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「馬鹿にするにもほどがありますわ」
温かい茶を口にし、昏破は拳を握った。
講義が行われていた一室では、戸部尚書に代わって別の人間が座り、少女の話を聞いていた。
(めっちゃ怒ってんな、こりゃ)
茶をすすりながら、観察する。
「要はお前は黙って後宮にいろ、役立たず と言われたんですのよ。」
握った拳がぶるぶると震えている
(あー、あんま握ると指折れるぞ)
「おまけに『お疲れでしょう』なんて、白々しい!用意したお茶が冷める間もありませんでしたわ!!」
(そうね。こうして適温に飲めてるしね)
別の人間が飲むはずであった、茶を見る。
昏破は拳を振り上げ、卓に振り降ろそうとした。
「はい、落ち着いて。手はゆっくり降ろして、卓を撫で…あ、やっぱり皮剥けるから膝の上にして」
冷静に昏破に指示する。
「それじゃぁ、気が済みませんわ!」
昏破の拳はまだ、振り降ろし切ってはいない。
「誰が、骨折の手当てするの?誰が、擦りむけた手の手当てするの?」
「これくらいで、骨折も皮も剥けたりしません!」
キッと昏破は目の前の友人を睨む
「え?
よろけて足の指を角にぶつけただけで、骨折してたのは誰?
顔の凝りを治したいとか言って、ちょっと揉んだだけで皮がずり剥けたのは誰?」
「…」
「いいから、降ろしなさい。主治医の命令です…つーか、逆らうな。降ろせ」
視線を受け流し、茶を飲み切った。
「わかりましたわ…。でも、顔の件は他に原因がちゃんとありますわ。」
「あっそう。とりあえず、「今」骨折しなければ何でもいいよ」
満足そうに、昏破の主治医・李音は笑った。