第14話 新しい日常
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病院に着くとユウトとコト姉、母さんが出迎えてくれた。
サクラは俺の背中から下りて三人の所へ向かい、謝罪の言葉を言う。
「ごめんなさい」
三人は顔を見合わせて笑顔で迎える。
「それに五年前のことも⋯⋯」
母さんがサクラの前に行く。
「あの時、サクラちゃんも病気だったのよ」
「でも、私の病気が移っておじさんが⋯⋯」
母さんは首を横に振る。
「少くとも私はサクラちゃんが悪いとは思ってないわ。悪いのは異能でウイルスを広めた人よ」
「リラさん⋯⋯」
「それにお父さんとお母さんの仇は、きっとヒロトとユウトが取ってくれるから」
俺とユウトはサクラの方を向いて頷く。
「サクラちゃん」
「お姉ちゃん」
コト姉がサクラを抱きしめる。
「心配かけて」
「ご、ごめんねお姉ちゃん」
「いいの。ぶ、無事に戻ってきてくれたから」
二人の目から涙がこぼれ落ちる。
「ヒロトちゃんと仲直りできた」
「うん」
「そう、良かった。本当に良かったよ」
二人の様子を見て、ユウトが俺に言葉を発する。
「兄さんはサクラを許したの?」
「許すも許さないも最初から怒ってない」
元を正せば俺が嘘をついたからだ。
サクラが悪いなんて言うつもりはない。
「サクラの心が思ったより、安定しているからビックリしたよ。やっぱりキスしたら許してやるって言ったの?」
「バカヤロー、零一じゃあるまいしそんなこと言うか」
今のサクラなら本当にしそうで怖い。
「これで後は、五年前の事件の犯人を見つけるだけだね」
「ああ」
両親とおじさんを、そして多くの子供達を殺した犯人を絶対捕まえてやる。
「それじゃあユウト以外は病院に戻って」
そうだ。俺達は今日、入院することになっているんだ。
「母さん、俺はもう大丈夫だから入院しなくていいよ」
「ダメよ」
「ダメだよ」
母さんとユウトから反対意見が出る。
「私の魔法で治したとはいえ、あんなに血が出ていたんだから今日は大人しく入院していなさい」
「母さんの言うとおりだよ」
「金もかかるし、走っても問題なかったから」
この時病院から、1人の看護師さんがこちらに向かって走ってきた。
「ヒロトくんどこに行ってたの」
この人は?
「私はヒロトくんの担当看護師の黒田ますみといいます」
俺が疑問に思っているとますみさんが自己紹介してくれた。
ますみさんは二十歳くらいで長い黒髪を結んだ美人だ。
「看護師さん、この子入院しないと言っているのでキャンセルすることはできますか?」
「わかりました。担当医の先生にお伝えしておきますので、受付にもその旨を言ってください」
「ちょっと待った」
俺の言葉に皆が視線を向ける。
「血がいっぱい抜けたせいかちょっとめまいが、やっぱり入院させてもらってもいいですか」
「ヒロトくん大丈夫ですか? 肩を貸しますね」
俺は看護師の肩に寄りかかりながら、病院へと歩いていく。
「あれは絶対うそね」
「うそ?」
「うそなんですか?」
母さんの言葉にコト姉とサクラが反応する。
「担当の看護師さんが美人だから、入院するって言い出したのよ。ヒロトのああいう所は誰に似たのか」
そのことを聞いて、コトネとサクラの形相が鬼へと変化し、二人はヒロトの後ろにまわって、背中をおもいっきりつねる。
「いてぇ!」
俺の背中に激痛が走る。
「看護師さん、このスケコマシは私達が連れていくので大丈夫です」
「そう。それじゃあお願いしてもいいかな」
「はい」
そう言って看護師さんは病院の中へと行ってしまった。
「ますみさん待って」
俺は数歩追いかけるが、2つの手によって止められてしまう。
「さあ、ヒロトちゃん病室へ行くわよ」
「ヒロトくんは体調が悪いんでしょ。私達が連れていくから」
こうして白衣の天使の肩を借りることは、叶わなくなった。
病院を退院した翌日の朝
俺はいつも通り、ごろごろした春休みを送っていた。
ゆさゆさ
なんだ。
誰かが俺を揺すっている。
春休みは9時まで起きないと決めているんだ。
ゆさゆさ
「ユ、ユウトやめろ~。俺は9時まで起きないって決めているんだ」
「もう9時は過ぎてるよ」
なにか声がいつものユウトと違うような。
「春休みなんだもう少し寝かせてくれ」
「どうすれば起きてくれるの?」
「そうだなあ。コト姉以外の女の子が、優しく起こしてくれれば起きるぞ」
ふっふっふ、この願いをユウトが叶えることはできまい。
ゆさゆさ
ユウトめ、実力行使に出たか。
ゆさゆさゆさゆさ
「だーっ! やめろ。俺は断固として起きないぞ」
俺は起こしてきたユウトに対して宣言する。
「おはよう、ヒロトくん」
「へっ?」
「一応ヒロトくんの希望通りに起こしたからいいよね」
「あ、うん」
俺を揺すっていたのはサクラだった。
「これからは私がヒロトくんを起こすからね」
今後はサクラが俺を起こすだと。
こうして新たな日常が始まっていった。




