第6話 変調
お姫様抱っこ。してみたいですね。
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俺はサクラをお姫様抱っこの状態で保健室まで運ぶ。
「先生! サクラちゃんがサクラちゃんが」
「落ち着きたまえ」
良かった。保健の先生は常駐していたようだ。
けどこの人本当に保険医か? セクシーな格好をしたアダルティーな先生だな。
俺はサクラをベットに寝かせる。
「どうしたんだ」
「突然頭を押さえて、倒れてしまいました」
「何か持病はもっているのか」
持病? たぶん持ってなかったと思うが。
「持病は持ってないよ」
コト姉が質問に答える。
先生は腕を組み一考し、口を開く。
「この娘は異能はつかえるのかな?」
「サクラちゃんは使えないはずです」
倒れたことと異能は何か関係があるのか。
「ちょっと失礼するよ」
先生はサクラの頭にヘアバンドを巻き付ける。
そして計測器のような物で測定を始めた。
「やはりそうか」
先生は数値を見て深刻な顔を浮かべる。
何だ。サクラの容態はそんなに悪いのか。
「先生! どういうことですか!」
俺は先生に詰め寄る。
「まあ落ち着きたまえ。残念ながらこの娘は⋯⋯」
まさか駄目なのか。
もう二度と、病気で知り合いが亡くなるのはごめんだ。
サクラ、目を覚ましてくれ。
「何も心配ない。時期に目を覚ますだろう」
おい!
「先生の言い方だと手遅れ的な言い方だったじゃないか」
「誰も手遅れなんて言ってないだろ。だが一応大丈夫だと思うが病院には行っておけ」
「救急車を呼んでるのでそれに乗せて行きます」
とりあえず命に別状は無さそうなので良かった。
「サクラちゃんが無事で良かったよ」
「そうだね」
コト姉とユウトも安堵する。
「それにしても君は凄い形相だったね。恋人か何かかい?」
「そ、そんなじゃない。女の子が倒れたら誰だって心配するだろ」
「ヒロトちゃんがサクラちゃんのことをまだ大切に思ってくれて、お姉ちゃんは嬉しいよ」
コト姉の目に光るものが見える。
「なんだかんだいって兄さんはやさしいからね」
二人に言われて、さっきまで焦っていた自分が恥ずかしくなってきた。
「そ、それより先生。サクラは何で倒れたんだ」
「倒れた理由か。サクラくんは時期に目を覚ますが、何も無いわけじゃないぞ。おそらく近いうちに、異能が覚醒するだろう」
先生の言葉に俺達は驚く。
「どういうことですか」
「さっきサクラくんの頭にヘアバンドを着けただろ。あれは異能の力を数値で表す機械なんだ」
そんな物があるなんて聞いたことないぞ。
「まだこの研究は発表されてないからね。知っている人も学園の一部しかいないよ。君たちもたった今その一部に入ったけど」
「そんな重要なこと俺達が聞いてもいいんですか」
「いいのいいの。どうせ新学期には公表されるから」
本当にいいのか? この人けっこう大雑把な性格をしてそうだからホントかどうかわからないな。
「20年前に天界と魔界が繋がって、人族に異能が使える子供が現れるようになったことは知ってるね」
「ええ、有名な話ですから」
「なぜ使えるようになったか。一般の説だと二つの世界から人間界に魔法を使うために必要なマナが流れ込んだからと言われている」
確かに教科書にはそう書いてある。
「しかし魔法を使った時は周囲のマナが減っているが、異能を使った時は周囲のマナは減っていないことが研究でわかった」
「それじゃあどうやって人族は異能が使えるようになったんですか」
「マナがあることによって新しい脳波持つ子供が生まれたからなんだ」
それがさっき測っていた機械なのか。
「私達はこの新たなる脳波をNew brain waves NBWと呼んでいる。そしてこのNBW値が100を越えると異能が使えるようになることもわかっている」
「サクラちゃんはその脳波の値が100を越えたってことですか」
「いや、残念ながら98だったよ。しかしサクラくんは近い内に異能が使用出来るようになるだろう」
まさかサクラが異能を使えるようになるなんて。
俺の周りには異能が使用できる人が多いなあ。
「そして倒れた原因だが、NBWに脳が堪えられなかったと思われる。個人差はあるが、異能に覚醒する前や異能の使いすぎで、頭痛が起きる事例が多く挙げられているからおそらく間違っていないだろう」
「確かに僕の時は頭痛が凄かった」
「お姉ちゃんはあまり感じなかったなあ」
そんなことを言うとこの人の実験台にされるぞ。
「なに! 君たちは異能持ちなのか。ちょっと試しに測らせてくれないか」
ほらみろ。
「いいですよ」
「お姉ちゃんも自分の値が幾つか気になるからやってみたい」
この二人は人を疑うことを知らないから承諾すると思ったよ。
「では測定するぞ。コトネ君は⋯⋯301。素晴らしい数値だ。そして少年は⋯⋯525! こんな高い数値、猿飛以外で初めて見たぞ!」
猿飛? 今猿飛って言ったか?
「あのぅ。先生は甲賀寺の猿飛先生のお知り合いの方でしょうか?」
「18代目猿飛サスケの姉だよ。猿飛楓って言うの。よろしくね神奈ヒロトくん」
この人最初から俺のこと知っていたな。
知らない振りをするなんて、猿飛先生のように性格悪いな。
「今私のこと性格悪いって思った? サスケに報告しておく」
「素敵なお姉さまだなと思っていただけです。先生への報告はマジでやめてください」
「ふ~ん。まあそういうことにしておいてあげるか」
ちくしょうこのアマ。いつか覚えてろよ。
「そ、それより二人のNBW値は平均と比べて高いのですか」
「異能が使える人の平均は200前後だから二人とも高い数値だ」
「ちなみに猿飛先生の値はいくつなんですか?」
「猿飛は1,252だ」
「1,252!」
あの人はやはり体術も異能も化け物だな。
ピーポーピーポー
どうやら救急車が着たみたいだ。
「それじゃあコト姉、ユウト。サクラを頼む」
「兄さんも一緒に行こうよ」
「サクラが起きた時に俺がいたら嫌がると思うしさ。母さんには俺から伝えておくから」
「⋯⋯わかったよ」
こうしてサクラ達は救急車に乗って病院へと向かった。