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昏破が英蓮の言葉を遮る。
「可成、皆様に資料をお配りして」
いつのまにか床に散らばった資料を集めていた可成が、資料を配っていく。
全員に資料が行き渡ったのを確認し
「皆様、資料はお手元にございますね?
そこにありますのは、夏 真姫と夏 英蓮の婚姻届の写しでございます」
英蓮は目の前に置かれた資料を見る。
そこには19年前の日付が書かれていて、真姫と自分の署名がされている。礼部の判もしっかりとある。
添え書きに、【夏 英蓮を、夏家は婿養子として迎え入れる】とある。
これは念のため と思い書かせたもので、それもしっかり保管されていた。
(届けはきちんと受理されている。間違いない、私は真姫と婚姻を結び、婿養子になっている!)
ニヤッと笑い、勝ち誇ったように顔を上げ隣に座る慧斗に話かける。
「ほら、お義父上・・・
私と真姫の婚姻は、礼部の判が押された正規のもの。婿養子の添え書きまであります。
これでも、私を真姫の夫と・・・婿養子と認めないおつもりですか?」
「・・・・」
慧斗は英蓮の言葉を無視し、
「昏破、続けなさい」
昏破に続きを促した。
「はい、お祖父様。
ご心配いただかずとも、止める気はありませんわ」
昏破は楽しそうに微笑んだ。