第1話 サクラの思い
二章スタートです。
日頃ブックマークや評価をして頂きありがとうございます。
今章も読んで頂ければと思います。
サクラside
コツン
何か物音が聞こえて起床する。
今の音はどこから聞こえたのだろう。
痛っ!
今日も頭が痛い。
特に朝起きてから頭痛がすることが多い。
原因はわかっている。
私はどうも異能に目覚めようとしているらしい。
異能は本人の願望を表すものが多いというけど、私の願いを叶える異能を覚えることはないだろう。
だってそれはお父さんとお母さんが生き返ることだから。
その願いが叶うならどんな犠牲を払ってもいい。
せめて二人にもう一度会いたい。
お父さんとお母さんは私が入院している時に事故で亡くなったから、最後に会うことも叶わなかった。
ヒロトがわがままを言ったせいで二人は死んだ。
だから私はヒロトを許さない。
二人を生き返らせることができないなら、せめてヒロトを傷つけられる異能がほしい。
今日もヒロトへの憎しみを胸に私の1日が始まる。
ユウトside
特殊能力犯罪対策課の設立が放映された翌日。
俺はいつも通り午前9時に起床する。
この時間に起きることができるなんて、春休みバンザイって感じだ。
大人になると一週間の休みを取ることさえ難しくなるという。
だったら俺は今の内にこの休みを堪能するだけだ。
俺は着替えをして部屋の外に出ようとするが、ドアノブの所にカッターがテープで貼られていることに気づく。
このままドアノブを回していたら手が切れて、血まみれになるだろう。
また、サクラだな。
だが俺はサクラに負い目を感じてることがあるので、手出しすることができない。
ドアノブに貼られたカッターを剥がし、俺は一階へと下りる。
母さんが用意してくれた遅めの朝食を取り、ユウトの部屋へと向かう。
コンコン
ドアをノックし扉を開ける。
「兄さんどうしたの?」
「どうしたのじゃない。甲賀寺に行くぞ」
特殊能力犯罪対策課のことについて猿飛先生に言いたいことがある。
「昨日のテレビでやっていた件だね」
「そうだ。あの人勝手に俺達をバハムートだかなんだか知らない組織に入れて、しかも一昨日の銀行強盗を捕まえた件も、その課の手柄にしやがった」
「わかった。僕も言いたいことがあるしね」
珍しい。ユウトが猿飛先生に反論するなんて、初めて見るかも知れない。
「来週からアルメリア学園が始まるから、あまり特殊能力犯罪対策課のお仕事を手伝うことができないことを伝えなくちゃ」
ズコッ!
俺はユウトの回答にずっこける。
やっぱりユウトは優等生だった。
「とりあえず甲賀寺に行くから準備しろ」
「わかった」
そして俺達は甲賀寺へと向かう。
甲賀寺に着くと猿飛先生が出迎えてくれた。
「今日はどうしたのですか。鍛練を行う日ではなかったと思いますが」
この人は昨日の件について、俺達に何か言うことはないのか。
「猿飛先生、昨日の記者会見は何ですか。俺達を勝手に特殊能力犯罪対策課の一員にして」
「ああ、その件ですか。何か都合が悪いことがありますか」
「僕達は来週から学園が始まるので、あまりお手伝いをすることは出来ませんが」
「二人は必要時に動いて頂ければ大丈夫ですよ」
「そうですか。それなら問題ありません」
「問題ありませんじゃな~い!」
やはりユウトに任せていてはダメだ。
「ヒロトは特殊能力犯罪対策課に入ると何か都合が悪いのですか?」
「いや、そういうわけではないけど」
「この今の人間界で、異能や魔法に対応できるスペシャリストが必要だと思いますが、どうですか?」
「確かに特殊能力の犯罪に対応する組織は必要だと思います」
「ただ、まだ国民の理解は得られてはいません。そんな中、異能や魔法を使った銀行強盗を、バハムートが捕まえるというニュースは今後の組織のために必要だと思いますが、ヒロトの考えを聞かせて下さい」
「それは⋯⋯」
「それに二人とも私に協力してくれると言ったじゃないですか」
「確かに言いましたけど⋯⋯」
「異能についての犯罪情報も入ってくるし、ヒロトにとっても組織に入ることはプラスになると思うのですが」
「⋯⋯」
先生の言っていることは間違っていない。五年前の事件を起こした奴の情報も入ってくるかもしれない。でもなあ⋯⋯。
「兄さんは、先生がそんなすごい組織を設立して、いつの間にか入っていることに対して、拗ねているだけです」
「まったく、ユウトはしょうがないですね。ちなみに隊員になると給料が出ます」
猿飛先生は小声で、どれくらいの金額が入るか教えてくれる。
「そして働きによって特別ボーナスがあります」
えっ? こんなに。
「ちなみに二人は、一昨日銀行強盗を捕まえたのでその分のお金が支給されることになってます」
まじで。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ユウト。俺達でこの世界の平和を護るぞ」
「やる気が出ましたか」
「何言ってるんですか先生、最初からやる気はありますよ」
「兄さんは現金だね」
先生も人が悪い。最初からお金を、いや事情を説明してくれればいいのに。
「猿飛室長! 神奈ヒロト、並びに神奈ユウトは粉骨砕身の覚悟て頑張りますのでよろしくお願いします」
こうして俺とユウトは正式に、特殊能力犯罪対策課バハムートの一員となった。




