表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
りばいばる  作者:
幼年期の章
4/6

#04 驚異!幻の白黒女を春告幼稚園に追え!!前世紀の怪物は実在した!!!

 【ある波紋】

 彼女が報告を受けたのは、それが起こって暫く経った日であった。

 それは氏族関連企業の運営を任せた孫から来た定期的な報告に添付された、単なるコメントに過ぎなかった。

 幼稚園に通う彼女の来孫(きしゃご)が不可思議な体験をしたという。そんな幼児にありがちな妄想。

 さる理由から注目していた部門からの報告とはいえ、それを観たのは多分に偶然であったのだが。


 ───ナカヤハルミ


 これは…………放置して良いものだろうか?

 下手に嘴を突っ込めば「あの一族」の逆鱗に触れかねない。

 それは半端な力しか持たない我々にとっては致命傷だ。


 かといって、知っていて黙っていた。

 万が一にも露見した時にそう受け取られることも不味い。

 伏せていた、その目的が敵対意図と受け取られたらお仕舞いだ。


 数年前の光蓮寺家の事件とその顛末は表立っていないものの、かなり有名である。

 そのキーワードとして聞き及んでいたのがナカヤハルミ。

 すると今回は、その事件の余波だというのか?


 不味い不味い。これは本当に不味い。

 とんでもない事態に巻き込まれてしまっている可能性が高い。

 彼女は放置を諦め。かの一族、春宮家に連絡する準備を始めた。



 ──────────────────────────

 #04 驚異!幻の白黒女を春告幼稚園に追え!!前世紀の怪物は実在した!!!

 ──────────────────────────



 入園式からしばらく経ったある昼下がり、わんこちゃんが提案しました。

「探しましょう!」

 わんこちゃん、目的語がありません。

「あの白と黒の幽霊さん!」

 放っておくという選択肢はNG?

「お母さんもお姉ちゃんたちも、誰も信じてくれないのよ」

 そりゃ、証拠も何も無いですし。


「よし勝負だ!ハルハル。先に幽霊の証拠を見つけたほうの勝ちだ」

 あー、分かりやすく残念な人が来ました。

「ならば、受けて立ちますわ」

 聡子嬢が宣言。えっ、という顔でショボる弘毅君。

 なんか、あたしが居なくても自動的に話が進んでいく気がします…


 春告幼稚園は園児の数が少ないためでしょうか、現在は学年別ではなく縦割りの編成となっています。モメ事のあった関係園児を同じ組に入れたのは、とにかく早々に顔見知りとなったのを幸いとしたのかもしれません。問題児くくりじゃないよ…ね?


「先輩、私たちがお手伝いしますから、気を落とさずに」

 弘毅君に助力を申し出たのはたすくちゃん。

 彼女はわんこちゃんの従姉妹です。

「たすくちゃん…頑張るよ、俺」


「たすくん、手伝ってくれないの?」

「だって、こっちの方が面…大変だから。」

 たすくちゃんは、直情径行の気がある弘毅君に興味がある風で、面白がって焚きつけにかかっているのですが、面白がるということはそもそも…

「たすく。漏れてる。漏れてる」

 たしなめる彼は菱凪洋平。たすくちゃん専用のツッコミ装置です。

 母親は如月家系列企業に務めているということで、保育所からのコンビで息がバッチリです。

「あ、あたしも…手伝っていい?」

 洋平君の袖を引っ張っているのは野村真由。聡子嬢の妹です。おとなしめな感じですが、その実かなり洋平君には積極的で、実はイケイケではないでしょうか。

「うん、一緒に探しましょう」

「うん!」

 仲間に入れてもらえて、うれしそうです。

 洋平君はと言えば、たすくちゃんを甲斐甲斐しくサポートしていますが、他の面々にも配慮を欠かさない卒のなさで、真由ちゃんを拒絶するような真似は見せません。現世日本だと、男の子はマメじゃないとやっていけない風ですが、彼のマメさは尋常ではありません。大人になる頃には彼の遺伝子はあちこちに伝搬していそうです。


 野村姉妹の祖母は、この幼稚園の園長先生で、時々視察に来てはため息を吐き、胃をさすっています。

 特に神経質なタイプにも見えないのですが、…あれ?やっぱり自分ら問題児?


 しかしなんでしょう、この人間模様。レベル高すぎじゃないでしょうか…?

 君たち、中には小学生か中学生が入ってませんか?

 幼稚園児って。こう、もっと素朴なものを期待していたんですがね。

 前世では気づいていなかっただけですか?

 早くも周回遅れの上に、置いてきぼりになっている気がしてきました。







 ハッ!!リハビリ。リハビリ。リハビリ。リハビリ。

 じゃあ、がんばろー!

