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ツァラー卿の襲来

そこは惑星セアの王宮。地上6000mの頂上にて。円卓には3人の「卿」が集まった。

「無様ですね、ウェヤー卿。地球人なんかに負けるなんて・・・まあ、それが汝の力量ということですが」

ボロボロの体をしたウェヤーだったが、その言葉を耳にした瞬間食い気味に反応した。

「それはノーでトス、妬圃祁(とーけ)卿。今回は油断したでトス。二度と同じような失敗は・・・」

「その体ではまだ戦えないでリムよ」

ウェヤーの言葉を遮ったのはツァラー卿である。

「今はゆっくり休むでリムよ、ウェヤー卿。せっかくサ・タ様からエナジーを供給してもらったのに、今戦っては治る傷も治らないでリムよ」

「・・・しかし、そうなると私かツァラ―卿のいづれかが地球に向かいタイガーマンと戦わなければなりませんが」

妬圃祁(トーケ)卿、ボクが行くでリム!」

「お前には無理でトスよ、ツァラー。油断したとはいえ、このウェヤーを敗北させた人物。体の小さいお前なんかには勝てる相手では・・・」

「それは差別でリムよ、ウェヤー卿。異星侵略の時は大概ボクにチャンスを与えてくれないでリムが、そこは平等にしてほしいでリム」

「いや、それはお前を心配して・・・」

「まあ、行かせてみれば良いのではありませんか、ウェヤー卿。勝敗は戦ってみないと分からないですよ。なので・・・任せましたよ、ツァラー卿」

「了解でリム!」

「まあ・・・そうでトスね・・・健闘を祈るでトス」

「任せるでリム!」




※※※※※※



また(とき)同じくして、国会議事堂内にて。

「それで、虎太郎君・・・いえ、タイガーマン。これからもあのような化け物が日本に襲来するということで間違いないのかね?」

総理大臣は真っ青な顔で虎太郎の話を聞いていた。

「はい、おそらくは。ニマの話によると・・・彼らは諦めの悪い連中だそうで」

「でもタイガーマン、そのニマとかいう異星人を信じて大丈夫なのかい?君が騙されている可能性も・・・」

「それは大丈夫だと思います。彼女は自分が犠牲になってまで、僕を助けようと・・・地球を守ろうとする異星人です。現に、セア星の連中は、まずはこの僕を倒そうとしています。侵略の妨げになるとみなした、この僕を・・・」

「そうですか・・・」

総理大臣は剥げかかった頭を抱えた。

「・・・タイガーマンよ、その力でどうか日本を・・・いや、地球を守ってほしい。先の件を踏まえると、彼らはその目的を達成するために、どんな被害を私たちにもたらすか想像がつかない。私たち日本政府は全力で君を支援することをここに誓う!・・・それで、私たちも地球人を守るために、このような組織を作っている」

虎太郎は極秘と押印された資料が渡された。

(怪獣特別対策本部(かいじゅうとくべつたいさくほんぶ)・・・!?)

「以降、襲来した異星人が変身した化け物を、その容姿から地球人になじみのある用語で『怪獣(かいじゅう)』と定義しようと思う。怪獣が地球に攻めてきたら、この怪獣特別対策本部(かいじゅうとくべつたいさくほんぶ)、通称、怪特対(かとくたい)を中心に民間人を警護・保護する。加えて、その研究班では最高峰の知見を結集し、怪獣を分析・撃退する情報を君に提供する。・・・しかし、やはり要は君だ。どうか、地球を・・・っとすまない、電話がかかってきた」

虎太郎は資料に夢中だった。虎太郎にとって怪特対(かとくたい)の存在は大変ありがたいものであった。自分ひとりの力では怪獣を倒せても、地球人ひとりひとりの命を守ることが出来ないと思ったからだ。また怪獣の分析も可能であるなら、とてもうれしいものであった。

総理大臣が電話で誰かと話しているちょうどその時、虎太郎の脳内に声が流れてきた。

『もしもし!もしもし!タイガーマン、聞こえますか!』

テレパシーだ。

「ああ、聞こえるよ!どうした、ニマ?」

『時間です!戦う、時間が!』

「またウェヤー卿か?」

『違います!ツァラー卿です!!!』

「・・・いや、誰だよ」


「タイガーマン!!!」

総理大臣の震える声は、ニマの声をかき消した。

「ぎ、ぎぎぎぎ議事堂前に怪獣が!!!」



※※※※※※※


「ちょっとちょっと、ボク、ここに何しに来たのかい?お父さんお母さんは?」

黄色の半袖と黒の短パンを履いた少年が議事堂の前にいた。警備員には、その姿が普通の小学生の子供にしか見えなかった。ちょっと違うのは、顔に大きな一つ目があることだけだった。

