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りばいばる  作者:
幼年期の章
3/6

#03 モテモテ?

 どう見ても、ローティーンにしか見えない若々しい女性が手を振っている。

「あ、ハルハル、あれお母さん。綺麗でしょ」


 ええ、とても綺麗で、若いですねぇ。わんこちゃんのお母様。

 チェックのマタニティ(・・・・・・・・・・)も似あっていて。

 もうじきお姉ちゃんですか、わんこちゃんは。

「え?わんこもお姉ちゃんだよ。コウちゃんていうの。弟なんだ」

 わんこちゃんからのワラシ経由の通信が届く。

 赤ちゃんを抱いた妙齢の女性の画像。

 抱いている方は、叔母様でしょうか。

「ううん、ひいお祖母ちゃん」


 曽祖母で40前後…ですか。

 お元気そうでなによりですね。(棒読み)



 ──────────────────────────

  #03 モテモテ?

 ──────────────────────────



 すでに近接会話機能使いこなしているなぁ、こんなことできるって知らなかった。

「そうなの?うちじゃ昔から、おはなしってこれだよ。

 使わないと、うるさくてお話できないから」

 聞けば、わんこちゃん家ってこの幼稚園くらい人がいるそうです?

 ………ああ、もしかすると。

 そうそう、もしかしてわんこちゃんの家は専業妊婦ですか?

「うん、ひいひいお祖母ちゃんからずーっとね」

 曽々祖母って…もしかすると百円族世代ですか。

 サラブレッドですねぇ、わんこちゃん。


「ハルハルのお母さんも綺麗ね。ハルハルんちって何屋さん?お兄さんとか何人?」

 うちの両親は珠法士組合で働いていますね。兄とかはいません。

「え、ハルハルんちって珠法士さんなの。すごーい!

 うちには、なった人いないんだよ」

 珠法士研修所に受かるのも難しいですからね。素質に影響されますから。


「珠法士かぁ。いいなぁ」

 おや、憧れますか?

「うん、かっこいいもん。珠法特捜官-杉田耕作、大好き」

 人気のテレビドラマだ。でも主人公って40絡みのポッチャリ系で髪が薄くなってきているのが悩みという。ああ、脇役の幸田警務官でしょうか、東大卒エリートでイケメンという役。

「ううん。耕作さん。可愛いよねー」

 おおっと、さすがというか。侮れませんね。チョイスが渋いです。

 頬染て、うれしそうな。

「初めての人って、あんな人にするって決めてるの」

 あう、ま待ってください、何の初めてですか、何の。

「えー?決まって…」

 はい、済みませんでした。聞いた自分が悪かったです。(汗)

 ほほを染めつつ、はにかむ幼稚園児…舐めていました。サラブレッド恐るべし。


  ──────────


「でも、なれるひとって少ないんでしょ」

 現在の珠法士人口は20万人ですから、おおよそ五千人に一人ですか。

 狭き門ですね。

「もしかしてハルハルも珠法士になる?」

 なれませんよ、多分。珠法の素質は遺伝しませんから。

 候補生になれる人ですら250人に一人と言いますし、難しいでしょうね。


 しかし候補生であっても、その力は超常の名に恥じない。

 珠法士にはなれなかったものの、その力で犯罪やテロ行為を行えば、一般人やワラシでは到底太刀打ち出来ない。

 拳銃どころか対物ライフル・重機関銃といった大型火器ですら彼らに対しては足留めにしかならない。生身で戦車と交戦すら可能だ。

 さらに第一級の珠法士ならば、大陸間弾道弾すら迎撃し無効化してのけた実例が、あったりするのだ。

 実際、自分の親が珠法士の一員であるというのだが信じられない。


 先の珠法特捜官とは、違法活動に手を染めた候補生崩れの取り締まりのため、珠法行為取締法により特別司法警察職員の権限を与えられて珠法士組合の選抜により派遣された珠法士の通称だ。