「おー」

 一応、担任の美咲先生には園内の散歩に行ってきます、と伝えておきましょう。


 幼稚園は、お遊戯とか音楽とかの授業以外は基本的に自主学習です。

 そのため、飽きもせずブランコに乗るもの、砂場で何かしら作っては壊し作っては壊しするもの、怪獣ごっこで正義の味方に退治されることに無常の喜びを見出すもの、と個性豊かになっています。

 またワラシと御庭番により児童の安全配慮義務が緩和されているため、かなりの自由行動が許されていますので、園内ならばどこに行くのも問題はありません。

 もっとも、危険等発生時対処要領に対しての厳格な監査による、施設等の安全管理への信頼があってのことですが。


  ──────────


 展望台を探してみたものの何の痕跡も見つかりませんでした。もともと他にあてのある調査ではないので、早くも頓挫しつつあります。

 結果、例によって軽くピクニック気分で園内を散策して回ることになっています。

 幽霊騒ぎは、わんこちゃんが熱をあげているため広く知られていて、ちょっとしたブームのようで、何組かの集団がキョロキョロと探し回っていたりします。

 怪奇話は本所七不思議などを引き合いに出すまでもなく、いつの時代も格好の話のネタです。噂の当人が他人ごとのように言うことではないでしょうが。


「あ、綺麗な石はっけん」

 わんこちゃん、既に飽きていますね。

 緑がかった石を得意げに持ってきます。爪の先ほどの八面体です。

「まあ、綺麗」

 聡子嬢が食いつきました。さすが女の子ですね。

 …いや、あたしも女の子だったのです!十七年ほども女の子やってる割に女子力つきませんね。ふう。

 石はガラスでしょうか?いえ、ワラシの拡大視覚でも擦り傷すら見えませんので石英よりは硬そうです。自然石にしては形が綺麗すぎるように感じますし、多分何かの部品の一部だったものじゃないかと思います。

「落としてしまうといけないですね。そうだ、これに入れたらどうでしょう」

 ゼンマイに持たせている装備品から小ビンを渡します。透明なガラス製バイアル瓶で、このような標本の保管には最適です。

 慎重にその中に石を落とすと、コルク栓をはめて完成します。口をリボンで縛れば完璧なストラップなのですが、さすがに所持していませんのでタコ糸です。

「わーい、ハルハル、さんきゅっ」

 ん、可愛いですねわんこちゃん。

 聡子嬢の冷ややかな視線が…ハッ、無意識に頭をなでなでしていました。

 あわてて手を退けると、わんこちゃんが残念そうに見ています。

 聡子嬢の視線に気づいて、ニマっと笑ったのを「見逃し損ね」ました。

 あわわわ、黒い、黒いです。何故?



 ついぞ忘れ果てていましたが、現場百篇という言葉があります。

 なんとなく「勝負」を挑まれたため、適当に流そうとか思っていたのですが、聡子嬢が気づいてしまいました。

 展望台に向かった我々を待っていたのは、弘毅君パーティでした。

「上総様たちは何をなされているのでしょう?」

 若い男の人が何かの機械をセッティングしているようで、それを見ているようです。

 あんな機械を一体、どうやって持ち込んだのでしょうか?と近づいてみると。


 ───工事標識

  工事名:機械警備機器監査工事

  実施期間:2066/04/07~09

  請負業者:上総警備保障(株)


 うわぁ…

「ああ、おばあさまが話していましたわ。

 警備を委託している上総様の御実家から、設置機器の検査の申し入れが…」

 弘毅君ちは警備会社なのですね。

 ケーブルを引いていた若い人がこちらに気づきました。

「若、ご友人です」

 若?あわわ、弘毅君の実家は「その筋」なのでしょうか?



 はあ、家で幽霊の話をしたら、オオゴトになったと。

 機器の不備ではないと証明する営業活動なんですか。お仕事ご苦労さまです。

「いえ、幽霊なんて久しぶりのイベントで、皆も面白がっていますよ。場所が学校じゃなかったら総出で押しかけそうです」

 二十歳そこそこの若い社員さん、夏水さんという方です、彼が屈託の無い笑顔で答えます。

「十年も経っていないコロニーなんかで因縁話なんてこともあるわけ無いんですが、この手の話は見逃せませんからね」

 設置している機器はマルチセンサーで、そこから社のサーバに送られているデータに皆でかぶりついているそうです。

「天城さんまで「俺がちょっと見に行くよ」とか乗り気なのが驚きだよね」

 天城さんという方は工事責任者として看板に書かれている方のようです。

「腰が重いですからね相談役は。でも俺らには分からないけど、何か気になることがあるんでしょう」

「天城様まで居らっしゃっているのですか?」

 聡子嬢まで知っているとは、その人はかなり有名人なのでしょうか。

「平成の小泉勝三郎とまで言われる、ウチの相談役でさ」

 誰でしょうそれ。

「ご高名はお聞きします。お会いするのは初めてですが」

 洋平くんも知っているそうです。如月家からも知られているのですね。

「今、園長先生に挨拶に行ってますが、そろそろ。お、噂をすれば」


「坊ちゃん、お待たせしました。おや、お客人ですか?」

 背広を着た若い男の人がやって来ました。かなりのイケメンではありますが、どことなくうちの父ちゃんを思い出してしまうのは何故でしょう。残念気味です。

「失礼しました。坊ちゃんのトコで相談役をやらせて頂いています、天城と申します。

 …どうかしましたか?」

 ご丁寧にどうも。相談役と聞いて年配の方を想像していました。

「これでも、かなりの歳なんですがね」

 笑ってそう答える天城さん。夏水さんと大して変わらないように見えます。

「では、始めさせて頂きます。夏水さん、記録の準備はOKですか?」

 はて、もう調査機器の設置は終わっているのでは?何か作業があるのかな?

