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ているカフェ  作者: 融流
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箱庭の空想理論

独占欲も愛情もごちゃまぜに。

…あれあれ、また会っちゃったね。

誰かが屋上に来るのは珍しいなぁ。

怖い話、聞いてく?


―うん、じゃあ今回はとらわれちゃった女の子の話をしてあげる。


――――――――――


なんで、と心配そうな目を向けられた。

それでいいんですか、と泣きそうな目をされた。

理解できない、と呆れた目を向けられた。

どうして、と睨まれた。


僕には、君達がそんな風に感じるのかがわからない。

大事なものは、閉じ込めておくものじゃないの?



--自殺未遂回数、1328回。

そのうち最も多いのはリストカット、次に首絞め、次にー…。

今日の朝も、首を絞めたままの状態で起きた。


「…朝か」

「もうちょっとだったのに」

「また気絶した」

「まぁしょうがない」


独り言をつぶやいて、学校へ行く支度をする。

さすがに十年もやっていると疲れる。


もう少ししたら先輩が迎えに来てくれる。

それまでに服を着替えておかなくちゃ。


いつもの一日が始まる。



授業中。


「だから、そうじゃなくてこれはx平面上をこう移動するから」

「だっけ?ごめんありがとー」

「もー。”やればできる”んだからちゃんと真面目にやろうよ!」


やればできる?なにそれ?

やったって何も変わんないのにやる必要あるの?

意味わかんないよ。


休み時間。


「もっとおしゃれすればいいのにー」

「面倒だからいいよ」

「そんなこと言ってるから”恋人できない”んだよ!もっと頑張ろうよ!」


うるさいな。

自分の時間減らしてまで作る必要性を見い出せないし、

本性隠したままで付き合うなんて疲れるだけだよ。


嘘ついて、言葉をごくんと飲み込み。

割と面倒で窮屈な毎日を今日も過ごす。


変化なんて大嫌いだ。

できることならずっとずっと昔のままの自分でいたい。

だから昨日も、今日も、明日だって。

僕は繰り返す。


椅子に座ってカッター握りしめて

左の手首は痕だらけ、右だってそんなに綺麗なもんじゃない。

まぁどうでもいっか、なーんて太ももを突き刺す。

あんまり刃が通りにくいからこれはダイエットするべきかな。


(それじゃ、また明日にしよう)


不意にがらり、とドアが開いた


「××ーご飯行こう…え?」

「先輩…」


あーまたやった。

これは引かれた感じかなー

まぁしょーがないか、僕って異常だもんな。


「止血してからでいいですかー」

「…あーうん、外で待っとくね」


止血して、長袖を羽織って外へ出る。

不思議なことに、と言うべきか。

先輩は僕を待ってくれていた。


その後は相も変わらずおしゃべりをし、ご飯を食べて帰ってきた。


「でさー、このキャラがさー」

(どうして見捨てないの、意味わかんない、)


その次の日も、次の日も先輩と一緒に過ごした。


「××ー、ご飯だよ!」

(なんだかあったかい。

この人の傍は、居心地がいい)


ゲームの話で盛り上がった。


「このゲームいいよね。ストーリー面白い」

(面白いって笑い合える、なんて、)


美味しいお菓子をもらった。


「××、これあげる。東京行ったからお土産」

(いつものお菓子の3倍くらい美味しかった)


傍にいるのが、当たり前になった。


「××ってツンデレだよねー」

「それはない」


楽しくて、幸せな時間だった。


「先輩、明日も卒研ですか?」

「そーだねー。課題多いけどまぁ楽しいよ」

「頑張ってくださいねー」


―いつからか、依存していることに気づいた。


「先輩、ごはん」

「今行くー」


友達よりも、勉強よりも優先させていることに気づいた。


「コンビニですか、大丈夫ですよ」

「ほんとに?じゃあ行こっかー」


もし、先輩がいなくなったら

僕はどうなってしまうのだろうか


「先輩、卒研終わったんですね。お疲れ様です」

「ほんとだよー。ありがとー」


考えるだけで、こわくて。

傍にいてほしい離れないでどこにもいかないで僕のこと嫌いにならないで捨てないで。

僕の大事な、大事な先輩。

ねぇ、他の物なんていらないから、先輩だけは僕にちょうだい?


なけなしの理性で抑えつけたって

忘れようと努力してみたって

行き場のない思いは、燻るばかり。


僕は、彼氏が出来て友達も増えて人付き合いもできるようになった。

就活だとかでとっても忙しい。

…先輩も、そろそろいなくなる。


冬ももうすぐ終わるだろう、という時期。

僕は一人暮らしをすることになった。

荷物をまとめて、書類を書いているうちにふと呟いた。


「先輩を、閉じ込めちゃえばいいんだ」


一人暮らしだから他人を家に入れなければバレることなんてない。

簡単じゃないか。


計画を立てて、実行するまでは楽だった。

引っ越して、先輩を家に呼んで、酒を飲ませて酔い潰した。

寝ているうちに通販で買った手錠と足枷をつけて、これで出来上がり。


「先輩、おはようございます」

「んー、私寝ちゃってた?ごめんごめん」

「いえ、別に大丈夫です」

「今着替えるからさー…え?なに、これ」

「何って、手錠と足枷ですけど」

「いや、なんで私に付いてるのかを聞いてるんだけど」

「僕が付けたから、ですけど」


やっぱり、怒った?

