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「私が本邸を出た後は、分家の若造が我が物顔でずいぶんと好き放題にしていたようだが・・・。
まさか当主にでもなったつもりだったのか?」
慧斗は英蓮を冷ややかに見る。
「な・・・そんな馬鹿な。
あなたは私に当主の座を譲るために、本邸を出たのでしょう!?」
ドクドクと心臓の音が耳元で聞こえる。
(確かに表立った当主交代はしていない。だが、本邸に住んでいるのは私だ。
私を当主と認めたから出ていった・・・皆そう思っている。なのに、見知らぬ奴らが来て気分が悪かったから出ていっただけ?
それではまるで、私達が勝手に住み着いているだけではないか!)
「そんな訳ないだろう。
真姫が生きていれば、真姫に当主を譲るつもりでいた。当主は直系と代々決まっている。それが女であってもだ。
お前でなくとも婿養子になる予定だったものは、最初から当主の伴侶としてあてがうつもりだった。それをお前が勝手に勘違いしたのだろう。
・・・最も、お前は婿養子ですらないが。」
「何を言っているんですか!?
私と真姫は婚姻を結んでいる。届けも出した。
確認すればわかることです!
婚姻を結んでいないなんて、そんな戯言を・・・」
ダンッと英蓮は卓に拳を打つ。
慧斗は顔色一つ変えない。
「戯言なんかでは、ありませんわ」




