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芸能人格落ちチェック②

 前回までのあらすじ!!

 四股俳優、雨宮小春は正月に『芸能人格落ちチェック』なる芸能界の恥さらしを決める地獄のような生放送に参加していた……


 番組の趣旨を無視して同じチームになった日比谷神を一流芸能人にまで押し上げられるのか!?

 雨宮の戦いはまだ始まったばかりなのである!!



『続いてのお題は音楽ですっ!!』


 僕の顔はボコボコだった。白羽ハイル…腰の入ったいいパンチだ。らいむとハツネンからダメージを受けていたのを差し引いても、彼の攻撃力の高さを評価しないわけにはいくまい…


 で、次は音楽らしいんだけど度重なる暴行で僕の鼓膜は破裂していた。


「次こそは当てよう、雨宮君!究極の美的生命体である私は品性と知性も兼ね備えてないといけないから…」

「すみませんけどよく聞こえないんでここは任せます」

『皆さんにはバイオリンの演奏を聴いてもらってどちらが高級バイオリンかを外していただきます』


 まずA。美しいレディがバイオリンを構えた。


 この人知ってる…有名なバイオリニストの荻窪おぎくぼマーマイヤ女史だ。最高級バイオリン、ストラディバリウスの所有者としても有名だ。

 つまりAだろう。


 演奏はよく聴こえなかった。


「ふむふむ…この美しい旋律…なるほどね」


 流石日比谷神、違いの分かる女は何かを察したらしい。


 Bの方は糸のほつれたジャージを着たおっさんの演奏。こいつは…この番組のプロデューサーの天上院てんじょういん氏じゃあないか。


 やっぱりよく聴こえなかった。


「……ほぅ…これは……決まりました!B!Bが最高級バイオリン、ステゴロバリウムです!!」


 ストラディバリウスである。

 何も言うまい…全ては神の御心のままに……





 Bの控え室にて……


「今度こそ大丈夫だよ雨宮君。てか、顔大丈夫?ア〇パンマンみたいになってるよ?」

「うえーん痛いよぉ」

「……世界一の美しさを誇るこの日比谷の美貌は幼児退行をも引き起こす…よしよし、私の胸で泣いていいよ」

「うえーん(喜)」



 次。チーム小鳥遊。


 キィ〜キキィ〜♪


「…どう思います?小鳥遊さん」

「普通に考えればAがツッパリバチムスだろ」

「ストラディバリウスです」

「だがこれは引っ掛けだ…あのしょぼくれたおっさんの持ってる方がツッパリバチムスに違いない。私は数多くのバラエティ番組をこなしてきたから分かる」

「……(Aだと思いますけど)ではBにしますか?」

『あの、これ高級な方を外すって番組なの分かってますか?』



 次。チーム白羽。


 キキキキィ〜♪


「……(やべぇ分からねぇ)」

「……(まずいさっぱり分からない)」

「……(だが、こんな変態みたいな格好した奴と同じチームで間違えるわけにはいかない。こいつと同じ間違いをしたら白羽ハイルの格に関わる)」

「……(芸能界のファッションリーダーとしてこれ以上間違えるわけにはいかない。しかし分からん…同じに聴こえるぞ……そうだ。白羽がどっちを選ぶのか待ってから乗っかろう。売れっ子役者ならストッキングバリューの音色も分かるだろう)」

「……(こんな変態に違いが分かるはずがない。レオパルドの選んだ方とは逆を選ぼう)」

「……」

「……」

「……(なぜ黙ってるんだ新郷レオパルド!早く選べ!そっちとは逆の方がスペシュウムバリバリだっ!!)」

「……(おいおい、どうして何も言わない?リーダーシップ見せてくれよ白羽ハイル!)」

「……」

「……」

『Aですか?Bですか?』

「……(こいつ)」

「……(まさか)」

「「(俺と同じこと考えてる?(汗)」」


 チーム白羽はBを選んだ。



 次。バクト氏。


 ギコギコギ〜♪


「うーん……音色の重さ…そして軽やかさ…うん、これはBの方が高いね。Bがチュパチュパバーバリーです(キリッ)」





「あのね。どうしてみんな僕と日比谷さんと同じ方を選ぶんだい?」

「雨宮君…それは私達が一流であることをみんな知ってるから、真似してるんだよ」


 なるほど。


「ふざけんな前の問題ミスってんじゃん。まぁ今回は前回と違ってこの小鳥遊らいむ様が選んでるから間違いないけどね。な?妻百合」

「……(私は今回もミスってると思いますけど…)」

「なんか言えよ」


 またしてもみんなBの部屋。こうもみんな揃ってしまっては面白みがない。何より問題なのは現時点ではみんな外してるので映す価値なしを維持してる点。今の僕らは番組開始から一度も視聴者に姿を見せてない。

