閑話 ー悪魔と至高の存在ー
「炎魔アークが、死んだか」
どことも知れぬ、真っ暗な空間で魅惑の声による呟きが広がる。
彼女オールディンのその呟きに応えるかのように暗闇から現れたのは、強魔デビルグラディウスと言われる最強の悪魔であった。
「奴は、ゲイルという男との駆け引きに負けた。オールディン、貴様が無理に洗脳を用いたからだぞ?」
グラディウスは、オールディンに物怖じせずにそう淡々と答える。
「フッ、別に構わないさ。グラディウス、貴殿こそ彼の亡骸を用いて力を得たではないか」
「そう見えるか?まぁ、貴様には元より期待はしていない」
「そうか、それでメリスの肉体は馴染むか?」
「笑止、人ごときの身体では私のすべての力を出し切ることは出来ぬ。それはともかく、具合は良い」
「それは良かったよ。さて、氷魔デビルクライズはどうするんだ?」
氷魔デビルクライズ、氷系魔法を扱う三大妖の一体。
「彼女は、魔王に付いた。いわば、敵だよ。だが、俺は魔王と戦うつもりはない。強いて言うなら、俺の王が命令するならば別だがな」
「そうか、感謝するよ。では」
「あぁ、俺はこれで失礼する。アシュタルト様が、待っておられるのでな」
そして、暗闇よりグラディウスは消えた。
「ダリス。今の話を聞いて、何か思ったことはあるか?」
「「いえ、何もございません」
何もないと答える。
「では、魔王について何かあるか?」
「はい、かの魔王ヴァルキリアについてですがヴァルキリアは大きくその力を増しているように思います。何せ、ヴァイという人間とその仲間を仕向けたのはいいものの、彼らはヴァルキリアに完封されたようなのです」
銀髪で、緑色の目を輝かせるダリスはその質問にあることを答えた。
自らが、ヴァイという人間を魔王に仕向けさせたというと。そして、彼らは魔王に負けたということを。
「ほう、彼が完封されたのか」
「はい、勇者の資格を持っていなければ魔王には勝つことが出来ません。それは、私どもも同じ。彼に期待をしていたのですが」
勇者のスキルを持っていなければ、魔王にとどめを刺すことは出来ない。
だからこそ、至高の存在である彼らも魔王には手を出せない。いわば、勇者は彼らにとって駒なのだ。
「では、ゲイルはどうするのだろうな?」
「おそらくは、未だ殺されてはいないヴァイを探しに行くかと」
「フォールン、いやナースに期待しておくとしよう」
そして、暗闇に二人は溶ける。




