……五十kg……規格外すぎる。
「…もしかして問題って…」
「重さだ…まあお前なら大丈夫そうだ…あと」
「ん?」
「この武器を使うには町の許可が必要になる」
「何でだ?」
「いろいろ決まりとかあってな、まあ規格外の武器にはそういったものが必要と思っとけ」
なるはどな。とりあえずは試してみたいから一旦ギルドで依頼が無いか見てくるとするか。
「今帰ったぞ」
「おかえりなさい」
やっぱ可愛いな、アリスは。
「これが新しい剣か?どうみても鈍器じゃねえか」
「まあ、そう言われると思ってた、何なら持ってみるか?」
そう言って蒼馬に剣を渡す。
「おわっ!?」
案の定、蒼馬は上手く持てず、剣を落としてしまった。
ガアン!
おお、この建物が揺れたぞ。
「重すぎるだろうがー!」
「はは、すまんな、ところで依頼は来てないか?どうせならこの剣を試す際に依頼も一緒にやれば良いかと思ったんだが……」
「そんなことならこいつはどうだ?」
いきなり現れるなよ…ギルド長……。
まあいい、んでその依頼は……?
「デフォンズドラゴンの討伐だ」
「なんだそれ?」
そう言ったのは蒼馬だ。俺は図鑑で見たことあるから知っている。
デフォンズドラゴン…一言で言うなら『まさにドラゴン』って感じだ。簡単に言えばゲームとかで出てくる一般的なドラゴンだ。
そう言えば俺がこの世界に来た時に空飛んでるのを見たな。
「よしわかった、この依頼を受ける」
「おう、あとその武器の許可取っておいたぞ」
気が効くじゃないか。というわけで早速俺たちはデフォンズドラゴンが居るといわれる岩場に向かう。
あと蒼馬には移動中にデフォンズドラゴンについて教えてやった。
「…発見した」
「向こうも気づいているはずです」
「だろうな」
デフォンズドラゴンは比較的温厚らしく、あっちから襲ってくることは無い。
「ソーマ、奴に魔法を喰らわせてやれ!」
「わかった」
蒼馬はすぐさま魔法をデフォンズドラゴンにぶつける。もちろん加減してもらっている。これはあくまでこの剣の性能テストだからな。
「グルァアアアア!」
攻撃を受けると激しく逆上する…図鑑通りだな。
奴が突進をしてくる。
「オーラ、アンチオーラ」
俺は剣を盾に奴の攻撃を受け止めようとする。いつも使ってる盾?邪魔だから置いてきた。
ガン!
「っ……」
重い…がギリギリ耐えれる。魔法が無かったらヤバかったな。
よし、早速俺は剣を奴に振る。
「ガッ……!」
奴は攻撃を受け止められたショックで反応が遅れたらしい。俺の攻撃は奴の首に当たった。
ゴッ!
鈍い音と共に奴は倒れた。…多分首の骨が砕けたんだろう。
「なんという威力だ……」
正直自分が一番驚いている。
「レントさん!上です!」
アリスが叫び俺は咄嗟にその場から離れる。
直後、俺が居た場所に大きな爆発が起こった。
「くっ…何だ!?」
上を見ると新たなモンスターが目に入った…しかも一匹ではない。
「デフォンズ…ワイバーン…!」
デフォンズドラゴンと対を成す存在…さっきのは奴が放った火球弾の爆発か。
「オレに任せろ!」
そう言って蒼馬は奴らに向かって飛んでいった。
蒼馬は魔法によって翼を生やしている。便利なもんだ。
…そう言えば飛行…というか浮遊はできるな。
「アリス、ウィンドオーラを」
「わかりました、ウィンドオーラ!」
ウィンドオーラの効果で俺たちも奴らの下に飛んでいく。
「ソーマ!」
「ソーマさん!手伝いに来ました!」
「すまん、助かる」
「グルァアアアアア!」
ワイバーンはドラゴンと違い空中戦に特化し、魔法も使えるらしい。
案の定、雷属性の魔法を使ってきた。
「ちっ…アンチオーラ!」
俺は魔法を回避しつつ奴らに弱体化の魔法を掛ける。
アンチオーラの影響か、ここが空でマナが足りないからか、魔法はすぐに止んだ。
「今だ!」
「はい!」
「おう!」
アリスと蒼馬はどんどんとワイバーンを倒していく。
「でいやあああ!」
そして俺はこの剣をワイバーンに振り下ろす。
俺の攻撃が当たったかと思うと、奴は真下に吹っ飛ばされた。
「…………」
地面にすごい勢いで叩き付けられたからか、奴は即死だった。
「…やったのか?」
おい蒼馬、それはフラグだ。まあ大丈夫だろうけど。
そう言えば…アシッドラーゴは実感湧かなかったしグランドラゴンは倒しきれなかったけど、ちゃんとしたドラゴンを倒したのは初めてだな。
そう思うとかなり嬉しくなってきた。
さて、今回俺が使ったこの剣、名前はどうしようか。
…この質量、多分他の剣とつば競り合えば、絶対相手の剣が折れるよな。
「よし決めた」
この剣の名前はブロウクンセイバーだ。
多分、使う機会は少ないと思うけどこれはこれで良い得物を手に入れた。
俺はそんな事を考えながら街へと帰還しのだった。
次回、闇の魔術教団編、突入。




