第4話 5年前の事件
コンピューター作業が得意だといいですよね。
ちなみに筆者は苦手です。
今日はユウトと警察のデータベースにアクセスするため、警察署へと向かっている。
「何か五年前の事件の手がかりがあるといいね」
「どうだろうな。ひょっとしたらテレビで出ている情報しかないかもしれないから、過度の期待はやめといた方がいい」
「そうだね」
俺達は警察署に到着し、受付の女性に話しかける。
「あの、警察庁のデータベースにアクセスをするにはどこに行けばよろしいのでしょうか」
「はい? 警察庁のデータベースは警察官でないと見ることができませんよ」
「俺達バハムートの一員ですけど、見せてもらえないのでしょうか」
俺は財布に入れていた特殊能力犯罪対策課のバッチを見せる。
「これは⋯⋯少々お待ち下さい」
受付の女性は、上司と思われる方をこちらに連れてくる。
「大変失礼しましたこちらへどうぞ」
俺達は上司の方にコンピュータールームへと案内される。
「どうぞこちらのPCからアクセスできますので、存分にお使いください。PCが立ち上がったら、そのバッチをスキャンすれば使用できるようになります」
「ありがとうございます」
俺はPCを立ち上げ、バハムートのバッチをスキャンする、そうすると検索ワードが出てきたので、2015年異能小児死亡理由と入力すると情報が画面に出てくる。
2015年5月
瑞葉市を中心に体調不良を起こす小児が多数現れる。
症状として発熱、頭痛、脱力感だったため、当初はウイルス感染か細菌感染が疑われた。
2015年6月
どの検査をしても、原因が特定できなかったため、異能ではないかと疑う。
この原因不明の病気に小児がかかると、50%の確率で亡くなる。
まれに、子供と濃厚接触すると大人に伝染することもあり、大人が感染すると死ぬ確率は100%。
ここまではニュースでもやっていた一般的な情報だ。
2015年7月
突如病気の感染者が0になる。このことより政府は異能が原因であると決定し調査を開始する。
7月までの死者は全世界で小児22,000,521人、成人3,202人。
2015年12月
病気にかかる小児にはある特徴があることがわかった。
異能に目覚めている子供は感染率は0%。
2018年9月
2015年5月時点で異能に目覚めている子供、そして異能に目覚めかけていた小児(2015年12月までに異能に目覚めた小児も)も感染率が0%だったことがわかった。
2015年5月までの異能を持った子供の割合は10,000人に1人だったが、2015年6月以降は1,000人に1人となった。
これは今回の原因不明の病気は、異能を目覚めさせるものだった可能性が高い。
2019年3月
原因不明の病気の第一人者である相場傑が突如失踪する。
2020年3月
瑞葉市で、一時的に異能が使えるドラッグが発見される。現在調査中。
「兄さんこれは中々興味深いデータだったね」
「そうだな。気になる点は異能を持った、もしくは目覚めかけている子供は感染しなかったことと、原因不明の病気が流行った後で異能者が増えてる点」
「そして5年前の事件のデータベースに、今起こっている異能が使えるドラッグのデータが載っているということは、警察庁は何か関連があると思っているのかな」
「後、原因不明の病気の第一人者である相場傑が失踪していることも気になる」
だかこれではダメだ。俺達の知らないこともあったが、五年前の事件の真相にたどり着くにはまだ情報が足りない。
わかっているのは、もし誰かの異能が病気の原因なら、2015年の時に15歳以下だったやつだ。
「兄さんこの相場さんって人に会えないかな」
「そうだな。そうすればもっと色々なことがわかるかも知れないな」
俺は相場傑の写真を二枚プリントして一枚をユウトに渡す。
相場傑はメガネをかけた研究者のような風貌だった。
「とりあえず今日は帰るか」
「そうだね」
コンピュータールームを出ると、先ほど案内してくれた上司の方がいる。
「もう終わりでよろしいでしょうか」
「はい」
上司の方はコンピュータールームの鍵を閉める。
「今僕らが見たものより上のデータベースがあると聞いたのですが、それは見れませんよね?」
ダメ元で俺は聞いてみる。
「そうですね。これ以上は警視監以上でないと見れません」
「そうですか」
やはりダメだったか。
「そもそも今お二人が見たデータも私は見ることができません」
「なぜですか」
「お二人のバッチには警視正の権限がありますから、この瑞葉署で同じくらいの権限を持っているのは署長しかおりません」
えっ! このバッチってそんなにすごいの。
「噂をすればあちらに署長がいらっしゃいますね」
上司の方の視線の先を見ると署長とおぼしき方と、いつか街で暴行を受けそうになっていた女の子がいる。
女の子は俺がいる方に手を振って駆け寄ってくる。
「あれ、あれあれ。ヒロト様が二人いる」
「こっちは双子の弟のユウト」
「そうですが、初めまして」
「初めまして、え~と」
ユウトが顔を近づけて小声で聞いてくる。
「兄さん、この女の子は誰?」
「この間暴行されそうになっていた所を助けたお嬢様。名前はわからん」
「向こうは兄さんの名前を知ってるみたいだけど」
「なんでだろうな」
「お嬢様。今は公務中ですぞ」
「そうですね。それではヒロト様、ユウト様ごきげんよう」
俺は女の子に名前を聞こうとするが、前にあった執事が現れて聞くことができなかった。
署長と話ができる立場、あの娘は何者なんだろう。
女の子と5年前の事件のことを考えながら俺達は自宅へと戻った。




