ネオンサイン(666文字)
空白、改行を含む、666文字で書いた作品です。
不思議系&コメディーです。
偶然って、恐ろしいときがあります。
その日、僕はぶらぶらと繁華街を歩いていた。明るいうちから輝くネオンが眩しい。
最近ついていないことが多い。さっきもバイト先をクビになったばかりだ。しかもその理由が。
「悪い。同姓同名がいてさ。もう一人の方だったんだよ。採用したのさ」
「は?」
そういう理由でいいのか? 反論したかったが騒ぎ立てても仕方がない。別に絶対にバイトしないと生きていけないという訳でもないしな。来年は実家に戻るし。
(やっぱり、次のバイト先を探すか)
「いらっしゃいませー」
景気よく挨拶するコンビニの店員。百円コーヒーでも飲みつつバイト雑誌でも読むとするか。
「おっ、この店員……可愛いな」
思わず心の声が表に出てしまうのを抑え、
「お客様、聞こえてますよ?」
どうやら抑えられなかったようだ。苦笑いをしつつ代金を払って店を出る。
それにしても声に出てしまうとは不覚だった。いや、しかしだ。もしかすると彼女は嫌ではなかったのかも……。などと思ってみるがそれも空しい。
「やっぱり、落ち着かないなぁ」
こんな人通りの多いところでコーヒー飲みながら歩いているのも気が引けるし。時間は午後五時二十分。もうこんな時間か。それなら居酒屋でゆっくりしたほうがいいかもしれないな。
夏だからかやっぱり空が明るいよなぁ。そんなガラにもないことを考えていると、ネオンと電光掲示板が目に入った。
『そこの貴方! 仕事をクビにされた貴方です! もしかすると――』
そこまで見たところで目をそむけた。ロクなことがないのはもう勘弁だ。
今回も読んでいただきまして、ありがとうございます。
掌編も気が付けば10編を超えていました。
新しく考えながら書くのは楽しいですね。思わず自分でも笑ってしまうことがあります。