「天城さんは珠法士なんだ」

 自分とわんこちゃんの目が真ん丸になったのが判る。

 コロニーを闊歩する宇宙時代の魔法使い。

 その一人が今、目の前に!

「ハルハルのお母さんたちは?」

 …素で忘れていました。あれはノーカンでひとつ。

「春宮さんの親御さんに比べたら、とんだチンピラですよ」

 うちの両親の知人でしょうか?

「お噂は常々」

 なんなんでしょうかね、うちの親は。


  ──────────


 さて、平成一桁の前世には珠法士などという職種は存在していませんでした。これは確かです。では、歴史に初登場したのはいつ?といえば、言及を延ばし続けてきた精霊戦争について説明する必要があります。

 ちょっと長い話なので大幅に要約してしまいます。



 1990年に地球に墜ちてきた怪獣が暴れまくった挙句に日本にカチコミかけたところを、どこから来たのか謎に包まれた存在であった精霊機構が要撃し撃退に成功。その二年後に怪獣と精霊機構の戦闘中に米軍が核攻撃。怪獣と米軍に挟撃された格好となってしまった精霊機構を救ったのが、名前は知られていませんが最初期の珠法士でした。

 精霊戦争と呼ばれる事件に関してはまだ半分なのですが、珠法士という存在が歴史に躍り出た、これが最初です。



 天城さんが展望台に一人、風を愉しむかのように立っています。

「観客がおおくて緊張します。ちょっと芝居がかってますが、笑わないでください。

 恥ずかしくて死にたくなります」

 軽口を叩いたあと、おもむろに目を閉じて、作業を開始します。

「珠法行使責任者、上総警備保障株式会社相談役、天城宗一郎。

 珠都種免許権限による請求、珠法行為取締法における業務目的特例措置申請。

 作業内容、二種珠法行使。精密空間遡行探査。

 作業範囲、12万5千立法m、1500ミリ秒」

 作業が始まった模様です。いえ、この口上は呪文とかではありません。

 珠法士の作業は、厚生労働省令改正労働安全衛生規則により、「事業者は、珠法作業の行使については、あらかじめ、当該作業に関する合図方法を定め、かつ、これを関係労働者に周知させなければならない。」と定められているそうです。そのため、ワラシ経由で電子申請しつつ、周囲の人間にも作業中である合図として伝えるのが目的の口上です。

 個人として破格の潜在的戦力を持つ珠法士は、このように生活圏内においては色々な制約が課せられています。

『工事演習申請中。しばらくお待ちください』

 脇に控えているワラシが作業監査役を務めています。


『工事演習申請受理されました。申請受付番号は2066-04-08-012-V』

「工事演習申請受理確認。申請受付番号2066-04-08-012-Vを根拠とし、標準手順書に従い、作業を開始します。5m以内には立ち入らないように願います。

 法定安全距離内の安全確認」

『法定安全距離内の安全よし』

「保安術式、擬似構成水準まで解除…3.2.1.実行。

 擬似構成開始。定盤構成、治具構成設置。実構成部品配置。…………。固定。

 導通試験準備」

 雰囲気が変わり、緊張があたりを包みます。

「閾下展開20ミリ秒。3.2.1.実行」

 チ、という音が一瞬、身体に響きます。

『…珠法反応観測報告。誤差の閾値以内と確認』

「擬似構成による保安術式への負荷水準も既定値。本工事申請」

『本工事申請中。しばらくお待ちください』

『本工事申請受理されました。申請受付番号は2066-04-08-012-R』

「本工事申請受理確認。申請受付番号2066-04-08-012-Rを根拠とし作業を開始します。

 擬似構成を拡大展開。3.2.1」

 ギン!という、振動が辺りを通り抜けました。

 その振動は一瞬だけで、代わって音が柔らかく私たちを包みます。

「綺麗な音…」

 たすくちゃんが、うっとりと呟きます。

 空間が音を鳴らしています。これは音なのでしょうか?

 辺りだけではなく、体の中からも響いています。


 これが、珠法?空間探査って言ってましたが。

「珠法は因果律に干渉する技術です。精密空間遡行探査は物質や空間の根底にあるスピンフォーム。そこに蓄積されている情報を、因果律を操作することで復号する術です」

 ゼンマイが解説してくれる。

 因果律操作なんて、物理学を軽くブッちぎっています。

「物理世界の住人である|精霊(僕等)には、理論上は真似ができません」

「あ、ロボット」

 わんこちゃんが呟きます。

 ロボ・・ット?

