「絶望の前触れなにそれ?おいしいの?」
* ワース視点
「え?…」
な、なんだよこれ。ゲイルさんに、転移魔法をつかってもらい。
町に、帰ってきたはず、なのに。
そこに、広がっていた景色は――崩壊した、壊れた町だった。
きれいに、切り取られたかのように建物の壁などは1mより上には存在していなかった。
空も、きれいな晴天のはずなのに。なぜか、目の前が歪む。頬には、何かがたれている。
「そ、そうだ。母さんは?父さんは?」
隣で、アスカが独り言のように呟く。
そのまま、アスカは歩き出した。ゆっくり、一歩。だんだんと足取りは早くなり、家に向かって一直線に走り出した。アスカを後ろから見ていた。顔からは、水が反射してきれいに光る何か――涙がながれていた。
コケそうになっても。コケても。必死に、走っていた、アスカをじっと見ていた。
「父さん!!母さん!!」
アスカのその、声はだんだんと弱々しくなっていく、そして、代わりに泣き声が聞こえてきた。
一体、どれだけぶりだろう。妹――アスカの泣き声を聞いたのは。
顔は、見えない。後姿を見ていた。ずっと…
「父さん…母さん!……なんで?なんで、いないの!」
妹の、声はこんなに、苦しい声だったのか?こんなに、苦しそうな声だったっか?
違うだろ!、俺が、俺が救って。助けて。安心させてやらないと、いけないんだろうが!!
ワースは、自分を憎んだ。
こんなに、妹が、自分が苦しい、悔しい思いをしているときに足が、口が動かないことに。
『動け!!!!喋れ!!!俺!』
ワースは、自らの心に怒鳴る。
もし、このとき。ダリス、ナース、オールディンがこの――フェンリル町にいなければ。去っていれば。
きっと、結果は変わっていただろう。
「父さ――――――――」
妹の、声が途切れた。今、今だ。
手を、握り締め、顔を下に向けて。自分に、言い聞かせていた、そのときだ。
妹のアスカの、声が途切れたのは…
「え?」
ワースは、静かに顔を上げる。
きっと、顔を上げるまでが彼のワースの幸せな。
いや、希望がある時間だろう。アスカが、生きているというわずかな希望がある。
最後の二秒だけだろう…
顔を上げ、ワースが見たその光景は――
--------------------------
* ゲイル視点
「ゲイル、貴様なかなかやるな」
メリスと名乗る、男にそう言われた。
まったく、勝てる気がしない。見たことのない魔法を多数使ってくる、メリス。
洞窟で、メリスと戦い始めてから一分。わずか、一分。だが、その戦闘の内容はとても激しかった。
何十、何百という魔法のぶつけ合い。
近距離戦闘での、読み合い。スキルの、使い方。
そうして、今ここに至る。
(どうすりゃ、勝てんだよ…)
メリスの、魔力を図ることはできない。というか、真っ黒だ魔力感知で覗いても真っ黒しか映らない。
「黒」っていう、新しい魔力とでも言うのかな。
勝ち方だが、消耗戦、というわけにもいかない。
こいつの、スキルを見破って勝たないといけない。
そうしなければ、俺は死ぬ。
魔力の、消費が多すぎる。早期決着をしないと、俺が魔力切れで負けてしまう。
メリスの、スキルでわかっていることは、
・物を破壊するということ。
・魔法の結界を使えば、少しは耐えれるということ。
・かすかに、魔力が動くということ。
この、3つだ。そして、今新しくわかったことがある。
さっき、メリスがまたスキルと思われる攻撃を仕掛けてきた。
その時、かすかにメリスの目が赤色に光った。青色の目が赤色になったのだ。
恐らくは、邪眼の一種だろう。
つまり、特異スキル。生まれ持った才能、自分だけが持っているスキルだ。
それさえ、わかれば。
「そろそろ、決着をつけようか…【デッドエンド】」
メリスは、高らかにそう宣言し「死言葉」【デッドエンド】を使った。が
「ゲート!」
メリス、お前は確かに強い。だが、俺には勝てない!
もし、はじめからその「死言葉」を使っていれば結果は違っていたかもしれない。
だが、デッドエンド。その死言葉は、周囲の魔力を強制的に膨張させ活性化以上の魔力。魔力濃度。魔元素の急激な変化を引き起こし。生命を、死滅させる。
そして、彼――メリスの邪眼の予想できる能力は、魔力膨張である。
体の、一部だけを集中的に魔力を膨張させ魔力濃度を上げる。それに、よって身体が魔力に耐えられなくなり吹っ飛ぶ。
魔法の結界で、命中率が下がったのはスキルによる妨害に加えて、魔法の壁を作ることによって狙った場所の魔力だけを膨張させることが難しくなり不発に終わることが多くなったからだろう。
岩や、俺の腕などが吹っ飛んでも壁――土などが崩れなかったのは恐らく魔獣王ダファトニアの魔法陣が関係しているのだろう。その、魔法陣が魔力を瞬時に浄化し、さらに壁の強度を上げているのだとしたら魔力膨張だけでは壊すのは困難だろう。
そのため、魔力膨張が比較的簡単な岩が破壊されるということが起きたと考えられる。
そして、俺が使ったスキル。〘ゲート〙。それは、特殊攻撃スキル。攻撃に特化した、特殊スキルである。その中の一つ。
効果は、吸収と放出である。
魔力でも、岩でも、3mの高さ。1mの幅のアーチ型の扉。それに、入るものなら何でも吸収でき。
さらに、吸収したものを放出できる。
一応は、制限があるのだが殆どないため「何でも」という表現に間違いはないかと考える。
そして、今俺が吸収するのはメリス。お前の放った、【デッドエンド】そのものだ。
【デッドエンド】一度発動すれば止めるのは困難だろう。
だが、発動する直前、小さな黒球が現れる。それは、あたりの魔力を一度吸ってから発動する。
だからこそ、その1mmにも満たない小さな黒球をゲートで吸う。そして、放出しメリスを倒す。
「なに!?」
メリスは、ゲートを使った瞬間。距離を取った。だが、遅い。
黒球は、ゲートに吸われそして。既に、放出している。
「メリスだったか?お前、強かったぞ!」
「――!?ちょ、どうなっt――――」
メリスは、何か言いかけたがそのまま、喋ることはなかった。
ゲイルは、メリスにそのままデッドエンドを当てることによりメリスを倒したのだった。
メリス、彼は死ぬ直前。正気に、戻った。
だからこそ、驚き動揺し、焦った。一瞬で、その感情は表情に現れ。そして、ゲイルに殺された。
反応できずに…




