新たな力
「…ふんっ」
俺は今、新しい魔法を覚えようとしている。
具体的に言うと、オーラの逆バージョンだ。これさえ覚えられれば味方を強化しつつ、敵を弱体化するというこちらに有利すぎる展開に持ち込める。
…だが上手くいかない。そりゃあ、独学でやろうとしてるからだろうけど。
なんかこういうのは自分で完成させたい感じがするんだよな。
だがそろそろ限界のようだ。
「…イムカ辺りに聞いてみよう」
蒼馬?知らんな。
というわけで早速イムカのもとに向かうことにした。
というかうちのギルドの周りをウロウロしてた。
「…何してんの?」
「!…何でも…ない」
まあ、蒼馬目当てなんだろうけど。にしても好都合だ。
「そういやお前に聞きたい事があるんだが」
「…何?」
「オーラの逆の効果を持つ魔法知ってるか?」
「アンチオーラ…」
ふむ、アンチオーラという名前か。なんとなく予想はついてた。
「それで、使うコツ的なものってある?」
「…オーラを唱えられるならわかると思うけど?」
そうなの?…そういや魔法を掛けるからって力を込めてたがもしかして……。
「アンチオーラ」
とりあえず効果がわかりやすいように自分に掛ける。さっきのように力を込めるんじゃなく、抜く…というか奪うイメージで。
「お?」
すこし体が重くなった気がする。
「だめ…失敗」
いつのまにかイムカが俺の魔法を見ていた。
しかし失敗か…。
「けどやり方は間違ってない、慣れが必要なだけ」
「そうなんだ」
「そう…」
どうやら習得はもうすぐのようだ。
しかし随分と魔法に詳しいがもしかして……。
「そう、わたしは魔力体質……」
「まだ何も言ってないんだが……」
まあいい、そりゃあグランドラゴンのブレスを真正面から相殺できる威力の魔法を撃てるんだ。魔力体質じゃなきゃ無理だろう。
「あ、あと思ったんだが」
「何……?」
「お前ん所の槍使いの槍、グランウェイト鉱石製と聞いたんだが」
「それが何……?」
「グランウェイト鉱石って市場で出回っているの見たこと無いんだが」
「…珍しいものでもないけど…自分で取るしかない」
珍しくないのに出回らない?何だそれ……?
「元々グランウェイト鉱石は砦とかの建築用……」
なるほど。つまりは建築業者的な所に売るだけで一般販売は無い感じか。
「というかランサーがおかしい……」
ランサー?あの槍使いの名前か?だとしたらまんまだな。
いやそれよりも…おかしい?
「人が扱う武器なんかにあの鉱石は使わない……」
「…何でだ?」
「…本当に知らない……?」
…これは…あれだ。当たり前の事を聞いてしまった時の反応だ。
「…俺は記憶喪失でな、知識が所々掛けてるんだ」
「……グランウェイト鉱石はこの世界で一番硬く、重い鉱石……」
…なんとかごまかせた…のか?なんか最初の間が気になるけど。
まあそれよりも情報ゲットだ。グランウェイト鉱石は重いと。
そう言えば武闘大会であいつの槍を受け止めたときに予想以上に重く感じたんだったな。
「わかった、ありがとう」
「こんな情報をきいてどう……!まさか」
そう、俺はグランウェイト鉱石で作られた剣が欲しいと思っている。しかも大剣だ。
俺は早速武器屋に向かうことにした。
「よう、今日はどうした?」
「ああ、グランウェイト鉱石製の武器、作ってもらいたくてな」
「…マジかよ」
「マジだ」
鉱石についてはもしかしたらこの店主が工面してくれるかもしれない。
「たしかに試作用にグランウェイト鉱石はあるが……」
「だと思った」
「材料費も一緒に掛るがいいか?」
「問題無い…それと大剣で頼む」
「…マジかよ」
「マジだ」
「ああわかった、三日位かかる、できたら呼ぶ」
「ああ、頼む」
こうして武器製作の依頼もした。
「ただいま」
「あ、おかえりなさい、レントさん」
うん、相変わらずアリスは可愛い。
…そうだ実験してみよう。
「おいソーマ」
「ん、何だ?」
「アンチオーラ」
俺は他人にアンチオーラを掛けてみる。
「ちょ、おま……いきなり体がすごい重くなったぞ!?」
「よし、成功だ」
「何がだよー!」
怒る蒼馬を無視し、俺はアリスに今日の成果を自慢する。
「新しい魔法だ」
「すごいですね……」
「あと…近々新しい武器が完成する」
「レントさんは…いつも先を見ているんですね」
……?何かアリスがすごい羨ましそうにしている。
まあいい、そんな感じで俺はこの日を終えた。




