表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/38

ナース・ナーガリウス

 囁きを聞いた途端、俺の脳裏を駆け巡ったのは殺人衝動そのものだった。その衝動に押され、俺は青年に攻撃魔法を放っていた。しかし、それを青年は簡単に躱すと一瞬にして間合いを詰めて俺に語り掛けた。


 「一応聞いておこう、名前は?」


 その質問に、俺はこう答えた。


 「ゲイルだ」


 その回答を聞くと、青年は仮面を外す。


 「予想通りだ。やっと会えたね、弟よ。僕はエーゲ・アース、お前の兄だ。いま、楽にしてあげる」


 その言葉とともに、俺の視界は鮮明になった。"殺さなければいけない"という殺人衝動は消え失せ、兄と名乗る彼が確かに血の通った兄弟であることも自然と確信した。


 「一体、何をした!?」


 フォールンの驚愕の声が聞こえる。


 「久しいね、フォールン……いや、ナース・ナーガリウスと呼んだほうがいいかな?君が弟に使ったスキル【悪魔囁ウィスパー】は、僕のスキル【能力没収スキル・イーター】と【能力消去スキル・トラッシュ】そして【能力統合スキル・インテグレーション】によって無効化されたよ」


 フォールンをナースと呼ぶエーゲは、彼女はナースという二つの名を持っていると説明した。


 「馬鹿な、【能力スキル】の三権能をどうして貴様が!あれは神族の直系しか使えない筈のスキルだぞ?貴様が本当に、神族の里の生き残りだとしても貴様の家系は直系ではないはずだ!」


 ナースは、これまで聞いたことのない様な強い口調でエーゲを問い詰める。


 「ああ、確かに神族の里は君含めたオールディン達によって滅ぼされた。直系も全員が殺されて、逃げ延びたのは神族唯一の生き残りであった母だけだった」


 「直系ではないならなぜ!」


 ナースは激昂し、無詠唱で魔法を放ち始めた。ナースの魔法は、常に性質を変化させており火属性化と思えば水属性へと変わっていたり、初級から最上級に変貌したりと予測不可能な強力なものだった。しかしエーゲは、涼しい顔をしながらすべての魔法を打ち消していた。


 「君は、スキル【創生魔法原理クロノス】を魔法に付与することで強力な魔法攻撃を実現している。言っておくけど、【能力消去スキル・トラッシュ】の前ではスキルを使っている時点で無効化されるだけだよ。純粋な魔力で攻撃しないと、僕には届かない」


 そう言ってのけるエーゲに対して、俺は敵で無くてよかったと安堵した。しかし、対面している当の本人は真逆の感情をいだいているようだった。


 「貴様は、質問にだけ答えていればいいんだ!」


 ナースは、更に魔力を高めてエーゲに攻撃を仕掛ける。しかし、その攻撃も全てエーゲに当たることはなかった。


 「仕方ない、話に付き合ってあげるよ。神族の直系だけに与えられるスキルというのは、間違った憶測だったんだよ。真実は、神族の血を濃く受け継いだ者に与えられるスキルだった。そして、神族が母だけなら、その子である僕が血を最も濃く受け継いでいることになる。そうは思わないか?」


 エーゲは、自身の銀のように綺麗な白い髪を触りながらそう言った。


 「ふざけるな!」


 そう言って、ナースは自身の魔力と精密な魔力操作によって基本属性の全てを含んだ魔法【全属性創生球ムフェト・クロノス】を放とうとしていた。それは、直撃すれば魔王城城下町を悠々と超える範囲を破壊できる程のものだった。それに、その魔法は【創生魔法原理クロノス】を使っていない純粋な魔法攻撃。


 「覚醒はできる?」


 エーゲはそう語り掛けると、僕は覚醒できなくて神格は得られないからね、と言って【審判魔法原理(ヴァルキリア)】という神格を得ていない存在に対して絶対的魔法勝利を得るスキルを自身に使った。


 「でも、弟は覚醒を使って神格を得ることが出来るはずだよ」


 その言葉に俺は【覚醒】というスキルが神格を得ることによって、神格を有していない下位の存在に対して絶対的優位を得ることができるということが確信に変わった。不死身であったヒュドラを殺せたのは、神格を得て別次元の存在になったからではないか、という予想が肯定されたからだ。


 「なぜ、貴様らごときが神格を有している」


 「神族だからね、弟は僕とは別方向で才能があるから覚醒を自由にできてもおかしくはないだろう。それに、君だって弟が神族の可能性があったから、精神が不安定な状態を作り【悪魔囁ウィスパー】で手駒にしようとしていたんだろ?」


 ああ、なるほど。会ったときに彼女の気配を感じなかったのはそれ相応の実力があったからで……俺が彼女を不用心に信じていたのもそれが理由か。


 「……っ、神格と言っても所詮は一時的なもの!私がこの手で葬ってやる。【全属性創生球ムフェト・クロノス】!」


 ナースが、魔法を放った瞬間、エーゲは笑みを浮かべた。


 「無謀だな、弟よ見ておけ。火球ファイアボール


 初級魔法を放つエーゲ。だが、どう考えても魔力の差が大きすぎる。【審判魔法原理(ヴァルキリア)】があるかと言っても、魔力量の差が何万倍もあったら相殺すらできないんじゃ――

 だが、その予想は外れた。エーゲが放った火球ファイアボールは、ナースの【全属性創生球ムフェト・クロノス】を呑み込み、ナースの心臓を貫いた。


 無論、俺の方へと飛んできた【全属性創生球ムフェト・クロノス】の残骸も神格の力によって消失した。


 「嘘……でしょ」


 「さて、そろそろ終わりにしようか、ナース」


 「まだ、まだ終わってなんか――」


 「心臓がなくても生きているのは、流石は人外の生命ってところか。まぁ、その長い人生もこれで終わりだね。【能力没収スキル・イーター】君のスキルを全て没収する」


 刹那――ナースは全てのスキルを失い、存在そのものが消失しようとしていた。


 「せめて、貴様だけでも道連れに……!」


 ナースは、そう言うと一瞬にして自身の手刀でエーゲの心臓を貫いた。しかし、エーゲは何も何事もなかったかのように話を続ける。


 「ふむ、君のスキルを全て没収したしあとは【能力統合スキル・インテグレーション】で僕のスキル強化に役立たせてもらうよ。さてこれで、君を殺せばすべてが終わる」


 そう言ってエーゲが、ナースに手をかざして


 「風神疾風ふうじん


 神級の風魔法を使ってナースの身体を切り刻んだ。

 ナースの身体は、一瞬にして人の身体から肉塊へとそしてただの赤い霧になるまで、細かく切られてしまった。

面白い!と思ったら、感想や評価お願いします。

それにしても最近になってポイント増えて嬉しい反面、一話から修正しようと思っていた矢先にもうここまで読んでしまった人に読み直してください!とは言いにくい……どうすればいいのでしょうか。


追記:24.07.17から修正を開始しました。物語の内容が変わることはないので、読み返す必要はありません!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