料理
「うん…」
俺はファントスのステーキが大好物だ。ついこの間も自分で焼いて食った…が。
「そろそろ飽きてきた……」
流石に三日三食同じものは飽きてくるな。でもまだ肉が残ってるしなあ……。
「そういや米を全然食って無かったな」
この世界の主食はパンだ。米があるかどうかは知らんが市場に行ってみるか。
「結構あるな…」
俺は今、市場を見て回っている。一応米はあったものの、外国にありそうな細長い米ばかりだった。もしかしたらアカツキ国辺りに行けばちゃんとしたものが手に入るかもしれない。
それよりも野菜や調味料に興味が湧いてきた。この世界の食事について俺はまだ知らない事だらけだからな。
「ん?カウロスの肉?」
そう書かれた肉を俺は見る。
「すみません、カウロスってどんな奴ですか?」
「ん?カウロスも知らねえのか?いいか、カウロスってのは…」
俺は店員からカウロスについていろいろ話を聞いて、最後に絵まで見せてくれた。
カウロスは俺の世界で言う牛に近い…というか牛そのものだった。
…牛肉…そう言えばこの世界ってハンバーグが無いな。この町だけじゃ判断はつかなそうだけど…アリスにでも聞いてみるか。
「カウロスの肉を下さい」
「あいよ」
俺はカウロスの肉を買った。流石牛肉、結構高かった。
「さて…」
ギルドってなんでか分からんけどこういう調理場みたいのがあるんだよな。
「レントさん、料理をするんですか?」
「できんのかよ」
「ソーマ、お前は黙ってろ…アリス、聞きたい事があるんだが?」
「はい、なんでしょう」
「ハンバーグって知ってるか?」
「…聞いたこと無いです」
「やっぱりな」
「なんだ?ハンバーグを作るのか?」
なんか蒼馬がテンション高い、ハンバーグが好物なんだな……子供か。
「レントさんの世界の料理ですか?」
「ああそうだ、材料はこっちのだがほとんど同じのがあった」
というわけでハンバーグを作ることにした。
「ふむ、手慣れているな」
「お前も手伝えよ…アリスは知らないからできないだろうけど」
「フッ…ならばオレの本気を見せてやろうか……?」
これは料理ができない人のセリフだ…こいつに任せたら絶対失敗すると見た。
「やっぱ、いい」
「ホッ…そうか、残念だ」
今思い切り安心しただろ!?何がホッ、だよ!
「味付けもしっかりして……」
ちなみに調味料に関しては、名前も元の世界と同じだった。ソース類もだ。
「兄貴ー!」
完成間近で鬱陶しい奴が来た。
「料理ですかい?兄貴」
「レントさん…?」
「おい錬人……」
そういやこいつらは知らなかったな。まさかギルドまで入り込んでくるとは、とんだヒマ人だな。
「気にするな、気にしたら負けだ」
「そ、そうか」
「うまそうな匂いがしますなあ」
「…仕方ない、お前も食ってけ」
「ありがとうございまっす!」
とりあえず完成したハンバーグにデミグラスソースをかけてみんなに渡す。
「そういやギルド長は?」
「たしか今日は各ギルドの合同会議があるそうなので留守にしていますよ」
どうりで見ないと思った。つか、合同会議って何を話し合うんだ?
「おお、美味いぞ」
おい蒼馬、何フライングして食ってる…子分の奴ですら行儀良く待っているというのに。
「じゃ、食っていいぞ」
俺たちはハンバーグを食べる。
「美味しいです!」
アリスが目を輝かせながら言う。可愛い。
「兄貴…おれはこんな美味いもん、はじめて食ったっす!」
子分に至っては泣いている。おっさんの泣き面なんぞ見たくもないがな。
正直言ってファントスのステーキの方が好きだが、ずっとじゃ飽きてきたからハンバーグを作ってみたんだが上手くいったようだ。
「一応ギルド長の分も用意しとくか……」
この日を境に俺は、暇さえあれば料理をするようになった。