「初めましてでリム、地球人。ここにタイガーマンがいるという噂を聞いて来たのでリムが・・・タイガーマンに会わせてほしいのでリム」

「ごめんね、ボク。タイガーマンは今は忙しくて・・・」

「・・・そうでリムか。だったら仕方ないでリムね」

ツァラー卿は短パンのポッケから三日月のペンダントを取り出し、天に掲げた。

「慈悲あまねく慈悲深き(レライシオン)の力において・・・融合(アンシハーロン)!!!ジブリール!!!」

ツァラーは黄金色の光の玉に包み込まれた。その光がはじけた瞬間現れたのは、1600枚もの翡翠色の翼を持つ巨大な白鳥――ジブリ―ルだった。

「おい、俺はここにいるぞ!異星人!!!」

ジブリ―ルがその声の主を見る。そこには普通の人間の体をしているが、獰猛な虎の顔を持つ男がいた。

「その見た目!タイガーマンでリムな・・・わが名はツァラー。サ・タ様の命令に従い地球を侵略しにきたでリム!その前に・・・早速でリムがタイガーマン、まずはお前と勝負でリム!」

ジブリ―ルはそのたくさんの翼をはためかせ、空高く舞い上がっていった。

「タイガーマン・・・あなたの弱点は飛べないことでリム・・・そう、空中から攻め込むでリム!・・・食らえ!!!!!」

太陽の光が煌びやかな翼の一枚一枚にまとわりつく。1600枚の全ての光を体内に吸収すると、それを口からレーザーのように一度に吐き出した。

もちろんその光線の標的は、タイガーマンだ。


「うあ゛あああああああああああああああああああああ」


防御の姿勢をとったものの、その燃えるような暑さは変わることが無かった。時間にして10秒ではあったが、タイガーマンにとって、その10秒は一時間の長さにも感じた。


「はあ、はあ、はあ、はあ」


息切れこそしたが、タイガーマンは耐えた。光線の全てを受け止めることで、周囲への被害を最小限にとどめることに成功した。


「これを耐えるとは・・・さすがウェヤー卿を倒しただけの強さがあるでリムな、タイガーマン。ただ、防御するだけではこのツァラーを倒すことは出来ないでリム!もう一度放てば・・・それでタイガーマンはおしまいでリム!!!」


ジブリ―ルは徐々に光を溜めていく。1600枚の翼が輝き始め・・・。


「おい、ニマ!」

『・・・』

「おい、ニマ!」

『・・・』

「全く、なんで肝心な時に反応が無いんだよ・・・」


タイガーマンに与えられた時間は5分もないであろうことは自分でも分かっていた。しかし、どうすれば天高くにいる怪獣(かいじゅう)に攻撃できるのかが分からなかった。


(くっそおおおおお!!!俺にも、あいつみたいな翼があれば!!!)


タイガーマンが地団駄を踏むと、議事堂前に小さなクレーターが生じた。驚いて足を見ると、破けた靴の隙間からふさふさの毛がはみ出していた。


(足も虎に・・・だったら・・・)


タイガーマンは足に力を溜めた。その一撃にすべてを掛けるために。


「準備は出来たでリム!!!食らえええええええええええ!!!!」


ジブリ―ルの口から光線が放たれた瞬間、タイガーマンもまた足に溜めた力を放った。


「タイガあああああジャああああああンプ!!!!!!」


タイガーマンは光線をも跳ねのけるスピードで空中へ跳ね上がった。

予想だにしていない行動に、ツァラー卿は成すすべがなかった。


「ま、まさかこの高さまで・・・く、く、来るなでリム!!!!!!!!」


一時的に光線の威力を高めたが、タイガーマンを止めることは出来ないのであった。ジブリ―ルのもとに届いた弾丸は右手に力を溜めた。


「からのおおおおおおおーーーーーータイガああああああパああああンチ!!!!!!」


「うわあああああああああああああああああああああああああああ」


ジブリ―ルの体を、翼を・・・・弾丸は貫き、破壊したのであった。



※※※※※※



「いやあ、すいません。議事堂の前をこんなに穴だらけにしちゃって・・・」

地上に帰ってきたタイガーマンは、最初に総理大臣のもとで謝罪をしていた。

「いやいや、別に大丈夫だよ。これも異星人から地球を守るためだし、被害がこの程度で済んだだけでも・・・それに、この修理費は全部税金から出るから」

最後のは大丈夫じゃないだろ、と思いつつ・・・何はともあれ、今回もタイガーマンが勝利を収めたのであった。

「あ、そうだそうだタイガーマン。悪いんだけど、前に話した怪特対(かとくたい)のことで変更点があって・・・」

真剣な声をした総理大臣から資料が手渡された。この一瞬の間に、虎太郎の頭の中には嫌な予感が巡りに廻った。怪特対(かとくたい)が結成できなくなってしまったのか・・・。研究班が集まらなかったのか・・・。

総理大臣は咳ばらいをひとつしてから話し始めた。

「あのさ・・・カイジュウの字なんだけどさ、『怪獣』じゃなくて、『神依獣』にしようと思うんだ。だから、それに伴って『神特対(かとくたい)』に変更したくて。一生けん命戦っていた君には悪いんだけど、あの神が憑依したような姿は『怪』しい獣じゃないよ・・・・って思うんだけど、どうだい?」


タイガーマンは力が抜けるのを感じた後、笑顔で答えた。


「どっちでもいいです!」

読んでいただき、ありがとうございました!

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