叫號
その日も激しい雨が降り続けていた。
土砂崩れによって被災した村での救助活動から帰る途中で、突如現れた謎の新興宗教団体に、俺は襲われた。
激しく顔面を打ち付ける雨の感覚で目が覚めたが、その瞬間には手遅れだった。
両手両足は十字架に括り付けられ、身動きが取れない状態になってしまっていたのだ。
ぼうっとした意識の中で感じる、情けなさ。
地球を守れなかった結果だ。何かがおかしいと感じながらも、その変化に自分を合わせるだけだった。でも、それで精一杯だったのも確かだ。
目の前に起きた災害の救助に向かうことは人として間違いではないと思う。それで救えた命が確実にあった。だから、後悔はない。でも、ふと考えてしまうのは、他の可能性だ。もしこの異常気象を止めることが出来れば、つまりは神依獣を倒すことが出来れば、世界規模の災害に発展することはなかったのだろうか・・・いや、そんなことを考えたってやはり無駄だ。今になってもこの現象を打破する方法が分からない。それがサ・タを倒せばいいというのは分かるのだが、そのサ・タの居場所が分からないし、地球を覆うようなエナジー反応もよく分からないし、何よりこうなってしまってはもう、なるようにしか・・・。
俺はもう一度体を動かそうとしたが、やはり無理だった。
地球人の信仰をなくしたせいだろう。エナジーが・・・ない。
「こういう時に、一番怖いのは人間ですよね、タイガーマン」
朦朧とした頭でも、その声の主はすぐに分かった。
「そうか・・・こういうやり方もあるよな。すごく人間的思考だね・・・サ・タ」
サ・タは動けない俺の前に立ち、ニッコリと笑った。
「手段は選ばないって言ったでしょう。それに、自分の創った星以外の生命体を意のままに操るのは神様としての素質だと思うがね。・・・ミ・カが生きていたら言ってやりたいね。・・・お前が傍観していた報いだと」
「ただの傍観じゃない。地球のあり方を尊重したんだ。自分中心なお前とは違ってな」
「でも、これがその結果じゃないのかな?」
サ・タはグッと顔を前に出してきた。
「私は自分の星で神として干渉してきた。だから成功したのだ。対して、お前やあいつはどうだ?神としての力を持ちながらそれを行使しなかった。いや、出来なかった。だからこそ、窮地に陥った人々の信頼を得られない。私のようなパッと出てきたものを信じてしまう、信じざるを得なくなってしまう。どうしようもならない世界を救いたいと願うために!!!
もう諦めな、タイガーマン。ミ・カとの約束なんて忘れろ。今まで守ってきた地球人はもうお前の味方ではない」
「そうだな・・・確かに地球人の中にはお前を信じる人もいるだろう。ただ・・・全員じゃない!!!!今だあああ!!!!」
俺は號んだ。大地を揺るがす大きな声で。その声は、かの遠い東の国にまで届いた。
「タイガーマンだ」
「これが神特対の言っていた合図か」
「がんばれよ、タイガーマン」
日本にいる、みんなが祈り、願う。
地球を守ってくれるヒーローを信じて。
みんなから集められるエナジーが、タイガーマンに蓄えられる。俺は思いっきり体を動かし、貼り付けから身をはがした。
「驚きましたよ・・・まだあなたにそんなエナジーがあるとは・・・」
「今集めたんだ。俺の声が心に届いた、俺を信じてくれる人々のエナジーだ」
「なるほど・・・騙されましたよ。これも私を誘き寄せる作戦のうちでしたか。さすがにうまく行きすぎていると思いましたよ。あなたこそ、とても人間っぽいではないですか」
「当たり前だあああ!!!俺は神様なんかじゃない。地球を守る英雄ヒーロータイガーマンだあああ!」
俺は拳に力を溜めた。
「喰らええええ!!!!タイガああああパあああンチ!!!」
俺の拳はサ・タの顔面に直撃し、その体は瞬く間に宙を舞った。
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