 視線につられて見上げます。これは…確かにろぼっと…ですね。見るからに。

 展望台に覆いかぶさるように浮ぶ全高にして20mほどの人型です。あれ?こんな大きなもの、なんで影が射してないのでしょう?

「市街地に珠戦騎…だと?」

 天城さんが呆然としています。何か知っている様子です。

 その姿が見えていたのは数秒で、急速に薄れて消えていきました。

 いつのまにか音も消えていましたから、術が切れたのでしょう。


「運輸省、いや、警察庁に通報」

『春告町への搬入許可証が送付されてきました。関係各所の署名を確認』

 即座の返答に絶句しています。

 なんでしょうか、先程までの威厳が台無しっぽいんですが。

「ぐ、ふざけた事を…気に入りませんね」

 口調が戻りましたが、あれが地に思えます。

「ふむ、嫌がらせで航空局にクレーム出しといてください。制限表面違反か何か」

「相談役、なんだったんですか?アレは」

「あれは、珠法精霊機もしくは珠戦騎って呼ばれてる機体です。

 …通報してみましたが公務だそうです」

「兵器なんですか?公務?」

 確かにいくら何でも公務って無理がありますね。見た感じ超兵器じゃないですか。

「かっこいいねー」

 わんこちゃん、脳天気さにシビレルわ。

「・・・いや、あれは名目上は兵器じゃないです。武装はありません。

 あくまで珠法士の装備品。マスタースレーブ制御の」

 珠法士のお洋服なんですか。大きすぎませんか?


「実のところ言えば、でっかいワラシってとこです。アレは」

「ワラシなんですか?」

 各自、自分の相方をしげしげと見つめる。

「わさび、あれになれる?」

「いや、嬢ちゃん」ナイナイ。

「滅私奉公モードとは違って専用の機体だから無理ですよ。

 問題はあれは「珠法士」の装備品ということです。

 いったい珠法士が春告町でどんな用があるんでしょうかね?」

 皆が一斉に天城さんの顔を見ます。

「まてや、俺のことはいいんだよ」

 慌てて地が零れてます。この人も、自分が珠法士って忘れる性質なんでしょうね。

「きな臭いことにならなきゃいいんですが…」

 …そうか。あれに乗っているのは珠法士なんですね。

 そして、あれに乗って「来なければならない」理由。それが問題ということ。

「ご明察。町中で戦車を見たような物ですからね」

 天城さんがビックリした顔で見ます。言葉の裏を察する幼稚園児…当然ですか。

 でも、振っといてなんでしょう、その反応。

「天城さん、戦車って何?」

「おや若は知りませんか?大昔の兵器ですよ。自分も見たことはありませんが。

 相談役はそういうの詳しいですよね」

 戦車が市街地に…怪獣でしょうか?

「怪獣なら、外でしょうね。何を考えてるのやら?

 まあ、いずれ判るでしょうさ。目の前で相談して見せているわけですから。

 筋モンには、筋モンらしい交渉といかせて頂きます」

 と、ニヤリと悪そうに笑うと天を指さしてみせた。


  ──────────


 不穏な事件はありましたが、弘毅くんチームと別れて、散歩を再開しました。


「ところで」

 聡子嬢が切り出します。

「幽霊さんは、なんで現れたのでしょう?」

「うらめしやー?」

 あたしたち、怨み買うほど生きてませんし。

「何か伝えたいことがあってでしょうか?」

 贈り物が、とか言っていましたね。

「呪いをふぉーゆー?」

 なんで、わんこちゃんアグレッシブなのでしょう。ちょっと嬉しそうです。

 それにしても幽霊さん胡散臭さすぎます。

 わんこちゃんは楽しんでいるようですけど、あたしは残念なことにその域まで達していません。

 中矢晴海がどうのこうのなんて、幽霊が言うことでしょうか?

 幽霊なんてものは、わんこちゃんの言うように、恨み言でも言ってればいいんです。

 おそらくは何らかの方法で、ワラシかあたしらの感覚器を騙したのでしょうね。

 精霊の上手を行く集団?どのみち、途轍もないトラブルの種に間違いません。

 神様みたいなもの。そう言っていましたが、意外と的を得ているのかもしれません。

 不意に悪い想像が浮かびました。

 ワラシに口止めできる存在。という可能性です。

 先程のロボットもそうですが、権力が相手では黒も白になるものです。

 できるなら早いこと、縁を切りたい…


「おやおや、嫌われてますね」


 誰かが呟いた。見回してみたが誰も見当たらない。

「誰か、今…」

 聡子嬢が不安気に身を寄せてくる。

 わんこちゃんも張り合って擦り寄ってきます。

「どうも、初めまして。訳あって名前は明かせませんが、怪しい者…ですね」

 どうやら足元のようです。視線を下げると、そこには。

「にゃんこーーーーっ」

 猫です。黒白猫で、足先が足袋を履いてるように白い奴です。

 わんこちゃんが飛びつきました。躊躇ありませんね、いつものことですが。

「う゛、重い」

「やめてください。無理ですってば。私、20Kg近くありますよ。あ、そこやめっ」

 抱きあげるのを諦めて、もふりモードに突入です。

 幼稚園の犬猫全てにこれをやらかして以来、彼らから距離を置かれています。

 怒涛のモフモフ。わんこちゃん、溜まっていたのかもしれません。

 でもすごいですね、未来世界。しゃべる猫がいたとは盲点でした。

 20Kg?サイボーグ猫でしょうか?

