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「官女と言っても、試験に及第以降に働いていなければ官女とは言えないだろう!
この女は、夏家の侍女だ!そして、当主はこの私だ!
そうですよね、お義父上!!」
英蓮は、隣に座る慧斗に向かって叫んだ。
「可成は国中を回る私に代わって、資料集めをしてもらっていた。
宮廷にいなかっただけで、官女としての仕事は果たしていたし、勤務記録も付させている。
その分の給料は、戸部から正規に支払いがされている。
可成は、れっきとした官女だ。
それから、私は夏家の当主をお前に譲った記憶はない。突然、見知らぬ女が本邸に来て気分が悪かったから、別邸に移っただけだ。
・・・お前が当主?勘違いも甚だしい。」
慧斗は英蓮を見ることもなく、答える。
「ですが、夏家の跡取りは私でしょう!?
私はあなたの娘の夫ですよ!あなたの義理の息子で、次期当主だ。
本邸にいない当主の代わりに、夏家を切り盛りしているのは私と華月ですよ!」
英蓮は慧斗の言葉に納得がいかず、言い寄った。
(真姫は死んだ。
だが、婚姻を結んで婿入りして養子になった。あそこは・・・夏家は私のものだ!)
ギュッと両手に拳を握る。
ここで、躓いてはいられないのだ。