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「どういうことだ?説明してくれぬか?」
合点のいっていない陽日は、侍女を見つめる。
「いっいえ、あの…皆様のお話が聞こえて来まして。
ちょうどお運びするところでしたので、昏破様の分は置いてきてしまったんです」
侍女はしどろもどろに答えた。
(人選ミスだな…)
挙動不振な侍女に、完才はそっと溜め息を吐いた。
仮にも皇帝の執務室である。防音に優れた造りにしてあるため、話し声が裏手の厨に聞こえる筈がない。
言い訳がお粗末過ぎる。
「そうなんだ。
じゃあさ、さっきまで昏破が飲んでいた茶を入れてくれたのはだぁれ?」
李音は昏破が飲んでいた、硝子製の茶器を指す。
中には茉莉花が咲いている。
「…それは…」
「あなた、だよね。
あなたは、昏破がこのお茶を飲むのを見ていたよね。
私がおかわりを頼んだ時は、どこで茶を入れたの?
持って来た時は賑やかだったから、この裏じゃなくて他の厨で入れたんじゃない?」