龍虎相搏 (3)
「ぐぬぬぬぬぬ・・・ツァラー!!!」
「・・・はい、でリム・・・」
別の水たまりから、今度はツァラー卿が現れた。
「お前は、俺の命令を聞いてくれるよな」
「・・・・・・」
「おい・・・」
「その・・・サ・タ様・・・僕は・・・僕は・・・もう、これ以上みんなを苦しませたくないでリム・・・」
「そうか・・・そうか・・・お前は本当に優しいのだな・・・ツァラーよ」
サ・タはゆっくりとツァラー卿に歩み寄った。
「だがな、その苦しみが今後のために必要なんだ。セア星の生きとし生けるもののためにも・・・」
「サ・タ様・・・もう、嘘はやめてほしいでリム」
「嘘だと・・・俺の言葉のどこに嘘があるというのだ・・・?」
「先ほどの命令・・・」
「命令・・・?」
「卿団員と、セア星に生きる者を、全て、エナジーに還せと・・・それで、セア星に何が生き残るというのでリム?」
「ああ・・・なんだ、そんなことか。それだったら、また創り直せばいいだけの話だよ」
「・・・創り直す?」
「ああ。私は神なのだから。そんなことはたやすいことだ。ああ、そうだ。また創り直すときには、お前が望む世界を汲んでやろう。お前の望む、平等な世界を」
「・・・そういう問題ではないのでリム。サ・タ様は、本当に自分のことしか頭にないのでリムね」
ツァラー卿は、ゆっくりとサ・タから離れていった。
「お、おい・・・ツァラー!!!!!」
「・・・それに、僕は分かってしまったのでリム。平等な世界は無理だということを」
「無理なんてことはない。俺の力をもってすれば、お前の理想の世界なんてものは・・・」
「ただ、その思い描いていた世界になると、今より一層みんなが不幸になってしまうことが分かったのでリム。平等でいなくたって良かったのでリム。大切なのは、その違いを認め合うことだったのでリム」
「だったら、今度は皆が違いを認め合える世界を・・・」
「僕はもう、みんなを苦しめたくはない。それに、今生きているものの幸せを守りたいでリム」
サ・タはツァラー卿の後を追い、その肩に手を掛けようとしたが、その手をすり抜けるように、ツァラー卿も水へと還っていった。
「・・・サ・タ様」
「おおおお、その声は・・・ウェヤーか」
サ・タが振り向くと、そこにはウェヤー卿が立っていた。
「お前は・・・俺の味方だよな」
サ・タは腰を低くし、すがるようにウェヤーの手を掴んだ。
「・・・違うでトス。最後の別れを言いに来ただけでトス。ですから、その手を離してほしいでトス、サ・タ様」
「・・・やだ。お前だけは。お前だけは分かってくれるはずだ」
「僕には何も分からないでトス」
「いや、お前だったら話せば分かる」
サ・タは俺の方を指さした。
「確かに俺は嘘をついたことがあるかもしれないし、利己的な部分があるかもしれないが、あいつは・・・タイガーマンは、あのニマを殺した張本人だぞ。お前が愛した、あの女を手に掛けた張本人。そんなやつを許すわけにはいかないだろ!!!」
「許さないでトス」
「そうだよなあ。だったらここはお互いに手を取り合った方が・・・」
「しかしサ・タ様・・・ニマはタイガーマンに殺されることを望んでいたそうでトス」
「なぜお前にそんなことが分かる!!!」
「タイガーマンが言っていました」
「お前は・・・こいつの言うことを信じるのか!!!神である私を差し置いて!!!」
ウェヤーはサ・タの手を、静かに振り払った。
「あの女の考えそうなことでトス。・・・だからこそ、納得できます。・・・さようなら、サ・タ様・・・」
ウェヤーもまた、水へと還っていった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
サ・タが天を仰いで叫んだ。
「飼っている犬に手を噛まれただと・・・この、俺様が・・・」
「往生際が悪いぞ、サ・タ」
「うるさい!!!!俺はまだ・・・戦える・フュージョン!!!!!・・・・・虪」
サ・タは再び変身し、俺に向かって戦闘態勢をとった。
「オレハ・・・負けない」
俺も、戦闘態勢をとった。
その時である、足元の水たまりから声が聞こえてきた。
「サ・タ様、お願いです。負けを認めてくださいでトス」
「裏切りモノが何をいう・・・オレハまだ・・・」
「いえ、負けでリム。自分の姿を見るでリム」
その姿――タイガーマンと瓜二つ。ただ、真っ黒いだけの虎男。
「たとえそれが無意識でも・・・その姿こそが答えです。エナジーとは自己実現の力。今のあなたが目指す存在とはつまり・・・」
「ウ・・・ウルサイ・・・勝てば良いのだ、ナンデモ・・・」
「そうでリムか」
「なら、私たちも」
「この世の未来のためにはなんでもするでトス」
水たまりひとつひとつがタイガーマンの元に集合していく。
「エナジー、それは、自己実現の力。夢を、現実に」
「僕たち三人と、同じ意思を持つ仲間の力を合わせれば・・・不可能を可能にするはずでリム」
「・・・創造主を倒すことだって」
水たまりはひとつになると、一つの生き物のように形を保ち、タイガーマンの手の上に乗っかった。
「あとはお願いでトス、タイガーマン」
「僕たちの意思と」
「あなたの意思を合わせて、どうか、この世のために・・・」
「ああ、分かったよ」
「御父、御子、御霊の力において・・・・」
「慈悲あまねく慈悲深き主の力において・・・」
「南無、南無、涅槃・・・」
「融合!!!!!滅虪剣」
その瞬間、タイガーマンの手上の水玉が、一メートルほどの長細い剣に形を変えた。
その剣先を虪に向け・・・ひと思いに、突き刺した。
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