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午前2時、30分

 夏休みも終盤。同じサークルの3人は肝試しに出かけるが…。

 僕たちは、背中に感じる妙な感覚に囚われながらこの廃墟へ足を踏み入れた。


「ね、ねぇ、やっぱり引き返さない? ここって”出る”って話なんでしょ」


「だから行くんだろ? 肝試しなんだからさ」


 街はずれに大きな公園があり、その敷地内に戦時中に病院として使われたコンクリート造りの建物があった。所有者が不確かで私有地のためか壊されずに放置されていた。そんな経緯があるからかいつしかここには幽霊が”出る”ともっぱらの噂だった。


「まぁ、たまにはいいんじゃないか。夏休みの最後の冒険ってやつじゃないか」


「そうそう。さぁ、行ってみようか」


 同じ大学のサークル仲間4人で夏休み最後のイベントとしてこの肝試しを計画していた。智樹ともきは深夜の居酒屋バイトが急に入って欠席。残った僕と雪乃ゆきの慶介けいすけは予定通りにこの薄暗い廃墟へと来ていた。


「やっぱり、何だか寒い気がしない?」


「そうか? 俺は何も感じないけど……」


 僕はさっきから両腕がピリピリしている。それというのも少し怖がりな雪乃がぴったりと腕にくっついているからなのだが、それを別に期待していた訳じゃない。そうとも別に期待してないって。


「噂だけで何も出ないんじゃない? ホラ、心霊番組でもテレビが入るとあんまり出たりしないじゃん」


 そう言い終わるか、どうかという時、何かが部屋の中で光った。

 懐中電灯だけの薄暗い部屋の中。散らばった雑誌や壊れたままの机や備品がそのままになっている。何かに光が反射したのか。


 ビシッ


 小さなものが壊れるような、ひび割れたような音が響く。


「わ、悪い……落ちてた鏡踏んだみたいなんだ」


「おどかすなって。さすがにもう出ようか。嫌な予感もするし」


「そうよ! 智樹の居酒屋に行って朝まで飲むってのはどう? それも冒険よ」


 酒豪の雪乃に俺はついていけないけど、これも惚れた弱みだな。


「お前たち、いい雰囲気だな…おれは残念な男だよ」


「か、からかうなって!」


 外の空気はとても澄んでいた。都会の空気がこれほどいいのかと思うほどに。あの建物の空間は本当に別の、何か違う雰囲気があったのは間違いない。


「おい、ホントに行ってたんだな肝試し」


「なんだ智樹じゃないか。バイトはどうしたんだよ。確か5時までじゃなかったか」


「い、いや、携帯が繋がらないから来てみたんだ。店の人もいいからって言ってくれてさ」


「何を?」


「だって、慶介が電車にねられて死んだって先輩から聞いて」


 何を、何を言ってるんだ。

 慶介なら一緒にいるじゃないか――。振り返った先には、僕と、雪乃しかいなかった。


「事故って、いつだよ!」


「確か、2時30分だって……」


 時計は、午前2時55分をさしている。



 

 読んでいただきまして、ありがとうございます。

 夏向けのホラー作品です。投稿する前に読んでもらったのですが、あまり怖くはないとのこと。


 こんな体験、僕は絶対に嫌ですが。

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