 またドラマの中では地方警務官をトップとして組織された、候補生出身の警察官らによる珠法機動隊が登場している。実在するのか知らないけれど。

 犯人をあくまで人として救いたいという主人公と、人以上の力を持った特別な存在としての自覚を求める警務官の対立と協調を横糸とした、人間ドラマが売りのテレビシリーズで、すでに何度も映画化もされている人気作だ。


  ──────────


「…続きまして、年長組のお兄さんお姉さんから、歓迎の…」


 ムダ話をしている間にも式は進んでいたらしい。

 まあ、幼稚園児に規律とかいきなり求める大人はいまい。

 ましてや無線を使いこなして、一見神妙にしているのだ。


「はーい、杏子ちゃん晴海ちゃん、おはなしはお休みして、年長組さんからお花もらってね」


 不意に入る誰かからの通信。あれ、どうしてバレた。

 幼稚園の美咲先生というらしい「男性」からのものだった。

 ハッとして注意すると、年長組の方々が花束持って入場してくるところだった。


 三番目に歩いている女の子、花束を持つのに気を取られて注意が散漫に。

 あ、まずいな。と思った時、とっさに身体は動いていた。

 ゼンマイ、救急セットを。

「了解」

 思ったとおり、足をつんのめらせて女の子が転ぶ。

 前の二人を巻き込んで。


 駆け寄ったあたしは、女の子から順に助け起こそうとして、…持ち上がらない。

 こちらも幼稚園児じゃ当たり前か。

 重いっっ。ゼンマイ、救助してくれ。

「了解。これキットです」

 駆け寄ってきたゼンマイがあたしごとあっさりと女の子を助け出す。

 湿布や消毒薬の入っているキットをあたしに渡すと前の二人に向かうゼンマイ。

「ハルハル、全員擦過傷規模。捻挫等の兆候は見られません」

 おい、お前までハルハルか。まあいいけど。


 この間、わずかに10秒。


 ・・・パチパチパチパチ


 わんこちゃんがびっくりした顔で拍手してる。

 先生たちが慌てて動き出す。救急セットはいらんかったな。


 泣きそうになってる転んだ女の子に語りかける。

 大丈夫、誰も怪我してないよお姉ちゃん。お花、綺麗だね。

 お花は手作りの造花だった。彼女らが歓迎のために作ったのだろう。

 潰れてしまって悲惨な有様となった花束に女の子の顔が…

 あー。どうしよう。

 とっさに奪い取るように花束を受け取り、抱きしめる。

 ありがとう、お姉ちゃん。

 わんこちゃん直伝のにぱー。

 泣きそうだった彼女は、何故か真っ赤になりつつポーっとした目で見つめている。


 ・・・パチパチパチパチパチパチ!


 それ以降は何事も無く式は終わったのだが。


  ──────────


 えーと、美咲先生から、ちょっとお小言の時間です。


「晴海ちゃんのしたことは偉いわ。でも、助けようとして転びそうになったでしょ」

 うん、バッチリ見られてましたね。

「お友達に何かあったら、まず近くの大人の人に声をかけたほうがいいわ」

 はい、以後気をつけます。しょぼん。


「ハルハル、かわいそう」

 わんこちゃんが慰めてくれる。

「そうですわ。春宮様は、あたしを助けて下さいましたわ。

 とっても嬉しくて、感謝しきれません」

 ええっと。このお嬢様は、先の彼女で野村聡子という。

 何故に様付け?


「待って待って。違うの。責めているわけじゃないのよ。

 助けあうことは素晴らしいわ。その気持は忘れないでいてね。

 でも、まだ貴方たちは小さいから、貴方たちにできる助け方を考えてみてね」

 …いや、言いたいことは分かりますが、幼稚園児には難しいのでは?美咲先生。

 そういう教育方針なのかもしれん。


「かっこよかったわ、もしもハルハルが男の子だったら赤ちゃん欲しいくらい!」

 わんこちゃん問題発言。ないない。

「いいえ、私こそお嫁入りしてもよろしくってよ」ガーン

 あー、なんか話題がズレてきてます。お二人さん。

 というか、あたしが旦那前提なのは何故だろう・・・

 そして、今の「ガーン」はなんだ?


