??卿の襲来(2)
未だに、目の前の光景が信じられない。
俺は、ニマに向かって思いっきり拳を叩き付けようとしている。
「タイガああああパああああンチ!!!」
「ペアリズ!」
バンッという衝撃音が走る。
俺の拳は、ニマの顔面にぶつかる寸前に、何か硬い物質に遮られた。
「くっそおおお・・・」
ニマは両手をかざしてバリアを張っている。
「エナジーいいいいいいい全開いいいいいいい!!!!!」
あと数十センチの距離なのに・・・届きそうなのに、俺の拳はその壁を壊すことが出来なかった。
「リパルス」
ニマが呟く。
その途端、拳に激しい反発力を感じた。そして、そのまま体ごと吹き飛ばされてしまった。
地面に叩きつけられたとはいえ、そこは畑の真ん中。体へのダメージは小さく済んだ。
「もう一度!タイガああああパああああンチ!!!」
すかさず拳にエナジーを溜めて、ニマへと一直線に駆け出した。
「ペアリズ」
しかし、ニマへのパンチは、また顔面すれすれのところで防がれてしまった。
「打撃がダメなら・・・これなら」
俺は、もう片方の手の指先へとエナジーを集中した。
「タイガあああああクロおおおおおおウ!!!」
それぞれの爪が、太刀のように伸びる。
それを思いっきり振りかざして、バリアを突き破ろうとした。
ニマのバリアはガラスのような硬さをしていたが、それでも爪が少し食い込む感覚があった。
「いけえええええええええええええ!!!!」
そこで、ニマと目が合った。
「リパルス」
壁の奥に、さらに新しい壁が出来る感覚が。
徐々に爪が壁の外へと排除されていき・・・そして、俺はまた弾き飛ばされた。
「ならばもう一度・・・」
もう一度ニマに攻撃しようと体を起こしたところで、神特対からの通信が入る。
「タイガーマン!あなたのエナジーが急激に減少しています!このまま続けて戦い続けるのは危険です!」
自分では、そこまで疲れているような感覚はない。
まだ、やれる。
まだ、戦える。
「まだ大丈夫です!戦わしてください!」
「でも、このままだと戦うためのエナジーが・・・」
「これは俺とニマの勝負なんです!!!」
神特対の説得を強引に振り切り、俺はまた力を溜めた。
「タイガああああああああ」
「しかし、タイガーマン・・・」
屈強な男の声がした。天羽野司令官だ。
「しかし、タイガーマン。あなたがここでエナジーを使い切ってしまっては、私たちに勝ち目はありません。・・・ですから、ここは情報収集のためにも私たちの文明の力を使ってはいただけないでしょうか?」
今回ばかりは自分ひとりの力で倒したかった。
そうすることで、ニマを超えられるような気がした。
なのに、自分の攻撃はニマにかすり傷すら与えてない。
本当に、悔しい・・・。
でも、そんなことも言っている事態ではないのは明白だ。
これは俺とニマだけの戦いじゃない。
地球の運命を担う戦いなのだから。
だから、ここは・・・。
「分かりました。神特対の皆様、お願いします」
「承知いたしました、タイガーマン。・・・・ありがとうございます」
西から風が吹いた。
大地の香りが鼻をかすめる。
・・・悪いものでは、なかった。
読んでいただき、ありがとうございました。