第10話 真実(1)
真実はいつも辛いものです。
日頃評価やブックマークをして頂きありがとうございます。
今後も皆様に読んで頂けるようがんばります。
サクラside
佐藤くんのスタンガンがヒロトに当たり、ヒロトのスタンガンが佐藤くんに当たったため二人とも気絶している。
ユウトは先ほどいた女子中学生を助けに行き、お姉ちゃんは最初から気絶している。
今この場所で動けるのは私しかいない。
ヒロトは出血が酷いから、このまま何もしなければ死ぬかもしれない。
だけど、だけど!
私の手で、お父さんとお母さんの仇をとりたい!
私はヒロトの側までゆっくり歩いて行く。
出血をしているせいかヒロトの呼吸は荒い。
私なんかを護ったせいで、倒れてしまった。
まさか、その護った相手に殺されるとは、思ってもみなかったでしょうね。
私は血まみれのヒロトの横に座り、両手を首に這わせる。
後は左右の手に力を入れれぱ、私の復讐は終わりを遂げる。
ヒロトを殺すと決めてからの五年間は長かった。
お父さん、お母さん。仇を取ったら私も二人の所に行くから待っててね。
覚悟を決め、私は両手に力を込める。
「や、やめて」
「お、お姉ちゃん」
気絶していたお姉ちゃんが目を覚ます。
「ヒ、ヒロトちゃんを殺しちゃだめ」
お姉ちゃんは息も絶え絶えで私に語りかけてくる。
「なんで! どうして止めるの! こいつの、ヒロトのせいでお父さんとお母さんは死んじゃったんだよ!」
私の言葉を聞いて、お姉ちゃんは悲しそうな表情をする。
「違うの」
「何が違うの!」
お姉ちゃんは何か話すのを迷っている。
「お、お父さんと⋯⋯お母さんが、し、死んだのは⋯⋯ヒロト⋯⋯ちゃんのせ⋯⋯いじゃ⋯⋯な⋯⋯いの」
お姉ちゃんはヒロトのせいじゃないと言って、また気絶してしまった。
だったらどういうことなの。皆、ヒロトのわがままのせいで、お父さんとお母さんが死んだって言ってたじゃない!
もうこんなチャンスはない、今殺らないでいつやるの。
私はヒロトの、仇の顔を注視し、再度首を絞めるため、両手に力を入れる。
ヒロトの鼓動が両手に伝わってくる。
最初は遅かった鼓動が段々と早くなっていく。
これでいい。これで全てが終わるんだ。
これでヒロトを恨まなくてすむ。
その時、私の右目が蒼白く輝いた。
えっ? 何これ?
私の右目から頭に情報が流れて込んでくる。
これは、昔のヒロトとユウト、お姉ちゃん、それにリラさんだ。
「サクラちゃんはこのままだと、生きていけないかもしれないとお医者さんに言われたわ」
「ちくしょう! せっかくサクラは病気が治ったのに」
ヒロトは椅子を蹴る。
「お兄ちゃん落ち着いて」
そういえばこの頃のユウトは、ヒロトのこと兄さんじゃなくてお兄ちゃんって呼んでたなあ。
昔は勉強もスポーツもヒロトの方が出来ていたけど、10歳くらいになってからはユウトの方が出来るようになっていた。
ヒロトの素行が少し悪くなってきたのも、確かこの時期からだ。
「サクラちゃんはお父さんとお母さんが亡くなったことがショックで、食事も取らず、言葉も発しなくなっちゃったからこのままだと⋯⋯」
お姉ちゃんは下を向いて泣いている。
「お医者さんが言うには、今、サクラちゃんは両親が死んで活力をなくしている。だから何か生きる目的を与えられれば、この状況を脱することができると言っていたわ」
「それならますます、父さんやおじさん達が死んじゃった理由を教えられない」
「そうね」
ヒロトとユウト、リラさんは下を向いてしまう。
「それならこうしたらどうかな」
ヒロトが皆に何かを話しているけど、内容が聞こえない。
「だめよ! そんなことしたらヒロトは一生サクラちゃんに恨まれるわよ」
「そ、そうだよ。お姉ちゃんもそんなの嫌だよ」
ヒロトの提案にお姉ちゃんとリラさんは反対する。
「けどこのやり方以外に、サクラの心を取り戻す方法はある?」
この場の全員が押し黙ってしまう。
「お兄ちゃんはそれでいいの?」
「サクラが死ぬよりはいいよ」
「なら僕はお兄ちゃんの方法に賛成するよ」
「ユウト!」
「だってお兄ちゃんがそれでいいって言うなら、僕はそれに従うよ。それに他の方法をおもいつかないしね」
「この方法は皆が口を合わせてくれないと成功しない。だから父さんとおじさん達が死んだ原因は、俺のせいだってことにしてくれ」
えっ? なんなの? 今のはどういうことなの? お父さんとお母さんが死んだ理由は、ヒロトのせいじゃ⋯⋯ない⋯⋯の⋯⋯。
頭が痛い。
何かよくわからない映像が入ってきたあと、私は頭が割れるような頭痛に襲われる。
だめ。意識を保つことが⋯⋯できな⋯⋯い。
私はヒロトの上に覆い被さるように倒れてしまった。