「春宮晴海!」

 突然に呼び捨て!誰だ、と見ると。

 ・・・誰さん?

 なんか、すごい剣幕で、年長の男の子が指を突きつけて声を張り上げる。

 トラブルの臭いしかしない。逃げたい。

「俺は上総弘毅。貴様に挑戦する!」

 涙目で睨みつけてくる。

 ・・・えーと?またあたしを男扱い?腹立てていいよね。

『ハルハルも論点ずれてるのでは?』

 ・・・

 さあ、女の武器発動。流れよわが涙よ!

 まあ流れなくとも、この場合はOKだが!


 …あたし、女の子なのに…貴様とか…

 ポロッ

「あー、ハルハル可哀想」

「弘毅くん酷い!」

 くくく、狙い通り。

 女性連に非難されて上総弘毅くんはたじろいでいる。

 美咲先生が呆れて仲裁に入り、弘毅くんは指導室に連行。ざまぁ。


  ──────────


 春告町立幼稚園の敷地は広い。

 両親は説明会とかで集められていて、新入生は三々五々に遊具などを見て回っている。

 前世ではあり得ない行動だが、ワラシがお供なので結構緩い。

 聡子ちゃんが案内してくれるというので、わんこちゃんと一緒についていった。

 しかし、繰り返す。春告町立幼稚園の敷地は広い。

 情報として知っているのと、実際に歩きまわるのは違う。


「疲れたー」

 わんこちゃんが早々に音を上げる。

 いや、登り下りで数百mも歩くのは幼児にはキツい。

「慣れておかないと、困りますわよ」

 と、先頭を歩く聡子嬢は元気だ。未来の幼稚園児半端ねぇ。

「わんちゃんのお散歩、かわりばんこですもの」

 と、彼女は連れている犬を示す。

 朝夕に敷地内を散歩だとか。園児が40人弱で4頭だから、10日に一度は回ってくる見込みだ。

 情操教育の一環だろうが、情操以前に体力が付きそうだ。

「わんこ、わんちゃん好き♪がんばる」

 体力を振り絞るも、足取りは覚束ない。

 ワラシにおぶってもらったら?と提案するが、聡子嬢の笑みとあたしを交互に見て。

「がんばる」

 なんか、張り合っていらっしゃる…

『モテモテ?』

 単に張り合うのが楽しいのでは?

 だって、こんなに懐かれる理由がないじゃない。


「夏には、ここでテント張ってお泊りしますのよ」

 途中でへばっているあたしたちを気遣って休憩だ。

 ちょっとしたキャンプ場になっていて水道もある。

「わー、遠くまでよく見えるね」

 見晴らし台があり、市街地側を展望できる造りになっている。

 高い建物が存在しないため、30mほどでも遙か遠くまで一望だ。

 一休みして、元気になったわんこちゃんが大喜びだ。

「ちょっと、お水汲んで来ますわ。ハーヴェイを頼んでもよろしいでしょうか」

 ハーヴェイとは連れてきた犬だ。ミニチュアダックス。

 水汲み…ああ、おトイレか。いってらっしゃい。


「しずかだね」

 わんこちゃんが呟く。

 そういえば、家だとうるさいとか?

「家族多いから賑やかなの。こんな静かなの初めて」

 昼間の太陽灯の下、風に吹かれてのんびり。

 機械で作り出されているが、木々の匂いを含んだ風は汗をかいた身体を気持ちよく冷やしてくれている。


「こんにちは」

 不意に声がかかる。

 見ると、そこに居たのは二人の女の人だった。

 黒い洋服と白い洋服を着た30過ぎくらいの女性。

 式では見かけなかったが、関係者だろうか。

「こんにちはー」

 わんこちゃんと元気に挨拶する。

「ん、ちゃんと挨拶できるんだね。いい子だ」

 黒の女性が褒める。


『誰かいるのですか?』

 んん?なんだゼンマイ。目の前にいるじゃないか。

 ゼンマイが変なことを言う。

『誰もいません。私たちだけです』

 ゾッと首筋の毛が逆立つ。ゆ、幽霊か何か?

