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vs巨獣(ベヒモス)2

「ミサイルの着弾まで、5,4,3,2,1・・・着弾!」


モニターに映し出されるのは巨獣(ベヒモス)の姿が隠れるほどの大きな土煙。間違いなく、ミサイルは命中していた。


「やりました、指揮官!命中です!」


戦闘班の声は喜びに満ちていた、が、その喜びも一瞬のうちに恐怖へと墜ちていく。


「よく見ろ・・・生きているぞ」


土煙がだんだんと晴れていく。そこには巨大な山のようなものが堂々と立っていた。


「こちらは科学班。ただいまの攻撃による外傷は現在のところ見当たりません」

「そんなばかな、このミサイルは・・・我が国が誇る最新兵器だぞ!もう一発だ!!!」


再びミサイルが撃ち込まれる。モニター越しにも、その衝撃が伝わってくるのであったが、

しかし、それが巨獣(ベヒモス)に致命傷を与える気配は一切なかった。


「くそっっ!どういうことだよ・・・」

「・・・分かりません。外殻が見た目以上に硬いのかもしれません」

「だったら、数打つしかねえか」

「いや、まて」


熱くなった戦闘班班長を止めたのは天羽野(あもうの)だ。


「どうしてです?指揮官!」

「冷静になれ。やつの体を見てみろ。これだけ攻撃しても傷一つないじゃないか。あれは外からミサイルをいくら打ち込んだところで変わらんよ」

「そんなことを言ったって・・・」

「・・・内側からだ。奴が口を開いたタイミングを見計らって、その口内にミサイルを撃ち込め・・・できるな?」

「分かりました」

「指揮官、その作戦はあまりよくないと思われます」


割って入ったのは科学班だ。


「この神依獣は、摂食した物体を消化することで自身のエネルギーに即座に変換しています。そのエネルギー量は摂食した物質に依存すると思われるため、もしミサイルを消化されてしまう事態を想定すると・・・」

「・・・そうか、それは確かに危険だ。しかし・・・参ったなあ。相手は人智を超えた神依獣。何かいい手はないものだろうか・・・」

「それでなのですが、指揮官。ひとつ思いついた作戦がありまして・・・」

「なんだ?」

「あまりに突拍子もないものなのですが」

「いいぞ、話して見ろ」

「・・・巨獣(ベヒモス)のもつ唯一の生物らしさ・・・それは、消化を経て自身のエネルギーを得るという点です。これはつまり、十分に消化が出来なければそこからエネルギーを吸収できないわけで・・・」


そこまで聞くと、天羽野はにやりと笑った。


「なるほど、面白いな。・・・その作戦でいこう」



※※※※※※※



(全く・・・タイガーマンは何をしているでトスか・・・)


巨獣(ベヒモス)は歯ぎしりをしていた。


(さっきから飛んでくる変な物体・・・別に痛くはないでトスが、砂埃が器官に入って喉がイガイガするでトス。この小賢しい攻撃はお前が絡んでいるのでトスか、タイガーマン。・・・しかしお前自身が来ないのであれば、こっちも作戦変更するしかないでトス。地球人がいっぱいいるところで暴れるしか・・・本意では無いでトスが)


巨獣(ベヒモス)は四肢を地面に固定した。


(もう一度ここでエネルギーを集めて・・・それで都市部で暴れるでトス。・・・見ているでトス、タイガーマン)


そして、巨獣(ベヒモス)は大きく口を開いた。ゴオオオという風切り音とともに、その口はあらゆる物質を吸い込んでいき・・・。


「よし、今だ!」


その攻撃を待っていたと言わんばかりに、天羽野が声をあげる。


「了解!対巨獣ミサイル、発射!」


戦闘班によって打ち上げられたミサイル。それは、巨獣(ベヒモス)に向かって飛んで行ったが・・・間もなく、その吸引力によって口内へと吸い込まれていくのであった。


「ミサイル、着弾。目標通り、神依獣体内に入り込んだものと思われます」

「了解。・・・上手くいくといいが」


神特対の作戦。それは、ただの物理に頼る攻撃ではなかった。その効果が表れるのは着弾から数分程度と考えられ・・・神特対の皆が巨獣(ベヒモス)の動向を注視していた。


(ん?何か変なものを飲み込んだでトス・・・まあいいでトス。この巨獣(ベヒモス)のエネルギーに変えて・・・あれ?なんだか、お腹の調子が・・・)


ウェヤー卿が感じた異変。ギュルギュルといった音が体の芯から聞こえるとともに、それは激痛へと変わっていった。


(痛い痛い痛い痛い痛いでトス!)


巨獣(ベヒモス)は吸引どころの状態ではなかった。激痛のあまりに、ひっくり返ってのたうち回る始末だった。


(ち、地球人め・・・何を飲ませたでトス・・・うううイタタタタタタ!)


その様子を見て、神特対の人々は笑みがこぼれた。


「やりました!効果はてき面のようです!」

「まさか、こんな奇想天外な作戦が成功するとはな・・・」


彼らが放った対巨獣ミサイル。それは、十分な消化を終える前に下してしまうという恐ろしい薬・・・下剤であった。


「た、タイガーマンどころの話では無いでトス・・・覚えているでトス!地球人!!!」


ウェヤー卿はあまりの激痛に耐えかねて、変身を解くとそのままセアへと逃げ帰っていった。

その様子を見て、神特対ではさらなる歓声が上がった。


「やった!やったぞ!俺たちだけで神依獣を倒した!」

「やりましたね、指揮官!」

「ああ・・・良かったよ。しかし、まさかここまでできるとはなあ・・・」


皆の想像を超えた事態。タイガーマンなしでの神依獣への勝利。


「まあ、しかし浮かれるのはここまでだ。それぞれ片付けに取り掛かれ」


天羽野は、ほっと胸をなでおろすのであった。


読んでいただき、ありがとうございました。

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