第8話 理由
カツアゲは最低です。
評価ブックマークをして頂きありがとうございます。
励みなります。
「二人なら協力してくれると思ってました。もし協力してくれなかったら⋯⋯」
「協力しなかったらどうするつもりだったんですか」
「それは」
「それは?」
「秘密です」
秘密かよ!
「それにヒロトもユウトも断らないと思っていました。二人は五年前の事件を調べたいのでしょ?」
「⋯⋯そうですね」
「先生には協力しますけど五年前のことも調べるつもりです」
五年前にあった事件を、とある理由により俺とユウトは調べている。
当初は小児を中心に発熱、頭痛、脱力感の症状がある病気が流行っていて、この病気は人から人へと移るものだったため、ウイルスか細菌だと思われていたが、どの検査をしても原因の特定ができなかった。
そしてこの病気の怖い所は致死率だった。小児がかかると50%の確率で亡くなる。
まれに、子供と濃厚接触すると大人に伝染することもあり、大人が感染すると死ぬ確率は100%で、大勢の人が亡くなった。
そして人族、天族、魔族で原因を究明した結果。この病気は異能であることが判明し、俺とユウトは、この現象を起こした奴を探すために、異能使いが多いアルメリア学園への入学を希望した。そしてその犯人と対峙した時のことを想定して猿飛先生から武術を習っている。
「ヒロト、ユウト。復讐心にかられてはいけませんよ」
「⋯⋯はい」
「わかってますよ。俺達はこの悲劇を二度と起こさないために行動してますから」
「それならいいですけど、もしもの時は⋯⋯」
俺とユウトは猿飛先生に処分されるかもしれないな。
「スペシャル鍛練コースをやってもらいます」
スペシャル鍛練コース? そんなんでいいのか。
「私は5年間二人を見てきていますから。信じてますよ」
これは先生の信頼を裏切れないな。
「それで俺達はまず何をすればいいんだ」
「まだアルメリア学園には入学していないので、街でパトロールをお願いします」
「パトロール?」
「街でお金を巻き上げているやからがいるので、その者達を懲らしめて下さい」
最近噂になっているカツアゲか。
そのために異能や魔法を使うのはいただけない。
只でさえ異能持ちは偏見の目で見られているからな。
全員が全員ではないが、異能を持ってない者は異能を持っている者を恐れ、異能を持っている者は異能をもっていない者を見下す。
これ以上異能を持ってる者が、悪い目で見られることがないようにしないとな。
「そしてこれを二人に渡しておきます」
猿飛先生がピンポン玉くらいの大きさのものを投げてきたので、俺とユウトはキャッチする。
「これは」
「ドラゴンの形をしたバッチだな」
結構カッコいい。猿飛先生のセンスだとは思えない。
「そのバッチは人目につかないようにしてください。ただもし困ったことがあったら、そのバッチを見せれば何かいいことがあるかもしれませんよ」
「わかりました」
どういうことだ? まあ先生に何か考えがあるのだろう、とりあえず財布にでも入れておくか。
「それじゃあ早速街にでも繰り出してみるか」
「そうだね、兄さん」
俺達は街へと向かった。
「ユウト、お前がカツアゲをするとしたらどこでやる」
「そういうのは兄さんの方が詳しいよね」
そうだな。優等生のユウトにはそういう世界は無縁か。
「俺だったら繁華街や路地裏、後はゲーセンとかだな。ひ弱そうな奴を人目がない所に呼び出して」
「ちょっと金なくて困ってんだよね。貸してくれない」
「お、お金なんて持ってません」
「んだと持ってないだと! ならお前ジャンプしてみろ」
ひ弱い君はしかたなくジャンプをする。
「このじゃらじゃら鳴ってる音は何かな?」
ひ弱い君は渋々お金を差し出す。
「お前嘘ついたから後三万持ってきな。生徒手帳で何校か確認したから逃げても無駄だぞ。勿論他の奴には言うなよ。言ったらわかってるよな」
「は、はい」
「素直な奴は嫌いじゃないぜ。俺達はいい友達になれそうだな。ヒャッハッハ」
「て感じだな」
ちょっと演技に熱が入りすぎたかもしれん。
「一人芝居御苦労様。とても演技とは思えなかったけど、まさか兄さん本当にカツアゲをやってるわけじゃないよね」
「やらねえよ! 今のはユウトにわかりやすく教えてやっただけだ」
「だよね。兄さんはそんなことする人じゃないってわかってるから」
そんな話をしていると二人組の高校生が、男の子の肩を組んで路地裏へと連れて行く光景を目撃する。
「ユウト」
「行こう」
俺達は物影に隠れて様子を伺う。
「俺達金に困ってんだよね。貸してくれない」
「お、お金なんて持ってません」
「本当に持ってないのか? ならお前ジャンプしてみろ」
男の子は渋々ジャンプをする。
「このじゃらじゃら鳴ってる音は何かな?」
「そ、それは」
もう一人の男が男の子のポケットに手を突っ込む。
「これは何かな? お金を持ってないならこの中身はもらっちゃっていいよね」
男の子は悲痛な表情で頷く。
「お前今俺らに嘘をついたから後三万持ってきな。生徒手帳で何校か確認したから逃げても無駄だぞ。勿論金を持ってくることは他の奴には言うなよ。言ったらわかってるよな」
「は、はい」
「素直な奴は嫌いじゃないぜ。俺達はいい友達になれそうだな。ヒャッハッハ」
なんかどこかで見た光景だな。
「兄さん、本当にカツアゲしてないよね?」
「してねえよ」
俺ならもっとスマートに金を奪う。しかしこんなことを言うと更にユウトに疑われそうだから黙ってる。
「じゃあ30分以内に持ってこいよ」
男の子が泣きそうになっている。
「ユウト、俺が金を奪った奴をやるからお前はもう一人な」
「わかった」
俺達は物陰から出て、有無を言わさずカツアゲ犯を投げ飛ばす。そして相手の左腕を背中に周して、左手の甲を手前に引き、拘束する。
「いててっ! 何すんだてめえ!」
「カツアゲなんて古くさいことしてんなあ。それは犯罪だぞ」
「うるせえ! 離しやがれ!」
ちょっと黙ってもらうか。
俺は拘束した手に力を込める。
「いてえええっ!」
「これ以上暴れるなら腕をへし折るぞ」
俺が威圧を込めて話しかけるとカツアゲ犯はおとなしくなる。
しかし俺を見て男の子も怯えているようだ。
「きみ、大丈夫だった。悪いけど警察に連絡してくれないかな」
ユウトが優しく男の子に声をかけると、男の子は警察に連絡をした。
こういう役目はユウトに限る。
俺が男の子に言ったら逃げ出したかもしれない。
さて、警察がくる前に聞くことを聞いておこうか。
「あんたら何でカツアゲしてるの? ちなみにちゃんと答えないとへし折るからね」
「ヒィ!」
俺の脅しにカツアゲ犯が怯える。
「お、俺達は遊ぶ金がほしくてやったんだ」
「そのために人から奪うのは良くないなあ。ちなみにあんた達は異能は使えるの?」
「そんなの使えるわけないだろ。そんな物が使えたらお前らを倒してるよ」
ユウトの方に視線を向けると、ユウトの左目が青くなり、カツアゲ犯を注視している。そして俺の方を見て頷く。
どうやら嘘をついていないようだ。
「余計な手間をかけたくないから警察が来る迄おとなしくしててね」
そして俺達はカツアゲ犯を警察に引き渡した。
少し文章変えました。