最期の審判
この様子を見て不敵な笑みを浮かべる者がいた。
「そうか・・・そうか・・・お前がミ・カだったのか」
男は頭上にある光り輝く輪を軽く撫でた。
「こうなる前に手を打つべきではあったが・・・まあ、いい。最終的にタイガーマンを倒せば同じことさ」
背中から生えた漆黒の翼を羽ばたかせ、男は下界へと降りていく。
天界の門を開けた先には3人の卿が待っていたが、その様子がいつもと違っていた。
「サ・タ様・・・サ・タ様・・・助けてほしいでトス・・・ニマが、ニマが・・・」
「いい加減落ち着きなさいでリムよ・・・そろそろサ・タ様がお見えになられる時間でリム」
泣き崩れるウェヤー卿。それを慰めるツァラ―卿。静かに傍観する妬圃祁卿。
3人はサ・タに気が付くと、慌てて正面を向いて座すのであった。
「どうした・・・。何かあったのか?」
「その・・・ご存じのことだとは思うのですが・・・」
妬圃祁卿が立ち上がる。
「未だに現実が受け入れられないもので・・・。その・・・ニマ卿が亡くなったことに対して」
「勝手に死んだことにしないでほしいでトス!」
ウェヤー卿が妬圃祁卿の胸ぐらを掴んだ。
「冷静に考えなさい、ウェヤー卿。エナジーの反応が消えた。それはイコール我々にとっての死だ」
「どんな理由があったって、あのバカ女が死ぬわけがないでトス!!!」
「ちょっと二人とも、やめるでリム」
ツァラ―卿が慌ててふたりの中に割って入った。
「ケンカしてる場合ではないでリムよ。目的を見失ってはダメでリム。僕たちの目的はただひとつ。タイガーマンを倒すことでリム。そうでリムよね、サ・タ様」
三人がサ・タを見上げる。
サ・タは頭上の輪を撫でながら語りだした。
「そうだな。ツァラー卿の言う通りだ。お前たちの課題はタイガーマンを倒すこと。まずはそれを成し遂げて見せろ。ただ・・・今のタイガーマンはお前たちの敵う相手ではなくなってしまった。・・・だから、次は私が行こう。そのためにお前たちに遂行して欲しい計画がある。・・・『最期の審判』を」
3人はゴクりと唾液を飲み込んだ。
「すいませんがサ・タ様・・・それはどういう計画なのでリムか?」
「これは世界を賭けた戦いになるだろう。万が一に私が負けることになれば・・・それはつまり世界の終わりだ。どんなに低い確率であってもそのようなことはあってはならないことは分かるだろう?」
「はい。サ・タ様のおっしゃる通りだと思います」
「そうだよなあ、妬圃祁。そこで・・・私にも更なる莫大なエナジーが必要となるわけだ」
「分かったでリム、サ・タ様。また他の星に卿団員を増やしに向かえば良いのでリムね!」
「違うよ、ツァラー。もう終末戦争は目前に迫っている。そこまでの時間はない」
「では今の卿団員に、より一層神拝させれば・・・」
「それも違う、妬圃祁。同人数によって行われる神拝で得られるエナジーには限界があるし、それでは一瞬にして大量のエナジーを得るには効率が悪い・・・先ほどから泣いてばかりでいるが、ウェヤーは何か思いつくか?」
ウェヤーは静かに嗚咽しながら答えた。
「すいませんでトス。全然分からないでトス」
サ・タはウェヤー卿の頭をゴシゴシと撫でた。
「無駄を省くのだ。・・・無駄とは何か。それはセア星に存在する無意味なエナジー。知性を持たない下等生物や、神拝心が無い人々・・・それらの持つエナジーを固定して奪い取る。それが、『最後の審判』」
「お言葉ですが、サ・タ様。エナジーが奪われた下等生物たちは・・・」
「その答えは、先ほどお前自身で話していたではないか」
「そんな・・・つまり・・・」
普段は冷静沈着な妬圃祁卿だが、その声震えていた。
「我々セア人の中からもエナジーを固定するって話していたでリムか?さすがに僕の聞き間違いでリムよね?」
「・・・いや、合っている。エナジーの供給源にならないような人間は下等生物と大して変わらない。その存在をエナジーに還し、私の戦力になってもらう」
「そんな・・・それを僕たちが仕分けるっていうことでリムか?」
「ああ、だから『最期の審判』だ。何か不服そうだな、ツァラーよ」
「い、いえ。そんなことは無いでリム。・・・サ・タ様」
ツァラー卿は目を俯け、拳をぎゅっと握りしめた。
「やるでトス。サ・タ様」
「おお、理解してくれたのか。ウェヤーよ」
「はい、まずは僕のエナジーを・・・」
「そういう訳にはいかない。お前がいなくなってしまっては、お前を支持する卿団員はどうする?」
「それは・・・」
「お前たちがまだ混乱しているのは察するに余りある。まずは、心を落ち着かせてゆっくり休みなさい。それでは、また」
サ・タはそう言うと、再び天界へと戻っていくのであった。
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