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現代が天界、魔界と繋がった世界  作者: マーラッシュ
第二章 真実の過去
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第2話 ナンパ前編

人によって大切なことは違います。


「そうだ。二人にいくつか伝えなくてはならないことがあります」


 俺達は姿勢を正し、猿飛先生の話を聞く。


「まずはバハムートについてですが、異能や魔法に関する事件に対しては警察官と同等以上の権限を持つことになります」

「どれくらいの権限ですか? 犯罪が行われた現場に入ることや、警視庁のデータベースにアクセスすることも可能ですか」

「可能です。ただし警視庁の上層部しか閲覧できないものは見ることができませんが」


 全てではないが可能なのか、それなら五年前の事件について調べたい。


「しかしそれだけの権限が与えられるということは」

「責任が問われるということですね」


 それでも俺達に取ってはありがたいことだ。


「私があなた達を逮捕する、なんてことにならないよう気をつけてくださいね」


 先生に追われると思うとゾッとするな。


「そしてもう一つは以前話にあった、異能が使えるようになるドラッグですが」

「手に入ったんですか」

「いえ、残念ながら手に入れることはできていませんが、ドラッグを使用したと思われる者達が、次々と精神に異常をきたしているようです」

「ドラッグの副作用ということですか?」

「おそらくは」


 やはり異能を手に入れるにはリスクが必要だったみたいだな。


「できればこのドラッグを手に入れたいので、二人共そのことを念頭に動いてくれると助かります」

「わかりました」


 猿飛先生の話が終わり俺達は甲賀寺を後にした。


「ユウトはこれからどうする?」

「僕は家に帰るよ。サクラがアルメリア学園に行くから付き添ってくる」


 最近サクラは、毎日アルメリア学園に行っているな。


「僕もサクラがどんな異能に目覚めるのか知りたいし、楓先生からNBW値の測定をしたいから来てほしいって言われてるんだ」


 あの人優秀そうだけど、何か変な実験をされそうでちょっと怖い。


「ユウト、変なことされそうになったら逃げろよ」

「大丈夫だよ。兄さんはこれからどうするの?」

「俺は零一から街に来てくれないかとメールが来たので行ってくるよ」

「じゃあここでお別れだね」

「おう。サクラのこと頼んだぞ」


 俺は街へ、ユウトは自宅へと向かった。


 待ち合わせの場所に着くと、零一が駆け寄ってきた。


「ヒロト頼む、助けてくれ」

「どうしたんだ」

「いいからこっちに来てくれ」


 零一のこんな真剣な表情を初めてみた。

 とんでもないことが起きているのかもしれない。

 俺は零一に続いて急ぎ駆けつける。


「ヒロトあれを見ろ」


 零一が示す方に視線を向けると、そこには二人の女の子がいる。


「あの二人がどうかしたのか? 異能を使われて金でも取られたか。それとも魔法か?」


 見た目は可愛い女の子だが、異能や魔法の強さに性別や年齢は関係ないから、油断せずに行こう。


「魔法か。確かに魔法をかけられたな」

「零一大丈夫なのか」

「大丈夫じゃない。もうだめかも」


 零一は俺にもたれ掛かってきた。


「しっかりしろ! どんな魔法を食らったんだ」

「こ」

「こ?」

「恋の魔法だ」


 俺は支えていた零一を地面に叩き落とす。


「いてえ!」


 そんなことで呼び出しやがって。こいつはいっぺん死んだ方がいいな。


「お前何するんだ!」

「何するだじゃねえ! 恋の魔法だ? そんな魔法あるか」

「あるんだよ俺限定で」


 もうこいつはダメだ。病院に行った方がいい。


「じゃあ俺は帰るから」

「待ってくれ」

「何だよ」

「頼む。ナンパするのに力を貸してくれ。1対1だと成功率が悪いんだよ」

「まさか、2対2でナンパしたいなんて言うつもりじゃないよな」

「さすがヒロト。俺の親友」

「さよなら。俺の友達のリストに零一なんて男は存在してないから」

「待ってくれ。今日だけ、今日だけでいいから」


 俺は零一を振り払って、自宅へ帰ろうとするが、零一はしつこく追いすがってくる。


「いいのか。もしここで帰れば、今後俺のコレクションをお前に渡すことはなくなるぞ」

「なん⋯⋯だと⋯⋯」

「昨日ヒロト好みの本が入ったんだ」


 俺好み? メイドか家庭教師かそれとも水着か。


「さあどうする」

「やだなあ零一くん、僕達は親友じゃないか。困っているときはお互い様だよ」

「ヒロトならそう言ってくれるとおもったぜ」


 俺は零一という悪魔に屈してしまう。


「だけど俺はいるだけだからな」

「わかってるって後は俺に任せろ」


 自信満々の零一に引き連られて、俺はナンパへと繰り出す。


「まずはさっきの二人から声をかけるぞ」


 しかしやる気に満ちた零一の思いとは裏腹にナンパは悉く(ことごと、)失敗していく。


「ごめんね。私達この後出掛けなきゃいけない所があるから。また今度声をかけてね」


 まず一つ。


「私達年上が好みなんだけど君達何歳?」

「二十歳です」

「嘘おっしゃい。嘘つきは嫌いよ」


 二つ。


「お金持ってるの? 三ツ星レストランなら行ってもいいけど」


 三つ。


 零一の体がナンパの失敗により白くなりかけている。


「零一もういいだろ。帰ろうぜ」

「やだ! せめて一回成功するまで帰らないぞ」

「お前ちょっとがっつきすぎなんじゃないか。だから向こうが引くんだよ」

「そんなことを言うならお前が見本を見せてみろ。もしやってくれるならこの一回で終わりにしてやる」


 零一め、上から目線で言ってきやがって。

 ただこの一回で最後ならやってもいいか。適当に声をかけて終わりにしよう。


「わかった。どの子に声をかければいいんだ」


 零一からの反応がない。


「おい、零一」


 零一に視線を向けると、恍惚の表情を浮かべている。


「ヒロト。あの二人だ。あの二人に声をかけてくれ」


 前に二人の女の子が歩いている。後ろから見ると、一人は長い髪を両サイドに結んだ娘で、もう一人は長い髪をまとめたメイド服を着た娘だ。


 もう一度言う。メイド服を着た娘だ。


「さっきより強い恋の魔法を受けた」


 こいつはまたバカなことを言っている。しかし零一がここまで言うなら相当可愛い娘達なんだろな。

 俺も興味が出てきたぞ。

 けしてメイドさんだからではない。


「行け! ヒロト。 失敗したら死をもって償え」


 何でナンパが失敗したくらいで、死ななきゃならないんだ。


 俺は対象の二人の背後に行き、声をかける。


「あの、二人とも可愛いね。もしよかったらお茶でもしませんか」


 俺は声をかける時緊張して、テンプレのセリフしか言えなかった。

 これは滅茶苦茶恥ずかしいぞ。

 零一はいつもこんなことをしているのか。

 あいつメンタル半端ないな。

 メイドさんがこちらを振り向く。後ろ姿から想像した以上に綺麗な人だ。


「私達のことを言っているのですか?」

「はい」

「邪魔です。失せなさい」


 俺の人生初のナンパは、メイドさんの慈悲の欠片もない言葉で、失敗に終わる。


「ちょっと待って」


 両サイドを結んだ女の子から待ったがかかる。


「お茶ぐらい付き合ってもいいわよ」


 まじか。成功しちゃったよ。

 俺は女の子にお礼を言うため視線を向ける。


「それでどこに連れていってくれるのヒロト」


 両サイドに結んだ女の子はカリンだった。

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