開催宣言
俺がこの世界に来て、二週間がたった。
少し前まではラプターの群れを一人で倒したとか、決闘で巨漢を倒したとかで大騒ぎしていたが収まってきたようだ。
その代わり……。
「おい…あんま調子乗ってんじゃねえぞ!?」
こういう不良冒険者に嫉妬心からか絡まれるようになった。
「……」
こういうのは無視に限る。相手する必要無い……が。
「無視するんじゃねえ!聞いてんのか!」
しつこい、ウザいで俺のストレスも結構溜まって来てる。
確かに、こいつらをぶちのめすことは簡単だ。だがそれじゃ、根本的な解決にならない。
絶対に仕返しにやってくる。
「おれの方が、強いんだよ」
なにを根拠にこの男はこんなことを言っているんだろうか。もはや意地だな。
…そういえば決闘って自分の意見か他人の意見かどちらが正しいのかを証明できる舞台なんだよな。決闘すれば諦めさせることもできるかもしんないけど…やる理由がな……ん?
「そうか!」
「あ?いきなりなんだよ!」
「いい事を思いついたんだよ、お前、俺を倒したいんだろ?」
「ああそうだ」
「そのうえ金が手に入るならいいと思わないか?」
「何?そんなことができるのか?」
「知りたければ付いてこい!」
「命令するんじゃねえ!…が付いて行ってやる」
そんなわけで俺と不良冒険者はコロシアムへと向かった。
「こんなとこで何するつもりだ?」
「まあ見とけって…すいませーん」
「おや、コロシアムになんの用だい?」
コロシアムの管理人が出てきて聞いてくる。
「今度、冒険者たちによる武闘大会をやろうと思っているんですが…」
「ほう…」
俺の考えはこうだ。この不良冒険者や他に絡んで来る奴らを公式の場でぶちのめし、俺に挑む気を無くさせると共に、賞金を頂くっていう算段だ。
「うーむ」
「いいでしょう、客も集まると思いますし…儲けるチャンスですよ?」
「!」
管理人も俺の意見に賛同しそうだ。後は……。
「へへ…面白いことを考えるじゃねえか、小僧」
「だろ?」
こいつはやる気満々、問題無い。
「わかりました、開催日やルール等はこちらで決めときます」
「おう、宜しく頼む」
こうして武闘大会が開かれることとなった。
「ククク…これで金が手に入る」
おっと、つい声に出してしまったようだ。まあいいギルドに向かおう。
「遅かったじゃないか…さっきうちにこんなのが届いたぞ」
ギルド長が一枚の紙を差し出してくる。なになに……?
武闘大会、開催します。期日は…。
「情報はえーなおい」
「ん?どういうことだ?」
「俺がさっきコロシアムに提案してきたんですよ」
「レントさん!」
「錬人!」
そこに二人がやってきた。
「今、広場で武闘大会の宣伝が……!」
「…本当に、早い」
俺が提案してから一時間も経ってないぞ!?思い立ったらすぐ行動かよ。
「あー実はな……」
俺は二人にも事情を説明した。
「で、ルールにギルドから一人ずつメンバーを決めるって書いてあるが……」
「俺でいいだろ?」
「まあ、問題無いが…」
基本、対人で負けることはこいつら以外にはありえないからな。というかこいつら強すぎんよ……。
「それに勝てばかなりの金が手に入るぞ?」
俺の発言に蒼馬とアリスが固まった。ん?俺変なこと言った?
「錬人…すごい悪そうな顔してるな」
…そんなに悪い顔?…あ、アリスに目を背けられた…う…居ずらい。
「ま、まあ三日後の大会に備えて、素振りでもするかー」
俺は逃げるかのようにこの場を去って、剣の素振りを始めた。




