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李音は侍女の足音が遠ざかったことを確認し、
「で?
何に怒ってるの?
自分が馬鹿にされたことには怒ってないんでしょ?」
李音は昏破に聞く。
「…」
「この部屋に来るときに人払いをしてきてる。だからあの侍女しかいなかったし、その侍女も今はいないよ」
黙る昏破に李音は促す。
ハーッと昏破は溜め息をつくと、顔から全ての感情を消した。
「木簡に書かれていた、穀物のおおよその収穫量とやらを疑問を持たずに出してきたことに ですわ」
金の色を持つ眼は、冷やかな知性に溢れていた。
(切り替えがお早いことで)
李音は先程とは別人の顔を見せる幼馴染の切り替えの早さに、関心した。