 わんこちゃんがギュッとしがみついてくる。多分ワラシから同じ事を言われたのだろう。


 ──ふふふ


「ああ、怖がらないでいいよ。何もしやしないから。


 ねぇ、「中矢」晴海ちゃん」

 !!!!!


 どうして、その名前が!

「あたしらは『神様』…みたいなものだから、ね。

 ちょっとした悪戯心なのよ」

 白い『神様』が囁く。

「贈り物があるの」

 黒の『神様』が囁く。

 身構える暇もなく、白い『神様』はわんこちゃん、黒い『神様』はあたしの額にそっと指で触れた。


「あなたたちには期待してるわ。」

 気づくと、すでに展望台には二人の姿は無い。


「す…」

 わんこちゃんが呟く。

「すごーい、今の人、幽霊?初めて見ちゃった」

 がくっと脱力を感じる。

「でも、なかやはるみって誰?」

 わんこちゃんも聞いていた…ということは夢じゃない?


 何が起ころうとしているのか、あたしにもサッパリであった。


  ──────────


 【あたしたちとは関係ない場所での記録】


 北315群付近にて哨戒中の第122-72-39哨戒機が、真珠規模の珠法反応を検知。

 検知記録時間がマイクロ秒ということもあり、計測器の誤作動と推定。

 規定に従い、当該哨戒機は装置点検のため帰投。

 予備機はすでにカバーに入り問題なし。


【本編よりも長くなることもあるかもしれない後書き】


 ストーリー配分が適当すぎるこの小説ですが、入園式編の後編でした。

「前編が幼稚園に着くまでと、わんこちゃん。

 後編がわんこちゃんの男性の趣味と、伝説となったハルハル。ですね」


 なんの伝説なのか、ちょっとコワイのよ。

 聡子嬢、あたしの手握ったまま動かなくなるし。

 他の年長組さんも、口あけたまま固まってるし。

 うちの両親は苦笑い。


「さて今回は本編で説明入れてるからサラっと流せるね」

 というか、初めて珠法士関係の解説入ったのに、かなりスルー気味。

 わんこちゃんの趣味にインパクト取られてますね。



 というか!もしかして転生モノの定番の神様登場?

 神様スルーってあらすじ的にはどうなのよ。


  ──────────


 珠法特捜官-杉田耕作。

 作者は設定作りつつ、これマジ面白くね?とか思ったとか思わなかったとか。


 ちなみに現在放映中の第五シリーズは、珠法犯罪組織バロックによる珠法士組合への工作により彼らの息のかかった珠法士が珠法捜査官として選抜され暗躍を始める。珠法捜査官-宗像一郎の仕掛ける悪辣な罠により杉田耕作は公安委員会の査問に掛けられることとなる。幸田警務官と珠法機動隊はこの危機から耕作を救いだすことができるのか?また、珠法士組合に巣食う獅子身中の虫をあぶり出せるのか。という内容に…


「また単なる思いつきで、いらない設定増やすし」

 いっぺん痛い目にでも合わないかしら、作者。


  ──────────


 美咲せんせいですが…初めの予定では女性でした。

 ・・・君は泣いていい。


 ちなみに、彼はあたしらの様子から不審に感じ、近接通信の通信ヘッダをモニタして、二人がおしゃべりしていると判断しました。話の内容までは暗号化されているため知りません。彼は幼稚園のシステム管理者も兼任しています。


  ──────────


 珍しく、短いあとがきですね。

「そろそろネタ切れでしょうか」

 でしょうね、いくら何でも詰め込み過ぎなんですから。


「そういえば、執筆時には#02と#03はタイトル違っていませんでした?」

 ああ、例の「歌詞の無断転載に関するお知らせ」で「こりゃまずい」と変えたそうよ。

 しかし、そのうち「貴方はもう忘れたかしら?」とか書いただけで著作権!とか言う奴が出てくるんじゃないかと心配。

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