地球恐慌
サ・タがいなくなってからすぐに異変は起きた。
地球を覆う真っ黒い雲。止むことのない雨。各地で冠水や土砂崩れが生じ、政府は対応に追われていくのであった。
そして、そういった情勢により、神特対という組織は解体を強要されてしまった。いつ出現するか分からない神依獣よりも、目前にある自然の驚異に対応せざるを得ないのであった。
日本だけではない。世界が雨に苦しんでいた。海面が上昇してある島は沈み、主要都市は機能しなくなった。地球上のほとんどの植物が枯れていき、それを食す他の生物も死滅していくのだった。
※※※※※
「本当に、まるで夢を見ているようです。神依獣を初めて見た時にも感じましたが、ここ一年で非現実的な現象を何回も体験してしまいました・・・」
数か月ぶりに会う天羽野さんは少しやつれているようだった。
しかしその眼光の鋭さに衰えはなく、今もこうして時間の合間を使っては、極秘裏に対神依獣の情報交換をするのである。
「それで、先ほどの話を詳しく聞きたいのですが・・・この雨と神依獣が関係していると感じるというのは、どういうことですか?」
「はい・・・。これを見ていただきたくて・・・」
天羽野さんは湿気でしおれている二枚の紙をバッグから取り出した。
「水没してしまった本部なのですが、幸いにも機械はまだ動いているようで・・・ハッキングすることで面白いことが分かりました。・・・これはあのエナジー反応を示すものですが、見ての通りで・・・」
「エラー?」
「はい。ですが、これは単なるエラーではなく、観測しきれないほどのエナジーがある時に出るものらしく・・・」
「機械が故障していたわけではなくて?」
「その可能性も無いとは言い切れませんが、しかし、過去の履歴などはしっかり残っていて・・・ほら、ここです。ちょうど3か月前。このあたりからエナジーが上がり続けていて・・・」
それはちょうどサ・タが地球にやってきた時期である。
「いや、でも・・・警報は鳴らなかったではないですか」
「はい。だから神特対が動くことはありませんでした。しかし・・・こちらは総合的なエナジーのデータです。いつも神依獣が現れると局所的に大量のエナジーが観測されるので、それを機械が感知して警報が鳴る仕組みになっていたのですが・・・それが今回は全域的にエナジーがあったもので、機械は神依獣だと認識しなかったわけです」
「そんなことが・・・」
僕がデータを眺めて唖然としていると、天羽野さんは乾パンを口の中に放り込み、コーヒーを飲んで胃の中に流し込んだ。
「今動くべきなのが神特対なのですが、そのメンバーは被災地に赴くことで、全国に散り散りになってしまいました。私自身も、また別のところに行かなくてはなりません。この先のことは本当にすいませんが・・・」
「いやいや。謝らなくていいですよ。これだけの情報を教えてくれたのですから。もしこれが神依獣の影響だとしたら、反省すべきは俺です。地球を守るのが役割なのに・・・」
「今からでも間に合います。どうか、地球を救ってください。・・・そして、私の乾パン生活からも!」
天羽野さんが珍しく冗談を言った。しかし、俺はそれすらも笑う余裕がなかった。
「最前線には行けませんが、いつでも協力しますので」
「・・・ありがとうございます。とても、心強いです」
「それでは、また」
天羽野さんと力強い握手をしてから、俺たちは別れた。
外に出ると、雨は相変わらず激しい。
道路にできた池のような水たまりを見つめていると、自分が怖い目になっていることに気が付いた。
前に見た目だ。本気で人を殺すことを躊躇しない目――あの日に見たサ・タの目だ。
※※※※※
地球の混乱。
最初こそ日本にいるタイガーマンに救いを求める声が上がったが、それも段々と少なくなっていった。
そんな時、反タイガーマンを掲げる謎の新興宗教団体がSNS上で出現した。
「彼は魔王サタンの化身だ・・・タイガーマンは」
「これは天罰だ。神依獣は神様だったのだ。我々はそれに気づかず、タイガーマンを応援してしまった」
「・・・タイガーマンを殺すのだ。そうすれば、大天使ミカエルもきっと援護してくださるに違いない」
「タイガーマンを殺そう」
「タイガーマンを殺そう」
「タイガーマンを殺そう」
「タイガーマンを殺そう」
神に、いや、藁にもすがる思いをした人々の多くはそんな怪しいデマですら信じた。SNSで拡散されるとともに、世界各国でこれが大きな運動になっていくのであった。
読んでいただき、ありがとうございました。




