5話 お宝?
休憩を終え、出発してからかなりの距離を進んだ。足場の悪さにも少しずつ慣れてきたし、特に魔物と遭遇することもなかったので、順調に進めている。
システィと談笑しながら歩いていて分かったことがある。私の能力(たぶん)である、異世界転生者サポートシステム、インゲージ・テリーヌ(インテリさんと呼ぶことにした)についてだ。
どうやら通訳機能があるらしく、普通に日本語で会話できているのはインテリさんのおかげらしい。
……うん、すごく助かる。
もう1つ、インテリさんはポ○モン図鑑のようなもので、さまざまな情報を記録しておけるらしい。魔物の弱点とか、ダンジョンの特徴とか、私の理解したことを可能な範囲で記憶してくれるらしい。
……これは助かる。すごく助かる。異世界チートっぽい!
ちなみに、インテリさんは現在スリープモード中なので、しばらく図鑑機能の利用と会話することができないらしい。
……うーん、なんというか、この、うーん……。
なお、『翻訳機能ハ常時発動中』らしい。
……うーん、まぁなんというか……ありがとう!
「…………止まってください」
いろいろ考えていると、突然システィに歩みを止められた。
「なになに? もしかしてお宝?」
「捉え方によっては、そうかもしれませんね。……あそこを見てください」
そう言うとシスティアは正面の少し左を指差した。システィが指した方向にあったのは、のそのそとゆっくり動く生物だった。
「う、うわぁ……なにあれ……イノシシ?」
イノシシ、と呼ぶには少し不釣り合いだったかもしれない。獲物を捉えるための鋭い目つき。そしてその獲物を食い殺すための獰猛な牙。私が元いた世界では絶対に存在し得ない異物。
「とかかっこつけて考えてる場合か!? いや絶対魔物でしょあれ! 絶対突っ込んでくるよあいつ!」
私が大声を出したのを皮切りに、イノシシのような魔物は『突然』突っ込んできた。
……いや、ほんとに突然。え、イメージ的にはこう、助走をつけるみたいな予備モーション的なのがあると思ったんだけど。なんかめちゃくちゃノーモーションで突っ込んできてるんだけど。
「きてる! きてる! きてます!」
「落ち着いてください……大丈夫ですから」
そう言うとシスティは腰についてる2本のナイフの内、1本を抜き――そのナイフを魔物に向けて、真っ直ぐに、軽く投げた。
投げられたナイフは魔物の脳天に直撃した。魔物を倒すにはその一撃で十分だったらしい。魔物は雄叫びをあげ、突進の勢いのままこちらに転がってきて、私達の目の前で完全に静止した。
「うわぁ……ちょいグロ……一応コメディですよこの作品……ってそんなことより、さすがシスティ! この状況でも冷静に対処するその姿……そこに痺れる憧れる!」
「……まだ終わっていません。こちらは前座。本命はあちらの方です」
システィは魔物からナイフを抜き、改めてさっきの魔物がいた位置を指す。指の先にいたのは『ゴリラ』だった。私もよーく知ってるゴリラ。唯一の違いは、そのよく知ってるゴリラの数倍の大きさ、ということだ。
「あかん。今度のは絶対あかん。見てごらんなさいあの筋肉」
ムッキムキだよムッキムキ。腕だけで私の体より太いよたぶん。デコピンで粉々にされそう。
「確かに、少し面倒くさい魔物です。……なので、すぐに終わらせます」