初めての竜退治
「さて…と」
この世界に来て一カ月も経っただろうか。
この世界にも季節があり、なんとなく秋っぽくなってきた。
「涼しくなってきましたね」
「ああ」
アリスが話しかけてくる。うん、可愛い。
トロイアの町は季節毎の気温変化は大きいわけではないが、確実に涼しくはなっている。
と、そんな時だ。
「依頼だ」
ギルド長から一つの依頼の説明を受ける。
「…アシッドラーゴの討伐?」
アシッドラーゴ…ドラゴンか?ようやくファンタジーっぽくなってきたな。
「そう言えばもうそんな時期になったんですね」
「ん?どういう意味だ?」
「この時期になるとアシッドラーゴの行動が活発になり、各ギルドに依頼が出るんですよ」
町からの依頼…みたいな感じか?
「ちなみにこの前の合同会議で話し合ったこともこれ関連だ」
ギルド長の話をまとめると、各ギルドの冒険者たちがどの場所で戦うか、何体狩るか等、あらかじめ決めてきたらしい。
「あっちから向かってくるなら何体倒してもいいが、うちのギルドはノルマ三体だ」
ドラゴン三体…多いのか、少ないのか…。
「アリス、アシッドラーゴってどんなのだ?」
「アシッドラーゴはドラゴンの中でも小型の部類に入るモンスターです」
「特筆するべき点は?」
「たまに酸を吐いてくるので、気をつければいかと…あとは聴覚、視覚共に鋭いです」
「なるほど」
後で図鑑で調べたところ、初めてドラゴンを討伐する際、このアシッドラーゴがよく獲物にされるらしい。
ちなみに唯一スライムを捕食できるモンスターらしい…どうやってるんだ?
俺たちはある洞窟を散策している。アシッドラーゴは洞窟を住みかにしているらしい。
「…あれか」
岩影から覗く…一般的なドラゴンとは随分違う容姿をしている。かなり小さい…体勢を低くしているからか、ラプターより高さはない。
口元がくちばしみたいになってるし…どちらかといえばワイバーンだな。自在に飛ぶことはできないらしいが。
某狩りゲーに居そうだ。
「グルルルル」
しかも決定的なことにスライムを捕食する瞬間を見ることができた。あのくちばしですすってたな。
スライムを取り込んでも平気って…どんな体内だろう?
「あ、やべっ」
一瞬アシッドラーゴがこっちを見た。一応隠れたが無駄だったようだ。
「ガアアアアア!」
くっ、こんな時に限って二人は少し離れた場所で別の獲物を探してる。
アシッドラーゴが圧し掛かってくる。
「グッ……」
かなり重い。盾を構えたがそのまま押し倒されてしまった。
「ガルァアアアア!」
そのまま爪で俺を斬り裂こうとしている……が。
「オラア!」
俺はアシッドラーゴの腹辺りを思い切り蹴り上げた。
「グァッ!」
大きく後方に飛んでいく。やっぱり俺の力は強い方なんだな。
「ガッ…」
アシッドラーゴは悶え苦しんで動けなくなっている。恐らく急所に蹴りが入ったんだろう。
「これで終いだ」
俺はその眉間に剣を突き立て、やがてアシッドラーゴは動かなくなった。
「少し危なかったな」
俺はアシッドラーゴの死体を解体してる途中、胸辺りに何か埋まっているのを確認した。
「っと…何だこれ?」
血が大量についてるから解くわからんが、とりあえず赤い半透明の石を手に入れた。
「錬人!」
「レントさん!」
二人が来る。どうやら終わったみたいだ。
いや、上の方にもう一匹いるな。片づけるか?
「アリス、あの上に居る奴、倒したいんだが」
「わかりました、ウィンドオーラ!」
今アリスが俺に唱えた魔法はウィンドオーラという援護魔法だ。効果はいわゆる素早さアップだな。そして、空中浮遊ができるようになる。
「喰らえ」
俺は奴の所までひとっ飛びで近付き、剣を振った。
「ガアアアア!」
刃が首に当たり、そのまま斬れた。
「よし、倒したな」
結果的に四体、俺たちはアシッドラーゴを倒した。
帰った後アリスに早速あの石について聞いた。
「これはコアストーンですね」
ふむ…つか何でも知ってるな。
「ドラゴンの体内にある命の源…て言えばわかりやすいですかね」
「なあ錬人、この石から魔力を感じるんだが」
「なんだって?」
「コアストーンは直接、あるいはアクセサリーなどに加工して身につけることで魔力が上がる効果があります」
コアストーンも魔法使い御用達のアイテムみたいだな。ま、俺には関係…ん?
「魔力が上がれば俺も魔法が使えるようになるのか?」
一応、聞いてみる。
「…残念ですが魔法を使える素質が無い人は、どんなに魔力を上げても魔法が使えないことが、過去の実験で証明されています」
「…そうか」
まあそんなうまい話あるわけないよな。現実を見なければ……。
「ただ…」
「ん?」
「あくまで噂なので信憑性に欠けますが、マナストーンとコアストーンを合成させて作れる賢者の石があれば、魔法が使えるようになれるらしいです」