 声だけ。もはやラジオ番組。


 そして運命のガチャガチャタイム……


『さぁ外れの扉は……っ!!ガチャガチャガチャガチャ……』


 ガチャガチャガチャガチャ……


 開けられたのはBの控え室…僕らの目の前にムカつく司会者の顔面がご来光である。


 ブチ切れるらいむ。


「ふざけんな!!」


 ブチ切れる白羽氏。


「どういう事だ!おいっ!!なんでBを選んだ!!雨宮ァっ!!」


 ご満悦なバクト氏。


「やっぱりね」

「番組的には正解なんでしょうけど外してますよ?三流ですよ?いや、映す価値なし」


 そしてツッコむハツネン。


 ********************


『さぁ、ラストの問題を残して今のところ全員映す価値なし!ここまで熱い展開があったでしょうか!』


 もうラストらしい。まぁ45分しかないから仕方ないが……実にボリューム感に欠ける番組である。


「待ってくれ。俺は足を引っ張られただけなんだ!この新郷レオパルドとかいう変態に!!」

「おい白羽。選んだのはお前だ。責任転嫁は感心しないな…そもそも、最初に選んだ雨宮と日比谷さんが間違えたのが悪いんだし…(ボソッ)」

『何やら色々言いたいことがあるようですが…最終問題は特別得点です!』


 得点なる新たなる概念をラスト問題前に知らされる一同、困惑。


『最後の問題、高級品側を当ててしまった方は一気に一流芸能人に格上となります!さぁ!全員で映す価値なし、底辺芸能人の座を守り切れるのか!はたまた……?』

「(絶対当てる)」

「(絶対当てる)」

「(絶対当てる)」

「(絶対当てます)」

「(絶対当てる)」

「(俺のファッションはパリの最先端なんだ)」

「(当たる気がしない…)」

『最終問題ですっ!!』



 ドーーーンッ!!


『美食、芸術ときて最後の問題はこちら……モノマネ!!』


 モノマネ……?


 最初の挑戦者である僕らの目の前にスクリーンが降りてくる。


『今からとある映画のワンシーンでのとある俳優の演技と、ハリウッドの最新技術による特殊メイクの変装で俳優に成りすましたモノマネタレントの演技、二つを観てもらいます…果たしてどちらが本物か…外すことは出来るのか!!』


 雨宮に……いや全ての演者に緊張が走る。

 最後は演技を見極める、というなんとも意地悪な問題だ。この場にいるほぼ全員が現役役者。これ間違えたらもうカメラの前には立てまい…


 単なるプライドを賭けた戦いから役者としての存在価値を問われる戦いへとシフト……


 ……いや、だからこそ…


「日比谷さん、ここはこの雨宮にお任せくだちい」

「え?大丈夫?」

「僕はね…本物の役者なんですよっ(キリッ)」


 数多の試練を乗り越えてきた…

 多くの演者ともと共に…

 本物の役者の演技と、そのモノマネ…どちらが正解か……


 僕の芸能人生、芝居と共に生きた20年。


「間違えるはずが…ありません」

「雨宮君……」

「僕が日比谷さんを…一流芸能人にしてみせますっ!!」


 照明が落ちて、プロジェクターが起動する…僕は自分の今までの人生そのものを乗せる覚悟で目を見開いた!




『ご訪問された都市の中でどこが一番お気に召されましたか?』

『…それぞれの街なりに…』

『それぞれの街なりに…忘れられない思い出があります。ひとつだけ選ぶとしたら…ローマです!何と言ってもローマです!この地を訪れた思い出を一生忘れないでしょう』




 …………これは…っ。グレゴリー・ペックとオードリー・ヘプバーンの名作…『ローマの休日』じゃないかっ!


 頬を一筋の冷や汗が伝う…

 ヤバい…『ローマの休日』観たことないっ!




『ご訪問された都市の中でどこが一番お気に召されましたか?』

『…それぞれの街なりに…』

『それぞれの街なりに…忘れられない思い出があります。ひとつだけ選ぶとしたら…ローマです!何と言ってもローマです!この地を訪れた思い出を一生忘れないでしょう』




 ヤバい…違いが分からないぞ!

 映像も演者もセリフの言い方も全く同じにしか見えない…これやってるモノマネタレントって何者?


 ていうか『ローマの休日』を観たことない俳優なんて……っ!そんなのフェリーに乗る度にジャックとローズのあの名シーンを再現するくせに『タイタニック』観たことない奴みたいじゃないかっ!!


 雨宮は帰ったら『ローマの休日』と『タイタニック』を観る事を誓った。


 ……で、問題の正解だが…


「……雨宮君」

「日比谷さん……」

「信じてるよ」

「っ!!」


 日比谷真紀奈は世界一の美女!その美しさには一点の陰りも許されないっ!!

