タイガーマン、終焉
「タイガーマン!・・・タイガーマン!!!」
懐かしい声が、俺を呼んでいる。
肩をトントンと叩きながら。
「う・・・うん?」
「あ。起きた」
テーブルから体を起こし、辺りを見回す。そこは昔よく使っていたファミレスだった。
そして、向かい側に座っている相手、青年のような爽やかな声の持ち主であるその相手は・・・ミ・カだった。
「お久しぶりですね、タイガーマン」
「いや・・・ま、うん。お久しぶり」
目の前の光景が現実でないことだけは瞬時に分かる。しかし、このありえない状況が飲み込めてしまう。似たようなことが、前にもあったからだろうか。
「これは、あれだよね。その・・・記憶の・・・」
「そうです。記憶からの再編成。私たちの話し合いの場に選ばれました」
「話し合い?・・・何の?」
「地球、セア・・・そして、それらを含めた宇宙のこれからです」
「・・・壮大だね」
「・・・ええ。私もちょっと緊張しています」
カタリ、と音がした。
俺とミ・カとの視線を遮るように、テーブルにアイスが置かれたのだ。
「お待たせしまいました。デザートです」
鳥肌がたった。
店員の発するその声に。
「役者がそろったようね」
「ちょちょちょちょっと待ってよ、ミ・カ!!!こいつは・・・」
そいつは無理やり俺を端に押しやると、図々しく横に座ってきた。
「やあ、タイガーマン。そして・・・久しぶりだね、ミ・カ」
「お久しぶり。・・・お兄ちゃん。この姿で対面するのは、お互い数千年ぶりよね」
「・・・そうかもな」
「あの時は本当に驚いたんだからね。まさか、お兄ちゃんに首を絞められるとは思わなかったわ」
「こっちだって驚いたぞ。殺したはずのお前が、まさか我が星で転生しているなんて・・・。どうして隠していたんだよ!!!」
「そんなのお兄ちゃんに言ったら、また殺されるからに決まっているでしょ!」
「そうだな。殺していたかも・・・な。・・・ふふ、冗談だよ」
二人の物騒な会話が段々と白熱していき、いつの間にかそれは喧嘩になっていた。
数億年の月日に積もり積もった思いがお互い爆発したということなのだろうか。俺は気まずく、目の前にある溶けかかったアイスをちびちび食べた。
「面白くないから。・・・忘れてないからね。大切な子たちを殺したこと。・・・6回も」
「そんなに石を落としちゃったっけ?・・・被害妄想では?」
「いいえ、やっています。その度にみんな無くなっちゃって・・・本当に辛いんだから」
「そんなに嫌だったら、もう一度生まれるように仕向ければいいじゃないか」
「そういう問題じゃないの。・・・ホント、昔から変わらないよね」
「お前だって変わらないよな。自分は何もせず、放置してずっと見ているだけで」
「全てを思いのままに支配しないと気が済まない、傲慢なやつよりずっとマシだと思うけど」
「あの・・・俺がいること、忘れていない???」
アイスも無くなり、俺はたまらず二人の止まらない喧嘩に割って入った。
二人は俺を見ると、ようやっと喧嘩をやめてくれるようだった。
「あら・・・ごめんなさいね。私としたことが」
「俺は謝らないぞ。こんな面倒くさい事態になったのは、お前が創った、このタイガーマンのせいなんだからな」
「でも、そのタイガーマンに惨敗したのは誰よ」
「なんだと・・・」
「だから、喧嘩はやめてって!!!」
俺はサ・タと席を入れ替わり、ミ・カの正面に座った。
「それで、まだ説明を聞いていないんだけど。これはどういうわけなの?どうして、ここにサ・タがいるわけ?」
「それは、これが引継ぎの会合だから」
「・・・引継ぎ?何の?」
「この世の全て・・・私たちをも創った、本当の神といえるような存在の引継ぎよ」
「タイガーマン。お前は、事の重大さを理解していないようだな。ようやっと我が親がその位をこの中の誰かに委ねようとしているのだからな」
「まあ、それを引き継ぐのは・・・実質あなたよ、タイガーマン」
「・・・俺?」
ミ・カは、俺の頭上を指さした。
「あなたは私と、そしてお兄ちゃんの創造主としての因子を持っているから」