今度こそ見放されちゃうのかぁ。

でもでも、関係ない。

手錠をかけて、足枷をつけて、僕のそばに置いておかなくちゃ。

だって心配だもん、他の奴に取られたりなんかしたらそれこそ嫌だからね。


「…なんで?」

「先輩に傍にいてほしいからです、僕だけの先輩でいてほしいからです、同性なんて関係ありません。

…軽蔑、しましたか?今度こそ、見捨てますか?」

「…いや。私は軽蔑しないよ。だって、それが××の生き方なんでしょ」

「先輩…」

「だからって、納得するかどうかは別問題だけどね」

「嫌です、軽蔑して見捨てないならずっと傍にいてください」

「極端すぎじゃない、それ?」

「極端だろうが何だろうが他の人のところに先輩が行くのは嫌です」


それくらいなら、僕を嫌って。

罵ってくれても構わない、無視してくれても構わないから。

そしたら、離してあげられる。


「…そんな目をしたって、私は××が望む答えをあげられない。嫌いには、なれない」

「先輩、馬鹿、ですね」

「これでも頭はいいほうだよ」

「僕を切れば、そのままの生活が戻ってくるんですよ。嫌いって一言言えば、それで、」

「そしたら、次は本当に死ぬんだよね?」

「…」

「じゃあ却下」


あったかい、けど鋭い言葉が僕に投げられる。

捨てられるなら、先輩を送り出して死ぬつもりだった。

バレていたなら、隠す必要もない、か。


「…先輩は本当に馬鹿ですね。将来のことを考えるなら見捨てて忘れた方が楽なのに」

「なんか自分のせいで自殺とかやだ。てか忘れさせない気まんまんでしょそれ」

「バレました?だって忘れられるの嫌ですもん」

「送り出したあとに投身自殺ってとこかな。そりゃあ忘れないよね目の前でパーンなんて」

「先輩ってエスパーかなんかですか?」

「いや、宇宙人」

「ははっ」


ああ、またいつもみたいに先輩のペースに持ってかれそうだ。

今日は流されちゃダメなのに。


「話戻しますね。…ここに残ってくれますか?」

「いいよ、毎日お肉ちょーだいね」

「いいですよ、勝手に逃げないでくださいね」

「無理だろそれ」

「まぁ、そうですけど」

「残るから、お世話ヨロシクー」

「了解です」


よかった、うまくいった。

これで、僕だけのもの。

外堀から埋めちゃえばいいなんて言うけれど、そんなものいらない。

全部壊して、閉じ込めちゃえばいいんだから。

先輩が視界の隅で薄く笑ったように見えた。


先輩が行方不明になったとかで、外は騒がしかった。

僕にも何回か警察の人が聞きに来てたけど、知らないって言った。

お前らなんかに邪魔されてたまるもんか。

僕の幸せは壊させない。絶対に。


「××、私の下着どこー?」

「2番目の棚です」


「××、今日は何する?」

「…ゲームでもしますか?」


「××、今日は甘えたがりだね。なんかあった?」

「ちょっとバイト先で怒られただけです、もん…」


幸せな日常はまだまだ続くんだ。

何人かにはバレちゃったけどそんなの気にしない。

先輩はいいって言ってくれたもん。

先輩はこれでいいって笑ってくれたもん。

他人の意見なんて、いらない。

恋人とは別れた。

友達はちょっと減った。

だけどそんなもの苦にもならないくらい僕は幸せだ。



ね、先輩

ずっと僕と一緒に居ましょうね?

ごはんも洋服もお風呂もテレビも欲しいもの全部用意してあげますから。

だから、外に行きたいなんて言わないでくださいね?

そんなこと言ったら次は目隠しも増やしちゃいますから。

何にも見えなくなれば外の世界なんて忘れちゃいますよね。

大丈夫ですよ、僕がずっとずっと隣に居ますから。

お世話も全部全部してあげますね。

一生、死ぬまで。


「いいよ、私以外を見ないなら」



――――――――――


これって、結局どっちがとらわれたんだろうね?

…ま、どっちも、だろうけど。

後輩に捕われた先輩と、

先輩への執着に囚われた後輩と。

世界はこの部屋だけで成り立っているなんて、そんなことありえないのに。

人間って思い込んじゃうとこわいものだなぁ。


案外、ぜんぶ先輩の掌の上だったりするかもよ。

後輩の好意を逆手にとって説得するふりをして、閉じ込められて、なんて。

…真相はこの先輩にしかわからないけど。


君も気をつけなよ。

ひとかけらの好意がいつ狂気に変わるかなんて誰にもわかんないんだからさ。

あんまりいろんな人に優しくしすぎないことだね。


それじゃあ、僕はこれで。

またね、××さん。























実際にありそうなもの書いたつもりだったけどよくわかんなくなっちゃった

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