第1話 転生ときたらチートスキルだろうが!?
テッテレー。
頭の中に、間の抜けた通知音が流れた。
この世界に転生してから、苦節十年。
ようやく。
ようやく、念願のスキルを手に入れた!
この世界には、スキルというものが存在する。
十歳前後になると、およそ六割の人間が何かしらのスキルを発現するらしい。
ある国の英雄召喚の儀によって呼び出された俺も、他国の英雄たちと同じように、三年ほどでスキルが発現するはずだった。
はずだった。
そう。
しなかったのだ。
英雄召喚の失敗を隠蔽するためだろう。
俺は少しばかりの金を握らされ、そのまま城を追い出された。
それから、早十年。
年齢は二十五になった。
俺はひたすらスライムを狩り続けてきた。
レベルを上げれば、いつかスキルが発現するかもしれない。
そんな淡い希望だけを胸に、朝から晩までスライムを狩り続けた。
その結果、俺のレベルはようやく五。
十年で、五。
スライムは経験値効率が悪いのだ。
悪いにもほどがある。
それでも俺は狩り続けた。
村人から「スライムに恨みを持っているヤバいやつ」認定されても耐えた。
子供に「あ、スライムおじさんだ」と呼ばれても耐えた。
宿屋のおばちゃんに「そろそろ別の生き方を探したら?」と本気で心配されても耐えた。
そして今。
やっと。
やっと!
「さぁスキルちゃん! どんなスキルなんだ!? 魔導ならファイヤーボールとか? 剣士なら薙ぎ払いとか……?!」
胸の高鳴りが止まらない。
なんと言っても、俺は英雄として召喚された身だ。
十年遅れただけで、実はとんでもないスキルが眠っていた可能性だってある。
いや、あるはずだ。
あってくれ。
これで、あのクソ国王どもを見返せる。
俺は震える手で、スキルウィンドウを開いた。
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アキト
レベル 5
攻撃力 20
守備力 15
素早さ 22
知力 40
魔力 25
目 60
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「うん……いつ見ても、ふざけてやがる……」
レベル五。
正直、村の子供の方が高い。
そもそもレベル以前に、俺はパラメータがやたらと低いらしい。
この間なんて、俺の背丈の半分ほどしかない子供が、木の棒でスライムを一撃で倒していた。
一方その頃の俺は、石つぶてを片手に接戦だった。
接戦だぞ。
スライム相手に。
しかも、ただ弱いだけではない。
何より意味がわからないのが、これだ。
目。
目ってなんだよ。
RPGで見たことないぞ、そんなパラメータ。
視力を良くしてどうする。
スライムのぷるぷる感が鮮明に見えるだけだろうが。
クソだ。
この世界、俺に対してだけ仕様が雑すぎる。
「まぁいい……それよりスキルだ!」
今はステータスに文句を言っている場合ではない。
俺は意気揚々とページをめくった。
そして、そこに表示されたスキル名を見て、思わず息を呑む。
なんだ、これ……?
「アピール……?」
そこには、たった一行。
⟡.──────────── .⟡
所持スキル
アピール レベル1
⟡.──────────── .⟡
沈黙。
十年分の期待が、音もなく地面に落ちた。
俺はもう一度、表示を見る。
アピール。
レベル1。
「……なんだ、このクソスキル」
その表示を見て、俺は盛大に息を吸い込んだ。
そして。
「オロロロロロロロロッ!」
吐いた。




