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6話 お腹が空いてきた

「すぐに終わらせるって……大丈夫なの? 絶対やばいよあいつ……」

「ええ、大丈夫です。ですが、近づかないでくださいね。危険なので」


 そう言った瞬間、システィの体から黒いオーラのようなものが流れ出てくる。オーラはたちまちシスティの足元に集まっていく。


「えっ……」


 システィが1歩踏み込んだ瞬間、その姿が『消えた』。咄嗟にビッグゴリラ(アカネ命名)の方を見る。大きなゴリラの背後に、システィがいた。さっきのは消えたのではなく、一瞬でビッグゴリラの後ろへ移動したのだ。


「は、速すぎて全く見えなかった……」


 先程の黒いオーラが、さらにシスティの2本のナイフも包んでいく。

 そして……。


「………………」


 無表情で、魔物を切り刻んでいく。足、胴体、腕、背中。システィの姿が消えるたび、魔物の体にはどんどん傷が増えていく。

 あ、ビッグゴリラの腕がミサイルみたいに飛んでる。

 あ、頭が『黒ひげ危機一発』みたいに……。


「や、やりすぎでは……?」


 ていうか、お嬢様なんだよね、あの子。

 あのゴリラの惨状からは、お淑やかさの欠片も感じられない。


「あのーシスティアさん? そのゴリラ、もう原型とどめてないし、そろそろ許してあげて?」

「……そうですね。そろそろ死ぬでしょう」


 物騒だなお嬢様。


「ふぅ……ケガはありませんか?アカネ」

「う、うん……ありがとうシスティ」

 

 システィは私の安全を確認したあと、無惨な姿になったゴリラを物色するように見ている。


「最初の突撃してきた魔物はウイローク。その後の大きな魔物はゴリラと呼ばれています」


 マジでそのまんまゴリラなんかい。絶対名付けたの転生者でしょ。


「おそらく、ウイロークはこのゴリラから逃げてきたのでしょう。……そういえば、戦う前に『捉えようによっては宝』と言ったのを覚えていますか?」

「あー言ってたかも。目の前でかなりショッキングな光景が繰り広げられてたから、ちょっと忘れてた」

「思い出したいただけたのなら、よかったです。それで…………お腹は空いていませんか?」


 言われてみれば、転移してから何も口にしていない。

 ……あー。1回気づいちゃうと、どんどん空腹が気になっちゃう。


「確かにお腹は空いてる。けどちょっと待った」

 

 予感がする。嫌な予感がする。私のチート能力「第六感」がそう言っている。


「まさか、その魔物を食べる……とかじゃないよね?」

「いえ? その通りです。ウイロークもゴリラも、歯応えがあって美味しいですよ。しかも、とても栄養価が高いんです。宝、と言ったのはこの魔物達のことです」


 食べる? この魔物を? ……無理だ。うん無理だ。いくらお腹が空いていても、さすがに厳しいものがある。


「えーっと、私は遠慮しておこうかな……」


 グーーーーー。

 お腹が鳴ってる。体が空腹を訴えてきている。でもここは我慢だ。魔物を口にする勇気はさすがにない。それにたぶんお腹の音はシスティに聞こえてないからバレてない大丈夫。


「体は正直ですね」


 聞こえてました。


「まぁ、あなたがそう言うのなら私は構いません。今後食料が手に入る保証はありませんが」


 グーーーーーーーー。


「でも、でも……魔物を口にするのは……」

「……そうですよね。魔物を殺して食べるなんて、女の子らしくないです。普通は嫌ですよね。いいです、私1人で食べますから」


 そう言うシスティは少し拗ねたような、寂しそうな顔をしていた。

 ……さっきシスティは「美味しい」と言っていた。きっと好きなのだろう。


「もしかして、私に食べてみて欲しかった……とか?」

「っ違います! 私はただ、あなたがお腹をすかせているのではないかと心配していただけです! 決して、好きな食べ物を共有したいだとか、そういうのではないですから!」

 

 きっと図星なのだろう。システィは顔を真っ赤にしながら反論している。

 ……可愛い。あまりにも可愛すぎる。間違いなく天使だこの子は。

 そしてずるい。そんな顔をされたら、魔物に対する抵抗感なんて吹き飛ぶに決まってる。


「あー、やっぱり食べてみようかな。よく見たら美味しそうだし」

「ほ、本当ですか……?」


 システィの目が少し輝く。


「うん。でもその前に。我慢できないので……うりゃ!」

「!? 何ですか急に! いきなり抱きつかないでください! ち、近いです! 近いですから!」

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