「な、なんですの?しゃべる猫なんて初めて見ましたわ」

 あれ?

「精霊みたいなものです」

 またですか。「みたいなもの」が流行ってるのですか?

「よし。足袋履いてるからタビ。たーちゃん」

 では、たーちゃん。何の御用でしょうか?

「え、名前即決ですか」

 何か問題でもあるのでしょうか?

「主張しないと、流されますわよ」

 聡子嬢がたーちゃんに耳打ちする。

 うんうん。流され度暫定一位のあたしが保証しましょう。







 ふむ。では君は『魔法の国』から『女王』に遣わされた『精霊』だと。

「そう。驚くべきことは、その認識が何一つ間違っていないことです」

 なんか疲れている様子に見えます。猫ですし。

 わんこちゃんの拾ったこの石。これを持つ者が次代の『女王』ですか。

 ………………………

「ひたたたた!無表情に無言でヒゲを引っ張らないでください」

 で、なんですか?夢でも集めるのですか、愛でも集めるのですか?

「ただのスカウトです。って。あう、これ拷問ですよね。拷問」

 拾い物で女王に当選なんて、どこの世界にありますか!

「はて、貴女は運命というものの理不尽さがわかりませんか?」

 真顔(猫の真顔なんか初めて見ましたが)で聞き返してきました。

「そんな訳ありませんよね?運命は現象であって、理屈じゃありません」

「春宮様?」

 聡子嬢の声も耳に入らないほど動揺しているのが自覚できる。

 耳には入っているのだが、優先度が引き下げられて反応できない。

 ────こいつは、あたしの前世を知っているのか?

 今の生活が楽しく夢のようで、

 夢のような時間は、何の裏付けもなく、ただ与えられただけで、

 だから、


 運命という理不尽には容易く…


【本編よりも長くなることもあるかもしれない後書き】


『ところで、色々と登場人物増えてきましたね』

 もう登場人物は?

『ハルハル…ご両親は?』

 素で忘れていました。まだ増えるそうです。

 オマケに口調の管理がヘボすぎて、ゼンマイが丁寧語使ったり天城さんが女口調使ったりと、もう混乱の坩堝。

『作者の仕様です、スミマセン』


  ──────────


 菱凪家は如月家の配下の氏族で、母親は如月系列企業の幹部をやっているという。

 彼らの関係をみた感じでは、かなり自由な家風のようだが、テレビのドキュメンタリーでの情報によれば、氏族によってはかなり厳格な上下関係を求められるらしい。

 問題は、前世社会はおおっぴらには強大な権力は持ち得なかったのだが、今世社会では人数に直結した権力を精霊が与えてしまっていることだ。

 権力が理念ではなく冷徹な数の論理に左右されるため、マイノリティは数が少ないがゆえに悪であるという民主主義の暗黒面が蔓延しつつあることが、弊害の一つ。


 そしてローマを見ても判るように、民主制というものは容易に寡頭制そして君主制にひっくり返るのだ。

 厳格な上下関係、つまり身分制度を導入しようという動きが、それを表している。前世で想像していた未来とは違い、まさしく封建制だ。民主的に選ばれた専制君主。民主的に正しい奴隷制度。

 権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する。


 いかに技術的に豊かな社会が実現しても、人間は楽園には帰れないらしい。



 うわぁ、ナニコレ…香ばしいですね。

『うん、初稿だね。この辺書いてて、作者はへそ噛んで死にたくなったという黒歴史』

 どこら辺がコメディの設定なのかと小一時間。

『コメディ苦手ってのは才能がないってことだ!と転がりまくっていたよ』

 そうよね海賊課シリーズとかは、まるきりSFなのにコメディしてますし。

 大体が神林先生に張り合おうなんて、何という身の程知らずでしょうか。

『モノローグ部分の文体がコロコロ変わって定まらないレベルじゃ、お笑いだね』

 …それはあたしへの当てこすりでしょうか?ゴゴゴゴゴ



 ところで、後書き(ここ)に書いてあるってことは、この設定はガチで基本設定なのですね?

『大マジです。作者は、この体制の帰結として、かなり蓋然性が高いと見てます。

 誰かから与えられた義務を果たすことばかりが賞賛かつ保障される社会で自由でいることは難しい(※)…ってね。作者は技術の進歩が自動的に人を自由にしてくれるなどというのは、戯言だと考える類の人』

 君達は自由とか平等とかの味方じゃないから、放置どころか煽り立てていますし。

『ふふ、僕達は競争のための計画しかしてないよ。より豊穣な自然みたいなものさ。

 それを煽り立てているとは心外だなぁ。誰のせい?』

 悪魔の言い分に聞こえますが、何故でしょう。

『でも、所詮は未来予測。まだそう(・・・・)はなっていない。

 それは、とても重要な設定だよ。


 と、作者が言えと』

 そう思うならば、本編で書けと。

『ごもっとも。でもまあ、元々日本人は『自由』に向いてない奴隷根性の民族だし、いいんじゃないの?』

 わーわーわー、黒い発言禁止!!!!


