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ファムファタる。  作者: 蒼治
1 丑の刻参る。
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 まずいことに、その時私は左手に金槌を、右手に藁人形を持っていた。


 私の在学している私立王理高校には寮がある。その寮から徒歩十分の場所だった。わりと林っていうか山の中にある母校の近くに、木々に埋もれてしまうような小さな神社がある。そこに向かう途中だったんだからその持参アイテムについては仕方ない。深夜、神社行くのに藁人形をもって行かないなんて、おやつにバナナを持っていかない遠足も同然だ。


 ちなみに午前一時だ。

 月光は青白く、どこまでも清くざわめく葉の間から差し込んでいた。淡いが相手の姿を見て取るには差し支えない光。六月上旬の空気は涼しさを風に乗せて運ぶ。夏の暑さまでに残る時間はもうあと一瞬だけだろう。儚い清涼の季節。


「三嶋……?三嶋藍?」

 向かう男は愕然として私の名前を呟いた。

 そうですよ、佐藤航一郎君。貴殿が地味っ子生徒のそれがしの名をご存知とは思いませんでしたがね。


 佐藤航一郎君というのは同じ3-Aのクラスメートだ。いよいよお互い三年生ですね。理系コースは担任が怖いです。受験頑張らなければなりません。

 でも佐藤君なら頑張らなくても楽勝でしょうが。


 佐藤君は、いまどき珍しい文武両道の清純派男子生徒だ。すでに青年っていっても良いくらいしっかりした体つきをしているのはその柔道部という部活のお陰もあるんだろうか。身長は百八十センチを越えて肩幅も広い。

 ちゃらいところなどかけらも無い端正な顔立ちはきりりと引き締まり、聡明さを映し出す両眼は温和な光を灯し、比較的寡黙な彼の態度と相成って、昔のお侍様をイメージさせる美形だ。


 また、学業も優秀で、いつも学年順位ではトップグループに当たり前の顔をしてはいっている。確か男子寮の寮長だったはず。

 一年生の時から女子に騒がれていたにも関わらず、誰とも付き合うことがなかった。告白してくる女の子を片っ端から丁重に、しかし容赦なく振っていた。

「自分にはそんな余裕はありません」と言ったとか言わないとか。

 求愛行動くらい、鳥だってしているのになあ。


 そんな佐藤航一郎君と、深夜、森の中、出会ったわけだ。

 だが。


 ふわふわと幾重にも重ねられたシフォン。一番下が淡い色で上に行くほど濃い翡翠色になるロングスカートだ。その上には綺麗な刺繍がされた柔らかな素材の丸襟シャツ。金髪のほっそりとした女性が着ていればぴったりな乙女チックなそのいでたち。

 でもその中身が佐藤君となると、それはロマンチックだけではすまなくなる。


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