2話 サヤカキレる
第二話「ダークマネー・後編」
- 闇金を捕まえろ! 探偵タルの策略 -
オープニング的なやつ - 探偵様の罠
~事務所~
タル「よし……サヤカ、待つ必要がないかもしれん」
タルの突然の言葉に、サヤカは驚いた。
サヤカ「……えっ??」
サヤカ「(ちょっと待って、"待つ必要がない" ってどういうこと!?)」
事件解決には"次の被害者が出るのを待つしかない"と言われていたはずだ。
しかし、タルの冷静な表情を見る限り、何か策があるらしい。
サヤカは興味津々になりながら、タルを見つめた。
タル「……知りたいか?」
タルが、じっとサヤカの目を見ながら問いかける。
サヤカ「も、もちろんですっ!!!」
サヤカ「(さすが探偵様!! 絶対すごい作戦があるに違いない!!)」
タルはポケットから一枚の紙を取り出し…
サヤカの前に差し出した。
タル「この事件を解決したら、お前も一躍有名になるかもしれないな」
サヤカ「えぇっ!? そ、そうなんですか!?」
タル「だから……今のうちにサインをもらっておきたい」
サヤカ「えぇぇぇ!? サインですか!? 私の!?」
サヤカは、照れながら紙を受け取った。
サヤカ「えへへ……いいんですかぁ? じゃあ…
書いちゃいますよぉ……!」
サヤカは嬉しそうに、自分の名前をサインする。
サヤカ「(ふふっ、探偵様が私のサインを欲しがるなんて! ちょっと嬉しいかも……!)」
── しかし…。
サヤカがサインを書き終えた瞬間、タルは冷静に
言い放った。
タル「よし…さて……作戦は、お前が闇金に
金を借りておびき寄せる…だ」
サヤカ「……は?」
サヤカの笑顔が、ぴたりと固まる。
サヤカ「いやいやいやいやいや!?!?!?」
サヤカ「何言ってるんですかぁぁぁぁぁ!!!!!」
タルは無言で、サヤカのサインが書かれた紙を見せた。
サヤカの目が、その紙に釘付けになる。
── "借用書"
サヤカ「……え?」
タル「お前は、今…闇金から"50万円借りた"ことになっている」
サヤカ「いやいやいやいやいや!?!?!?!?」
サヤカ「な、何勝手に借金させてるんですかぁぁぁぁぁ!!!!」
タル「お前がサインした」
サヤカ「いやいやいや! これ! そういうサインじゃないでしょぉぉぉ!?!?!?!?」
闇金との接触 …サヤカ、おびき寄せられるのか!?
サヤカは、混乱しながらも結局タルの作戦に巻き込まれることになった。
サヤカ「(やばいやばいやばい!!!)」
サヤカ「(本当に借金取りに狙われるんじゃないですか!?!?)」
サヤカ「(っていうか、これ、私の命かかってません!?!?)」
タルは冷静に説明を続ける。
タル「闇金は、金を貸した後、短期間で圧力をかけて回収に来る…そのタイミングで証拠を押さえ…
警察に突き出す」
サヤカ「……つ、つまり、私が囮になるってことですかぁぁぁぁ!!??」
タル「そうだ」
サヤカ「……」
サヤカは、一瞬言葉を失う。
サヤカ「(マジで!? 私、そんな危険な役なの!?!?!?)」
サヤカ「……あ、あのぉ……じゃあ、探偵様が代わりに借金するっていうのは……?」
タル「俺は"表に出ている探偵"だ。こんな雑な作戦で動いたら相手が警戒する」
サヤカ「……じゃあ、なんで私なんですかぁぁぁぁぁ!!!」
タル「お前が助手だからだ」
サヤカ「くぅぅぅぅ!!!!」
サヤカは涙目になりながらも、結局、闇金と接触することになった。
闇金との対峙…サヤカ、人生最大の恐怖
夜の人気のない路地裏。
サヤカは、待ち合わせ場所でそわそわしながら立っていた。
サヤカ「(……怖いぃぃぃぃぃ!!!!)」
サヤカ「(闇金って、どんな人が来るの!?!?)」
男「お前、サヤカか?」
低い声が響いた。
サヤカ「ひぃっ!?!?!?」
現れたのは、黒いスーツにサングラスをかけた男たち。
── 闇金業者だった…。
男「借りた50万、そろそろ返してもらおうか」
サヤカ「ま、まだ借りたばっかりじゃないですかぁぁぁぁ!?!?!?!?」
男「金の世界に"借りたばかり"なんて概念はない」
サヤカ「いやいやいや!!! ありますよね!?!? 普通にありますよね!?!?!?!?」
男は、ニヤリと笑う。
男「おい、連れていけ」
サヤカ「えっ、ちょっ!?!?!?!?」
── サヤカ、普通に拉致される。
タルの逆襲…まさかの罠
サヤカが絶体絶命のピンチに陥ったその瞬間。
── パンッ!!!!