「しかし、俺は許さないからな。俺でもミ・カでもなく、たかが人間ごときに譲られるなんて」
「それを決めるのは親と・・・タイガーマンよ。ねえ、タイガーマン。その覚悟はある?」
「覚悟・・・多分ない、かな。なんかすごそうだし」
「すごいなんて一言で済まされる話じゃないからな。人間のお前に理解できるとも思えないが、無限の時と力を手に入れるのだからな」
「そうね。正直、私にも理解が追い付かない世界よ。私たちを創ったのが50億年くらい前で、この宇宙を創ったのが140億年くらい前で・・・それも老後の気まぐれで創ったとか言っていたから。いったいどれほどの時を歩み、やりたいことをやり尽くしたのかしら、あの人は。・・・そんな感じだけど、少しは実感が湧いた?」
「そんな覚悟、多分ではなく、全くもって皆無です」
俺は、間髪入れずに答えた。
振り返ってみれば短いと思ったことは多々あるけど、それでも俺の生きてきた二十数年は長かった。その数億倍なんて考えただけでゾッとする。生き地獄だ。
「タイガーマンがこんな感じじゃ、やっぱり俺かミ・カが引き継ぐしかないだろ」
「あたしは・・・正直、嫌」
「じゃあ、俺が引き継ぐしかないと思うけどな」
サ・タだけがその覚悟があるようだった。しかし、納得いかないのは俺だけだろうか。
「まあ、でも。タイガーマンが拒否した時点で引継ぎは無かったことになったわね」
「まあ・・・そういうことだな」
「いや・・・どういうこと?」
俺が困惑していると、ミ・カが自分の頭上を指した。
「あなたにあった因子が私に戻ったから」
「俺にも、な。これでまだチャンスがあるってわけだ」
確かに、天使の輪のようなものが俺の頭上には無くなり、ミ・カとサ・タの頭上に戻っていた。
「じゃあ、俺はお先に失礼するとするかな。セア星で再び力を付けてから・・・またその時には・・・我が妹よ。その時には、絶対にお前の因子を受け取って、俺が神になってみせる」
そして、続けざまにサ・タは俺の方を向いた。
「タイガーマンよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあな」
それだけだった。サ・タは席を立ち、静かに出口から退店した。
「さあ・・・どうしましょうか、タイガーマン。あなたはどうしたい?」
「どうしたいって・・・何か選択肢があれば答えやすいんだけど」
「死んだ後、生まれ変わりたいものがあればお望みのまま叶えるし・・・もしなければ、それをランダムな運任せにするし」
「すっごく極端な選択肢だね。どっちみち死んでいるし」
「でも、それが現実よ。あなたの体は私たち二人の因子を受け継いだ時点で、そのエナジーに耐え切れず形をなくしてしまったの。魂を受け取る器がないってことは、もう一度その器を探さなきゃいけないわけで・・・」
「そ、そっか・・・。いつの間に死んでいたんだ、俺」
「でも、今の選択肢は今の私にできることで・・・私の親に頼めば、あなたの想像できることくらいならなんだって叶えてくれると思うわ。あなた自身を生き返らせることだって・・・」
「いや、それはいいや・・・潔く、このまま深い眠りにつきます」
「分かったわ。それで、死んだ後はどうする?」
「なるがままに。運任せで」
「・・・分かった」
ミ・カは俺の頭を掴むと、ゆっくりと顔に近づけた。
「なに、この儀式もキスなの?」
「そうよ。嫌かしら」
「まあ、悪い気分はしないけど」
「ならいいじゃない」
「・・・まあ、そっか」
「ねえ、タイガーマン」
「・・・なにさ」
「ありがとう」
仄かな温もりが、俺を包み込む。
ものすごく・・・幸せだ。
※※※※※
「ありがとう、本当に・・・ありがとう」
ミ・カはそっと呟く。
そして、胸中の光をぎゅっと抱きしめた。
「ただの虎男じゃない。ウルトラマンすらも超える私の英雄・・・タイガーマン!!!」
読んでいただき、ありがとうございました!!!!!
なんとか完結させることができました。完結までに、こんなに時間がかかるとは思っていませんでした、本当に。
これでも、全力で挑みました。どんなことでも良いので、是非、感想を残していただけるとうれしいです!




