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イケメン妖怪ハンターリックの冒険シリーズ

イケメン妖怪ハンターリックの冒険(山里編)

作者: 神村 律子

 リックは古今無双のスケベな元猫又です。


 今日も奥方の遊魔と共に妖怪退治の旅をしています。


「今回は雪深い山里だそうです、お前様」


 宿に到着した時、遊魔が言いました。するとリックは、


「僕は寒いの苦手にゃん。遊魔が一人で行って来て欲しいにゃん」


 ダダをこね始めました。


「そうなんですか」


 遊魔は笑顔全開で誰かの口癖を真似ました。


「では、その美人の里には遊魔が一人で行って来ますね、お前様」


 遊魔はそのまま宿を出て行こうとしました。


「ちょっと待つにゃん、遊魔。やっぱり遊魔だけだと危ないにゃんから、僕も行くにゃん」


 リックは「美人の里」と聞き、気が変わったようです。


「そうなんですか」


 また誰かの口癖で応じる遊魔です。




 こうして、リックと遊魔は山奥にある「美人の里」に向かう事になり、妖術で出した防寒着を着て出発しました。


 しかし、山の麓に着くと、雪の深さが当社比二百パーセントとなりました。


 辺りは暗くなり、雪が激しく降り始めました。


「これ以上進めないにゃん」


 リックは落胆しました。すると、


「旅の方、よろしかったら、ウチにお泊まりください」


 近くに住む奇麗な女性が声をかけてくれました。


「ありがとうにゃん」


 リックはその女性に抱きついて喜び、


「お前様!」


 遊魔の踵落としで気絶しました。




 リックが目を覚ますと、そこは暖炉がある大きな部屋で、テーブルの上にはたくさんの料理がありました。


「おお!」


 よだれを洪水のように垂らすリックです。


「お一つどうぞ」

 

 女性にお酌をされて、リックは酒が進みます。


 それを見て遊魔はほっぺを可愛らしく膨らませています。


 酔いも手伝って、リックは今までの武勇伝を語りました。


「まあ、妖怪退治をなさっているのですか?」


 女性は目を見開いて驚きました。リックは鼻の下を伸ばし、


「そうにゃん。僕こそ、世界で一番強い妖怪ハンターのリックなのですにゃん」


 誇らしそうに言います。


 リックの武勇伝はそれからしばらく続きましたが、やがて眠ってしまいました。


「こちらでお休みください」


 女性が別の部屋に案内してくれました。遊魔はリックを引き摺って部屋に入りました。


「ごゆっくりお休みください」


 女性は微笑んで会釈し、自分の部屋に戻っていきました。


 


 そして、夜中になりました。


 リックは最近必ず尿意を催して目が覚めます。それも二回です。


(ううう、漏れそうにゃん)


 リックは急いで部屋を出て、かわやを探しました。


「うん?」


 料理を食べた部屋の灯りがまだ点いているので、


(あの美人がいるのかにゃん?)


 スケベ心を起こして覗きました。


 すると先程の女性が包丁を研いでいるのが見えました。


 しかも女性の後頭部には醜い妖怪の顔があり、目が合ってしまいました。


「みーたーなー」


 妖怪は常套句を言い、包丁を振り上げると襲いかかって来ました。


「うひゃあ!」


 リックは仰天してお漏らしをし、慌てて逃げ出しました。


「待てこら!」


 妖怪は廊下に飛び出した時、リックの「落とし物」に足を取られ、滑って転んで壁に激突し、気絶してしまいました。


「今にゃん!」


 リックは妖術で縄を出し、妖怪を縛り上げました。


「お前様?」


 そこへ遊魔が寝ぼけまなこを擦りながらやって来ました。


「見るにゃん、遊魔。思った通り、ここは妖怪の家だったにゃん」


 全然思っていなかった事を言ってのける生まれついてのペテン師のリックです。


「さすがお前様ですね!」


 遊魔は感動してリックを見ています。


「ここにいるのは危ないにゃん。すぐに出発にゃん、遊魔」


「はい、お前様」


 二人は防寒着を着て、その家を出ようとしました。


「え?」


 闇夜に浮かぶ無数の赤い光に気づき、リックは嫌な予感がします。


 周囲を見渡すと、それは隙間なく並んでいました。


(囲まれてるにゃん……)


 もう一度尿意を催し、漏らしそうになるリックです。

ということでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] おしっこ漏らしたまま外へ出たら、きっと氷柱になるにゃん (T_T)
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