サヤカ「……!」
突然、強烈なフラッシュが光った。
男「な、なんだ!?」
闇金の男たちが目をくらませたその隙に──
タル「サヤカ、伏せろ」
サヤカ「は、はいぃぃぃぃ!!!」
タルが、闇金業者の一人の腕をねじ伏せ、地面に押し倒した。
男「……っ!?」
さらに、警察のサイレンが遠くから聞こえ始める。
男「……お前、まさか……!!」
タル「借金の取り立て、脅迫と暴行未遂"現行犯"でアウトだ。」
「……っ!!!」
男たちはパニックになり、逃げようとするが、すでに警察が周囲を囲んでいた。
タル「……終わったな」
タルは、無表情で言い放つ。
サヤカは、へたり込んだまま、ホッと息をついた。
事件解決…しかし、サヤカは怒っている。
事務所に戻ったサヤカは、探偵様の目の前に立ちはだかった。
サヤカ「探偵様!!!!!!」
タル「……なんだ」
サヤカ「勝手に借金させた件について、一言お願いします!!!!!」
タル「……結果的に、事件は解決した」
サヤカ「そういうことじゃないですぅぅぅぅ!!!!!!」
タルは、無言でコーヒーを飲む。
サヤカは、泣きそうになりながら叫んだ。
サヤカ「私、ブラックコーヒーより苦い経験しましたぁぁぁぁ!!!!」
第2話・完。
おまけエピソード:サヤカのサイン、再び!?
事務所にて…
事件解決後、事務所に戻った二人。
タルは椅子に座りながら、コーヒーを一口飲んだ後、ぼそりと呟いた。
タル「さてと……サインをもらおうかな」
サヤカ「……はい?」
ソファに座っていたサヤカが、怪訝な顔でタルを見る。
タル「お前のおかげで事件は解決した。感謝の証として、サインをもらっておきたい」
サヤカ「……え、いや……絶対何か企んでますよね!?」
タル「そんなことはない」
タルは無表情のまま答えるが、サヤカは疑いの目を向ける。
サヤカ「さっきの借用書の件があるんですよ!?!? もう騙されませんからね!!!」
タル「……そうか」
タルは少し残念そうに、机の引き出しを開ける。
タル「せっかく、書いてもらうための色紙も買ったのに」
サヤカ「……は?」
タルは、どこからともなく"ちゃんとした色紙"を取り出し、目の前に差し出した。
サヤカ「っ…!【サヤカ様、直筆サイン用】って
書いてある!!!」
サヤカ「……ちょっっっ!!!!!」
サヤカ「普通に準備してるじゃないですかぁぁぁぁぁ!!!!」
タル「俺は、事件解決に貢献した助手のサインを
もらいたいだけだ」
サヤカ「いやいやいや、今までそんな文化なかったでしょぉぉぉ!!!」
サヤカは、額を押さえながら混乱する。
サヤカ「……本当にサインするだけ……?」
タル「もちろんだ」
サヤカ「また借用書とかにされませんよね?」
タル「今回は"色紙"だ」
サヤカ「"今回は"!?!?!?!?」
サヤカはタルをじぃぃぃっと睨む。
サヤカ「(……信用できないぃぃぃぃ!!!)」
しかし、目の前に差し出された色紙は、確かに普通の色紙だった。
サヤカ「(……まぁ、普通に考えて、色紙にサインしても問題はない……はず……)」
サヤカ「……わかりましたよ! でも、本当に悪用しないでくださいね!!!」
サヤカは、渋々ながらもペンを取り…色紙にサインを書き始める。
サヤカ「……よし! 完成!」
サヤカは満足げに色紙を渡す。
タルはそれを受け取り、静かに眺める…
そして…。
タル「よし、ではこれは"事務所に飾る"とするか」
サヤカ「え、えぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」
タル「助手の記念すべき初サインだ。いいだろう」
サヤカ「恥ずかしいんですけどぉぉぉぉぉ!!!」
タル「探偵事務所の助手として、一人前になった証明だ」
サヤカ「そ、そんなぁぁぁぁぁぁ!!!!」
こうして、サヤカのサインは、探偵事務所の壁に堂々と飾られることになった…。
── しかし、これが後に"とある事件"のヒントになるとは、サヤカはまだ知らない……。
おまけ・完
次回予告:「サヤカのサイン、盗まれる!? まさかの価値急上昇!」
次回、サヤカのサインにまつわる"ちょっとした事件"が発生!?
探偵事務所の壁から消えたサイン……犯人は誰だ!?
続続しちゃう
やはり我ながらテンポが良い