第9話 偶然の出会い
偶然の出会い、してみたいですね。
なるべく毎日更新したいと思っています。
今後も読んで頂けると嬉しいです。
ユウトと街のパトロールを行ってから数日がたった。
捕まえたカツアゲ犯は数十人に上るが、いずれも遊ぶ金がほしいだの、買いたい物があるだの、違法の薬がほしいなどが理由で、特に異能や魔法使う者はいなかった。
俺達がパトロールをすることによって、助かっている人がいるからまだいいが、なんだか普通の警察がやるようなことをしている気がしてきぞ。
「ヒロト。アルメリア学園の制服が出来たって連絡が来たから街まで取りに行ってくれない」
一階から母さんの声が聞こえる。
ユウトは今日友人の所に遊びに行くって言ってたな。
ということは俺が行くしかないのか。
「わかった。行ってくるよ」
俺はアルメリア学園の制服を取りに街へと向かう。
久しぶりにパトロール以外で街に来たなあ。
俺はのんびりと歩きながら思いにふけていたが、どうやらそれは許してくれないらしい。
「こっちこっち」
「うちらが甲賀寺まで案内してあげるから」
そう言ってギャル二人がフードを被った女の子を甲賀寺とは逆の方向に連れて行こうとしている。
「私、まだここの土地に慣れてなくて」
ギャル達は繁華街の方へと移動し、女の子を建物の中に連れて行こうとしている。
「あのう、私はお寺に行きたいのですが」
「寺まで遠いからここで休憩してから行こうよ」
「うちらがジュース奢ってあげるからさ」
「何から何までありがとうございます」
おいおい。どう考えても怪しいだろうが。
なぜ着いていくんだ。
見過ごすことはできないので気配を消して俺も建物へと入る。
建物に入り、一室から声が聞こえてきたので、その部屋に向かう。
「何の飲み物を頂けるのでしょうか? 私タンサンと言う物を飲んでみたいです」
「ひゃははっ。あんたまだ気づいてないの」
「こんな所までのこのこ来るなんて、どんだけお嬢様だよ」
ギャル達の下品な笑い声が聞こえる。
「お前らよくやったぞ。中々の上玉じゃないか」
奥から二十歳くらいの大柄な男が現れる。
「私が行きたい場所はここではないですよ。案内をしていただけないのなら失礼します」
女の子は立ち去ろうとするが、ギャル二人に腕を捕まれてしまう。
「痛い!」
ギャル達が強く掴んだせいか女の子が悲鳴をあげる。
「服を脱がせ。とりあえず楽しませてもらって写真をとるぞ。金はその後だ」
ギャル達が女の子の服を脱がそうとする。
「や、やめて下さい!」
さすがに見てられなかったので俺は部屋の中に飛び出し、服を脱がそうとしているギャル達の手に手刀を食らわす。
「いたあっ!」
ギャル達は痛みで膝を地面につけうずくまる。
「何だてめえは!」
「あんたこそ何をやってるんだ。女の子の服を脱がして、写真をとって揺するつもりか」
「うるせえ!」
男は両手を突き出して来たので俺は手のひらで受け止める。
「その体で俺と力比べをすんのか」
男は両手に力を込めて俺を押し潰そうとする。
「なんだ。その程度か」
俺は男の両手を軽々押し返す。
「くっ! なんて力だ」
男は苦悶の表情を浮かべるが、すぐにニヤケ顔に変わる。
「大した力だが、俺が使える用になった異能を発動すればお前など敵じゃない」
突然男の腕の筋肉が倍に膨れ上がる。
「どうだ! 力が倍になる異能だ! お前の細腕では堪えられないだろ」
男はさらに力を込めてくるが、俺は微動だにしない。
「エッ? あれ? 何で動かないんだ」
男は目の前の現実を信じることができない。
「元々あった力が70や80なら倍になってもせいぜい140か160だろ。大したことない」
こっちは日頃、死ぬほど鍛えられているんだ。
俺はそのまま手を内側にねじ曲げ、男の両手をへし折る。
「ぎゃあああ!」
男はあまりの痛みに絶叫する。
また暴れられると面倒なので再起不能にしておくか。
「う、動くな!」
ギャル二人が女の子を羽交い締めにして、首元にカッターを押し付ける。
「動いたらこいつを刺すぞ」
やれやれ。そんなことをしても無駄だよ。
「いいのか、そんなことをして。俺の異能が火を吹くぞ」
俺は某漫画のように右手に気を溜めるふりをする。
「ヒィ!」
ギャルは恐怖によって、カッターが手から床に落ちる。
ふぅ。終わったか。俺はスマフォで警察に電話をする。
「あ、ありがとうございました」
女の子が礼をした時フードが頭から外れ、少し長い耳がみえる。
この娘、天族か魔族だったのか。
「ひょっとして余計なお世話だったかな」
天族か魔族なら魔法が使えるから、俺が手を下すまでもなかったな。
「いえ、怖くて魔法が使えなかったから助かりました」
女の子は笑顔でお礼を言ってくる。
この子初めは気づかなかったけどかなり可愛い娘だ。灰色の長い髪がとても似合ってる。
そしてさっきギャル達に服を引っ張られたせいか胸の谷間が見えている。
「と、とりあえず服装を正そうか」
俺は明後日の方を見て女の子に告げる。
女の子は自分の服装を確認すると乱れていることに気づく。
「きゃっ!」
女の子は可愛らしい悲鳴を上げて服装を正す。
「こほん。失礼しました」
俺とこの子の間に何とも言えない微妙な空気が流れる。
どうすんだこれ。早く警察が来ないかなあ。
「警察です。おとなしくしてください」
どうやら俺の願いは通じたようだ。
俺達は警察に軽い事情聴取を受け解放された。
しまった! 異能のことについて男に聞くのを忘れてた。
まあいいか。後で先生に報告してそこから教えてもらおう。
少なくとも罪の重さからいって、今までのカツアゲ犯みたいに当日釈放されることはないだろう。
とりあえずこの子を甲賀寺に案内するか。
「もし良かったら甲賀寺に案内しようか?」
「いえ、もう時間がないので大丈夫です。それにもう目的は果たしましたので」
女の子は澄んだ目で俺をじっと見てくる。
ん? なんだ? まさかこのお嬢様は王子でも探していて、悪漢を倒した王子。つまり俺に会えたから目的は達したと言いたいのか。
ははっ。そんなわけないか。考え方が零一に侵されてきてるな。
キキッ!
黒塗りの車が俺達の目の前に止まる。
これってテレビでよくみる、金持ちが乗る車じゃね。
「お嬢様お迎えに上がりました」
車から執事が出てきて、この子のことをお嬢様と言った。
やはりこの娘は箱入り娘だったのか。
「本日は助けて頂きありがとうございました」
「物騒な世の中だから、知らない人について行かない方がいいぞ」
「わかりました。これからは気をつけます」
「お嬢様。そろそろお時間です」
執事が女の子を車に乗るよう促す。
「また会いましょうね、ヒロト様」
そう言って女の子は車に乗車し行ってしまった。
ヒロト様? 俺名前を教えたっけ?
俺は今日あった女の子のことを考えながら帰路についた。
「ただいま」
「ヒロトお帰り。あら? あなた制服はどうしたの?」
「あっ! 忘れた」
「何のために街へ行ったのよ」
「もう一回取りに行ってくるわ」
こうして俺はもう一度町行くことになった。