※『国家の階級制度の中に組み込まれない職業や、固定的な所得への権利を伴わない職業は、地位の低い、むしろみっともないものと見なされるようになったら、そこでも多くの人が経済的保障より自由を選び続けるだろうと期待するのは、虫がよすぎる話である』

(F・A・ハイエク『隷属への道』 西山千明訳・春秋社 p.170)




 しかし…幼稚園児にこんな考察させようなんて、作者は頭沸いてます。

 前世を勘定に入れても、まだ高校生ですよアタシは。

『もしかして、それがチート能力?』

 まさか。webやら書籍やらを処理能力に任せてピックアップ、もっともらしく話してるだけですから。そもそもこれってワラシの得意技でしょ。

 知識なんてものは知恵が無くちゃ意味はないわけで。今となっては知識なんてITで機械化できる安っぽいスキルときているわけで。

 結論、そんなシロモノに大した価値があるわけないですね。

『全日本人に平等に事実上無限の記憶力と情報処理能力を貸与しているからねぇ』

 各種の試験でも参照物規程は廃止。外国語もそろばん教室と同じで趣味の世界。

『今の資格試験って記憶問題が無くなっちゃったから、受験生より常設の採点機関職員のほうが人数多いんだよね』


  ──────────


『ナショナルジオグラフィックニュース2011/08/23に、MITの開発している新薬で『複数のウイルスに効く新薬開発』との記事が』

 これって石化反応と似てますね。

『ネタとして被ってるから、先に書けたんで作者はホッとしてる。『まさか実現しようとは!セーフ!セーフ!』とか。

 まあ、ウィルス感染したらアポトーシスする機構ってのは元々細胞にあるから、そんな目新しいアイデアじゃないし。でも、発想はそうでも実際に現実化しようという努力には頭がさがるねぇ』


  ──────────


 さて、精霊戦争ですが…

 初期原稿では、やはりディティールが無駄に凝ってますね。

 おまけにゼンマイが解説しつつ、アタシがツッコむというスタイルが守られてなくて読みづらいし。

 ま、いいか。



 1990年12月に、地球近傍を通過する一つの小惑星が発見されたのが、事件の始まりです。小惑星はアポロ群のものでしたが幸いなことに、地球からは1000万Kmほど遠くを通過するものでした。幸いというのは、その小惑星は大きさ300m弱と小惑星としては小ぶりですが、衝突すればTNT換算にして500メガトン。これはソ連の開発した爆弾の王様の10倍もの威力だったからです。

 しかしそれはぬか喜びに終ります。その小惑星の軌道が、計算からずれ始めたのです。観測結果は二転三転。翌年1月にはもはや疑いようのないほど地球に近づきつつあり、為す術もなく(というか元々どうにもならなかったのですが)とうとう、1月15日早朝にペルシア湾クウェート沖100Kmに落着します。


 その頃、そこでは前年にクウェート侵攻を起こしたイラクに対して制裁が企図され、多国籍軍による部隊展開が進行していましたが、落下予想地点が判明したため作戦は一時中断、一時退避して様子を見ることとなりました。場合によってはクウェートのみならず交戦相手であるイラクへの人道支援も検討されたほどでした。

 しかし、時刻になっても各国の地震観測所は落下を示す振動は検知せず、おかしなことにイラク軍は多国籍軍と交戦中とのイラク国営テレビの報道に、首を傾げることとなりました。


 16日には全ての多国籍軍の所在が明らかとなり、全軍は待機中であるという確認が取れましたが、相変わらずイラク国内は大混乱。ホワイトハウスとの協議の結果、クウェートに強行偵察を行った米軍の見たものは、イラク方向に続く巨大な破壊痕と、跡形もなく瓦礫と化したクウェート市街の姿でした。

 イラク国内へと向かう破壊痕を追って米軍は航空部隊を派遣しますが、これが戦闘機のみならず早期警戒管制機までもが相次いで撃墜されるという事態に発展しました。

 しかし、撃墜までに撮られた映像は敵の姿を世界に送り届けました。

 巨大な山がイラク軍を踏みつぶして進む様を。


 これが怪獣、現在は黄泉津醜女と呼ばれる種類の自律戦闘個体との初遭遇です。

 何故黄泉津醜女?と思いますが、精霊機構での識別名がそうなっているので。

『彼らがそう名乗ってきたんだ。ご丁寧に Unicode 符号のストリームで、おまけに日本語…それもあって、あんな事件にまで発展しちゃったとも言えるね』

 「あんな事件」とは、精霊戦争の後半の展開だったりします。


 怪獣は時速150Kmでイラクを縦断、サウジアラビアをかすめてヨルダンを横断し、さる宗教遺物を大地に返した後に地中海へと姿を消します。

 マルタ島沖でフランス、スペイン、ポルトガル、イタリアの連合海軍、ジブラルタル海峡ではNATOの連合軍が怪獣を捕捉し、攻撃を仕掛けますが戦果は無く、結局大西洋に逃してしまいます。爆雷すら物ともしない存在に打つ手なんて無いですね。

