??卿の襲来(5)
目覚めは最悪だった。仕事に行く毎日とは比較ならないくらいに。
「タイガーマン、聞こえますか?タイガーマン!」
神特対の叫びが、俺を心配している声が・・・強制的に俺を動かすアラームのように忌まわしく聞こえた。
「はい、聞こえています・・・僕は大丈夫ですので、ちょっとまってください」
「無事で良かったです!それよりもあなたに報告したいことが・・・」
「ちょっと黙っていてください」
「・・・すいません」
いや、多分大丈夫じゃない。
まともではいられない。
しかしそれが地球人の願いであり、俺の使命であり、ニマ――いや、ミ・カとの約束。
ミ・カは目の前に倒れている。いい夢でも見ているかのように、気持ちよさそうな顔をして。
「ミ・カ。俺にこんなことをさせるなんて・・・あんたは悪魔だよ」
肝心なことは全然話してくれないし、話すことがあっても、全部そっちの都合だし。全く・・・変な神様だ。
そんな神様を殺す儀式なのだから、相応の準備が必要だろう。こういう時こそ・・・神特対だ。
「さっきは声を荒げてすいませんでした。神特対の皆さんにお願いしたいことがあって・・・」
神特対の返事は早かった。
「いいですよ、気にしないでください。お願いって、何でしょうか?」
「さっき使ったミサイルを用意してほしいのです」
「分かりました。しかし、あなたと、この神依獣はエナジーがリンクしているとか・・・」
「それは大丈夫です。・・・今は。なので、最新型の対神依獣用ミサイルをお願いします」
「・・・分かりました。もう一発打ち込みます!」
空高くから、もくもくと煙の足跡を残しながら、ミサイルは落ちてきた。
「タイガーマン、早くその場から離れてください!!!」
「いや、俺は大丈夫なので・・・」
ニマにとって、最高の最期にしてやろうと思う。
あんたが創り出した地球の、最新の兵器。神依獣から地球を守るための武器を使って、俺がお前を・・・。
落ちてくるミサイルを両手でつかみ上げる。空気の摩擦で燃えるように熱かったが、それでもこうしてあげたかった。最後の花向けに。
「地球人の未来を乗せたこの武器に・・・俺の意思も乗せてお前を倒す!!!」
その瞬間、意図せずに手の感触が変わる。
ミサイルだったソレは、いつの間にか大きな太刀になっていた。
「くらええええええええええええええええ!!!!!!!!」
両手で剣を握りしめて、ミ・カの肉体を貫く。
ミ・カの体は、貫いた部分から徐々に光へと変わっていった。光の粒、ひとつひとつがゆっくりとタイガーマンの頭上に集合していく・・・。
※※※※※
「エナジー反応が一つ減りました。タイガーマンの勝利です」
神特対でどっと歓声が挙がった。
「そして・・・タイガーマンに変化が・・・」
タイガーマンの頭上には天使の輪が出来ていた。
「あれは何なのでしょうか?」
「・・・分からない。ただ、何かがあったのだ。私たちには知る余地のない、何かが」
天羽野は、モニターに映るタイガーマンを見て拝んだ。
「まさしく、神だ」
神特対の各々も天羽野につられるようにタイガーマンを拝むのであった。
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