 ここで僕が間違えることは日比谷神の品位を貶めることになってしまう!!


 ……よく観るんだ…っ!スターにはスターのオーラがある。オードリー・ヘプバーンは銀幕の妖精とまで呼ばれた清純派女優。


 …ダメだ分かんねぇ……


 ならば……


 僕は考えることをやめた。雨宮小春ならばこのシーン…どう演じるか……っ。その感性はきっと正しい。僕の思う演技がそのまま正解として滲んでいるはず……っ!

 感じるんだ……っ!!

 自分が映画の中に飛び込むように……っ!想像して……っ!!




『日比谷神、今まで出会われた殿方で誰が一番お気に召しましたか?』

『雨宮です!何と言っても雨宮です!抱いてっ!!』




「うへへ……そんな……でゅふふっ///」

「雨宮君……(ドン引き)」

「いいですよ?ふへへっ///」

「何を想像してるのかな?(汗)」

「……ぶひひっ///」

「やめてっ!そんな欲情した目で私を見ないでっ!!そんな……はぁはぁ!///」

「ぶひっ///」

「男の穢らわしい欲求をぶつけられたら…っ!こっ……興奮するっ!!///」


『…あのマネージャーさん。これ、映して大丈夫ですか?NGですか?(汗)』

「いや、映す価値なしなので映ってないですよね?」

『OKです』



 ……うん分からん。


 ********************


 ガチャッて扉が開いたらバクト氏が控え室に入ってきた。

 映す価値なし芸能人殿堂入りの登場に控え室がお通夜ムードに…


「……いやだからさ。なんで毎回全員同じ方を選ぶんだよ(怒)」

「そうですよ。番組の盛り上がり考えてくださいよ」


 白羽氏とハツネンがプリプリ怒っている。


 そう……この部屋には僕らの他に、ハツネンや白羽氏といった一流(疑惑)の俳優達も入ってきた。

 つまり、僕の選択の信ぴょう性はあるということだ。だってみんな俳優ですよ?


「小春…さっき例年のこの番組の視聴率調べたんだけどさ……0.03%だった」

「誰も観てないに等しいじゃないか(怒)僕らを呼ぶ金がどこから出てるんだい(怒)」

「……ぶっちゃけさ?みんなギャラいくらだった?」

「日比谷さん、それ訊いちゃダメです。俺は2000万リラですけど」

「なんでレオパルド君だけリラなんだよ。てかやっすいなおい!!」

「ギアッチョ、金の話は後です」

「ギアッチョじゃないですハツネン。僕は雨宮小春です」

「小春、2000万リラってどれくらい?」

「調べよう。えっと……トルコリラなら7,290万くらい……?」

「「「「「嘘だろ!?」」」」」


 数千万なんて大御所クラスじゃないか!なんでそんなに貰ってんだ。サラリーマンの平均年収17年分くらいだぞ?


「ふざけんな」

「こんな変態にギャラで負けるなんて……っ!」

「あれですか?大手だからですか?ヤッテ・ランネー・プロダクションだからですか?」

「事務所の力か!?」

「許されないよそんなの」

「これ、生放送だから全部流れてるぞ。君のとこの事務所テレビ局と癒着してるんだろ?言え」


 ボコボコボコボコ


 炸裂するジェラシー。芸能界の理不尽が暴力と化して新郷レオパルドを襲う!


「痛い!?やめろ!!助けて!!俺は何も知らないっ!!ただ……」

「ただなんだ?」

「うちの上位ランカーのタレント達は…この、テレビ夕日の仕事を優先的に受けるようになってはいる……っ!テレビ夕日はそれで視聴率をかなり……」

「ふざけんな」

「やっぱり繋がってるじゃないか!!」

「裏金ですっ!!」

「いやらしい接待とかもしてんだろ!?」

「やっぱり腐ってやがるなヤッテ・ランネーは!!」


 ボコボコボコボコ!!


 ガチャガチャガチャッ


 こっちがレオパルド氏粛清に忙しい時になんか扉が開いた。


『なんとー!最後の問題も全員不正解!とんでもない事が起きました!今年の格落ちチェック!全員映す価値なし!!』

「「「「「「黙れ」」」」」」





 波乱を呼んだ『芸能人格落ちチェック』

 今年はなんと誰一人1ピクセルも画角に映らないという前代未聞の放送回となり、同時にヤッテ・ランネー・プロダクションとテレビ夕日の癒着が暴露され「なんでイタリアリラじゃねーんだよ」との批判が殺到。例年を大きく超える視聴率を記録したのだった……


 ……ちなみに雨宮小春の今回のギャラは2000万ウォンでした。

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