 深海五千メートルに逃げられて、そのまま行方知れずです。


 その後、しばらく怪獣は消息を絶つのですが…5月、日本近海に出現します。

 えーと、お約束の展開?なんで日本?それも空気を読んだか、千葉県浦安沖。

 千葉県の某東京遊園地の沖合いに現れた大怪獣。

 それを迎撃したのが精霊機構です。

 怪獣並みの巨大潜水艦で登場するや、多国籍軍すらものとしなかった怪獣を一蹴してのけます。

 …東京湾って遠浅ですよね?何故にどうやって潜水艦?

『平均水深15mですしねぇ。

 国民的怪獣って、品川まで匍匐前進してきたんでしょうか?

 人間に換算すると50cmくらいの水深ですよね。

 ちなみに黄泉津醜女は三浦半島から悠々と歩いてきました。

 僕等は海底にへばり付いて待ちぶせしてました。んで再構成で出現』


 まあ、実のところお互いに決め手に欠けて勝負にならなかったようです。

 突き刺しても吹き飛ばしても、どうにも倒しきれないのではさもありなん。

 勝負は二年後、第二次ミッドウェイ海戦で果たされます。

 この戦闘。どういう経緯なのか、ミッドウェイで両者は激突します。 そんな場所での会戦が、何故に知られているかといえば。

『偶然にRIMPAC93を行っていた自衛隊・米軍がこれを捕捉、B83が二発使用されて一発が直撃したんだよね』

 それって、どう見ても偶然じゃありませんね。

『これで問題だったのは、黄泉津醜女よりも我々に多大な被害が出ちゃったこと。

 対放射線防護の性能に差があったんだね。おそらくは知られていないけれど、二年間の空白時期にどこかの軍が核攻撃を仕掛けて、仕留め損なっていたんじゃないかと推測している。直撃した核爆弾は黄泉津醜女に貫入爆発したのに、相対していたこちらが大ダメージとは恐れ入ったもんだ』

 大ピンチですね。もはや風前の灯な精霊機構の戦闘艦。

『そこに偶然に、珠法士が助けに入ってくれた。珠法士の因果干渉能力による攻撃で、黄泉津醜女は完全に機能停止して、大勝利』

 それって…偶然ですか?

『偶然』

 そうですか。




 かくして、精霊は珠法士と巡りあったわけですね。

『そうそう。これが精霊戦争の前半戦の経緯ね。

 めでたしめでたしとなれば良かったんだけど、91年に怪獣の脅威を煽りたてて、某国の大統領が改選を乗り切ったとか、説明に入っていない伏線もあって後半戦スタート』

 存命の人物ですし、名前も変える予定だとか。ヤブイリ大統領。

 後半は年表的な戦闘はあまりありませんね。ペラっ

『まともな戦闘になりゃしないよ。大きかったのは東京封鎖事件くらいかなぁ』

 事件扱い…事変じゃなくて?




『さて、後半戦。今まで引っ張ってきていた設定の大開放』

 本編に説明入れる隙間が見つからなくて、諦めたという。


『第二次ミッドウェイ海戦は、精霊と珠法士が勝者となったわけですが、これで収まらなかったのは某国です』

 世界の警察が、民間人に出しぬかれた格好ですもんね。

『ミッドウェイからひと月後の93年8月。某国からの大量破壊兵器疑惑の国連動議が出されます。相手は日本国政府』

 どうしてそんなことに?

『僕達、日本製品って話はしましたよね』

 聞いてないと思う。

『ハッ…!ボツ原稿』

 ドンマイ。


『どこで嗅ぎつけてきたのか、精霊機構が日本製だとリークして責任取れと。

 技術を弄び、世界に脅威をうんぬん』

 どっかで盗聴していましたか。日本って脇が甘すぎますし。

『事実、僕等は大陸棚調査用のナノマシンが変異したものですし、証拠はすでに固められていて言い逃れの効かない状況でした。

 そんなわけで、湾岸戦争から何から莫大な戦費を請求されるハメになります』

 怪獣災害は日本のせいじゃないでしょ?

『そんな正論、通るわけないじゃないですか。

 んで、某国は日本の再占領というか差し押さえに乗り出します。

 主に僕等を捕獲しようとですね、中央集積群の制圧を試みます』

 中央集積群?

『ええ、当時は東京湾の海底一面にびっしりと』

 そんなもの、どうやって制圧を?

『こっそりと自分らも作っていたナノマシン兵器を投入してきました。

 黄泉津醜女の劣化コピーでしたが』

 ちゃっかりしていますね。というか、そんなもの作っていながら大量破壊兵器疑惑?

『正論なんて儚いものです。

 まあ、そんな劣化コピーなんて敵じゃないはずだったのですが』

 不測の事態が?

