決戦の予兆
暗雲が空一面を覆った、とても暗い日だった。
突如現れる高エナジー反応。現場に向かうが、そこには誰もいない。
夕立の前触れを感じさせるような、冷たい風が吹いたと思うと、頭上から男の声が聞こえてきた。
「お前が・・・いや、ここは同じ位にあるものとして訂正しよう。あなたが、噂に聞いていたタイガーマンだな」
声がする方に目をやる。雲の切れ間から、一筋の光がさした。そして、そいつはゆっくりと舞い降りてきた。
「そういうあんたは、噂の・・・」
頭上には天使の輪。背中にはカラスのように真っ黒な黒い羽。黒ずくめの服を着た1つ目の男が神々しく輝いていた。
「我が名はーーサ・タ。
セア星の創造主であり、この宇宙の神となるものです。早速ですがタイガーマン。とりあえず、私の願いを聞いては貰えないでしょうか?」
「願いだと?」
サ・タは俺の目の前に黒い羽を羽ばたかせながら降りてきた。
「その、ミ・カの因子を譲ってほしいのです」
サ・タは俺の頭上を指さした。
「地球の創造主たる証であるその因子。それを私に頂戴させて欲しいと言っているのです」
天使の輪に触れようとする手を、俺は振り払った。
「断る」
「まあ・・・星ひとつを創造し、その摂理すらも構築できる力を、まさか無条件でもらえるとは思っていませんよ。・・・その対価を考えてあります」
サ・タは両手で空を包み込むかのように、大きく広げた。
「あなたが望む世界を、あなたにあげます」
「俺が望む世界?」
「はい。なんてことはありません。ミ・カの因子と私の因子を合わせれば、我が親すらも倒せる。そしたら、星どころではない、宇宙と、その摂理を再構築できるわけです。その際には、あなたにもう一度神の位を与え、星を構築する権限をあなたにあげます。そうすれば、あなたは今以上にこの世を支配することができるわけです!!!!!いかがですか?乗っていただけますか?」
サ・タは俺に手を差し伸べてきた。
しかし、どんな条件が付こうと答えを変える気は起きなかった。
「断るよ」
「・・・そうか。こんなにも美味しい話なのに、どうしても嫌なのですか?」
「ああ。お前たちからこの星を・・・地球を守るのが俺の役割だから」
サ・タは意外そうな顔をした。
「あなたはその力をもってしても、その程度のことしか実現しようと思わないのですか・・・。あなたも、あいつと似ていますね・・・」
サ・タは少し前のテンションが考えられない程の小さな声で語り、静かに俺に背を向けた。
「そういうことでしたら、こちらも力に訴えるしかありません・・・タイガーマン。・・・覚悟を。私は、目的を達成するためには手段を選びませんので」
ギラリとしたその目つきからは、俺が今までに経験したことのない恐怖を感じた。本気で俺を殺そうと考えているであろう目だった。
そして、サ・タは黒い羽根を羽ばたかせながら、その日は再び天へと帰っていくのだった。
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