『投入された劣化コピーが暴走して人間サイズの黄泉津醜女に変異しました。

 その数一万五千体。浸透攻撃で関東一面に多大な被害が発生しました。

 在来武器では「ちょっと減る」だけですから止めようがありません。

 頭を吹き飛ばそうが、胴体をぶち抜こうが』

 うわぁ。

『対抗して急遽創られた戦闘体が今のワラシの原型です。

 物量の差で、あっと言う間に逆制圧。

 でも、死者行方不明者十万を数える大惨事でした』

 それが東京封鎖事件ですか。


『この事件で我々は学びました』

 何をでしょうか?

『言った者勝ちだと。

 そこで、即座に事件の推移を公表しました。

 某国の兵器が黄泉津醜女に変異する様の記録映像を証拠として!

 怪獣は某国の自作自演であり、我々は自衛権に基づいた正当防衛を行ったと!』

 やな教訓を学びましたね。

『しかし、某国はさすがですね。これは謀略であり、事実無根だと。

 真っ向から証拠を無視する姿は感動を呼び起こしました。特に中東各国あたりに。

 勉強になります』

 やな勉強ですね…

『そして、引っ込みが付かなくなった某国は暴挙に出ます』

 やな予感しかしません………


『翌93年9月、国際連合安全保障理事会の常任理事会で、多国籍軍による東京核攻撃が緊急決議されることになります』

 そんなこと通ったんですか!?

『通りました。ソ連・中国が賛成に回ったのが大きかったです。

 なお、名目は自律兵器暴走によって喪失した日本国の首都機能奪還作戦です。

 戦費は日本に請求することになっていましたし、敵性体の分散を防ぐために東京都民の避難期間は認められませんでした』

 そんな虐殺が許されるなんて…

『我々には未来を守る聖なる義務と、耐え難い悲劇に耐える勇気がある。

 だそうで、その二時間後には作戦は開始されました。

 ちなみに日本時間にして深夜二時半決議の四時半開始』

 殺る気満々じゃないですか!

『かくして米中ソの核ミサイル63発、巡航ミサイル19発。弾頭数にして350超が早朝の日本に降り注ぎました。


 ただ、精霊と珠法士の本気を過小評価していたのが、某国の誤算です。


 精霊の観測能力の支援のもとの四名の珠法士により、あっけなく全ての弾頭は遙か宇宙に転送(ポイ)されて果てました』

 四名?意外と少ないですね珠法士。

『最初期のメンバーですね。素性は本人たちの意志で匿名です。

 当時はテロリスト扱いでしたので二名ほどは国際指名手配されてましたが』

 駄目じゃないですか。

『まあ、ともかく。この事件で大きく流れが変わってきます』

 事件扱いなんですね。下手しなくても大量虐殺じゃないですか。

『終わったことですし。遺恨はありません。しいて言えば、ある珠法士の発言ですが「一番すっとしたのは、ジジイ達が破産して果てたことかな」と』

 ジジイ?

『作戦に合わせて、日本株・国債を大量に買い込んで、同時に別ルートでこれでもか!と空売りしまくってくださった大金持ちの方々です。ちなみに買いまくったのはどこかのトンネル会社でした』

 どこかで聞いたような。

『作戦は失敗し、スポンサーを失い、ヤブイリ大統領の支持率は墜落』


 某国なんてどうでもいいんだけど、日本はその結果で満足するの?(疲れてきた)

『ここから本題。

 この件で日本は絶望しました。かってないほど。

 同盟国がよりによって事実上の首都に核攻撃を敢行するのはナイですよね、普通。

 で、どうしたかといえば、国連脱退して僕等と講和しちゃたんですね、これが。

 「もはや日本政府は連合と協力する努力の限界に達した」

 との表明付きで』

 ん、どっかで聞いたような?んで世界征服に…

『なんてことはなく、さらに斜め上の選択をしました。

 東京で失敗したなら名古屋に住めばいいじゃない♪(一部、歌詞を変えてあります)

 僕等に連れられて地球脱出。往くは遙か冥王星の更に果て。

 ここヴァルナに移住を果たしたというわけなんですね。

 日本国民一億三千万と特別移民一千万が』

 そんな大人数、一体どうやって運んだんですか!

『15年かかって、コロニー引っ張って行きました』

 ってか、太陽系外縁なんですか!キュビワノ族?冥王星違うし。

『詳しいですね…検索してませんでしたよね今…

 外縁です。だからコロニーは全て密封型なんですよ』

 なんでそんなチェイスなの?

『実はここを探査した機体がマイクロブラックホール拾いまして』

 拾えたんですか?

『いえ、持ち運べなかったので、ここに都市を』


 …いやまあ、現状は分かったけど。(再びツッコミ疲れた)

 しかし、全員して家出とは、逃げじゃない?

『いいえ、これは距離を置いてみただけなんです』

 …絶○先生のアニメ上映会見てますね、作者。


  ──────────


 しかし、喋る猫まで登場ですね。

『妖怪も出てきますので、安心してください』

 何を?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